感染症

オミクロン猛威の都内、コロナ感染した20代男性の体験談

【医師が解説】オミクロン株感染者が全国で急増しています。今回は都内で1月末に新型コロナに感染し自宅療養を経て回復した20代男性から、発症から検査で陽性と判明するまでの経過と隔離期間の様子を聞きました。ワクチン接種済みで健康な20代が感染者になった場合の症状、後遺症、特に困ったことなど、新型コロナ感染体験談から見える現状をご紹介します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

コロナ感染者の体験談から…20代男性陽性者の経過・都内の現状

新型コロナウイルス感染患者体験談

オミクロン株が猛威を振るう中、新型コロナに感染した20代男性。その経過と症状以外に困ったこととは(※画像はイメージ)

新型コロナウイルス感染症の変異株・オミクロン株の流行が猛威を振るっています。今回は、東京都内で1月下旬に新型コロナウイルスに感染してしまった20代男性から、感染時の詳しい様子を聞くことができました。発症時から自宅療養が解除されるまでの具体的な症状と経過、検査を受けるまでの状況について、体験談をご紹介したいと思います。
 

【発症初日】新型コロナ感染症発症時の初期症状・発熱相談センターへの連絡

■感染者プロフィール・経過
  • 感染者:20代男性・都内在住・会社員・一人暮らし・既往歴・持病なし
  • ワクチン歴:モデルナ2回接種済(1回目:2021年8月・2回目:2021年9月)
  • 発症日:1/21(金)
  • 経過:軽症・自宅療養のみで回復
  • 自宅療養解除日:2/1(火) 
以下、時系列で感染時からの経過報告をご紹介します。

■初期症状……突然の悪寒・咽頭痛・頭痛・微熱・嗅覚障害など
朝8時頃、強い悪寒で目が覚めました。咽頭痛と頭痛、鼻づまり、熱っぽさがあり、体温計で計ったところ、37.4℃の微熱(平熱は36.6℃)。消臭・芳香スプレー(ファブリーズ)のにおいがわからず、嗅覚障害にも気づきました。

■区の発熱相談センター・発熱外来への連絡
新型コロナウイルスかもしれないと思い、今後の対応について相談するために、区の発熱相談センターに電話。近くにある発熱外来を紹介されました。しかし連絡した発熱外来では、すでに当日、翌日分の予約は締め切り済み……。週末に入ってしまうので、週明け月曜の朝9時にまた電話するか、他をあたるように伝えられました。

■発熱外来の予約が取れないまま、自宅療養へ
発熱外来の予約が取れなかったので、市販の鎮痛解熱薬を服用し、職場と家族に連絡。発症当日のこの日は体調もそこまで悪くはなかったので、残った仕事をすべて自宅で済ませました。業務後、咽頭痛や鼻づまり、倦怠感が強くなり不安でした。
 

【発症2~3日目】検査を受けられないまま不安な週末を過ごす

予約が取れず病院に行くこともできなかったため、週末は咽頭痛と鼻づまり、嗅覚障害、微熱の症状は変わらないまま、コロナかどうかわからない状態でひたすら安静にするしかありませんでした。

初日の症状は、発症から5日間ほど続きましたが、ピークは初日~翌日の土曜だったと思います。特に喉の痛みはかなりひどく、飲み物や食べ物はもちろん、つばを飲み込むだけでもつらい状態でした。

とにかく眠ろうと思いましたが、「重症化したらどうしよう」「肺炎になったらどうしよう」という不安感が大きかったです。一人暮らしなので寝るのも怖く、週末は「眠さの限界まで起きて寝る」を繰り返していました。
 

【発症4~6日目】発熱外来の予約・検査・陽性判明

発症から4日目の月曜朝、発熱外来の受付開始時間の9時ちょうどに電話を入れるも、なかなかつながりません。約40分後にやっとつながるものの、またしても当日分は終了。最短で翌日の午後の予約を取ることができました。この時点でやっと25日(火)にPCR検査、26日(水)に検査結果がわかる診察を予約することができました。

発症5日目。初めて発熱外来を受診。検査自体は10分程度で終わり、この日は終了。薬の処方もありませんでした。発症時からの症状はこの日まで続いていました。

発症6日目。症状が落ち着いてきましたが、お昼頃に病院から陽性との連絡がありました。り患した株については特に何も伝えられませんでしたが、病院や保健所の方から「オミクロン株にかかった人は……」といった説明を受けたので、オミクロンだったのだろうと思って過ごしました。

症状は落ち着いてきたとはいえ、このあたりでは嗅覚障害のためにカレーと親子丼が同じ味に感じました。味覚はあるものの、においがわからないため、すべてが「辛い」「しょっぱい」「甘い」といった一辺倒な味にしか感じられませんでした。
 

【発症7~12日目】症状はほぼ回復。保健所からの初連絡・自宅療養期間解除まで

ここから自宅療養が解除されるまでは、毎日病院から経過観察の電話がありました。発症7日目には、発熱、咽頭痛、頭痛などは収まり、鼻づまりと嗅覚障害のみに。

発症9日目になって、初めて保健所から聞き取り調査の連絡がありました。発症前からここに至るまでの症状や行動などを伝えたのもこのタイミングです。発症11日目まで自宅療養を続け、12日目に晴れて自宅療養期間が解除されました。
 

【回復後の後遺症・経過】軽い鼻づまり・嗅覚障害

つらかった症状はほぼ回復したものの、発症から15日目現在も軽い鼻づまりと嗅覚障害が残っています。全てのにおいがわからないわけではないので、軽い方なのかもしれませんが、消臭剤やシャンプーなどのフローラル系の香り、人工的な香りがあまりわからない状態です。コーヒーの香りもわかりません。それでも発症後4~5日は全く匂いがわからず、ご飯もあまりおいしく感じられなかったので、少しずつ回復してきているとは思います。
 

【感染時・自宅療養中の振り返り】療養中の不安感・自力対処の大変さ

感染時と自宅療養中の隔離期間を振り返ってみると、特に症状がきつかった時期に、いわゆる「検査難民」になってしまったのが大変でした。なかなか予約が取れず、週末も自力で対処するしかなかったので、不安が大きかったです。コロナは持病がない人でも重症化や肺炎のリスクがあることも耳にしていたので、一人で療養している間に症状が急変したらどうしようという不安が常にありました。

また、一人暮らしで外出禁止になったので、食料の調達なども大変です。行政からのサポートや案内などは特になかったので、ウーバーイーツとAmazonなどのサービスを使って乗り切りました。
 

感染体験談に医師として思うこと・コロナ禍におけるアドバイス

今回体験談を聞くことができたのは、一般的にも無症状者と軽症者が多いと言われている20代男性の方でしたので、実際に新型コロナ感染症としては、症状自体はかなり軽い状態で済んだように思われます。

本来であれば、新型コロナウイルス感染症が疑われる症状があれば、スムーズに診断されることが第一です。とはいえ医療側の人的資源にも検査数にも限りがあるため、現在のような大流行期では、検査自体が間に合わなくなっています。薬局で抗原検査を購入してまずは自分で簡易検査をする方法もありますが、流行期は検査キット自体も不足が見られるようです。

ここまでの感染状況になると、もうどこで感染してもおかしくありません。今後必要になるのは感染者の精神的なサポートでしょう。体調の悪い中で一人隔離される疎外感や不安感、生活の不便さにどう対処していくのかなど課題が多いと思われます。また、軽症が多いとは言え、重症化リスクがないとは言えません。

自宅療養で対処しなくてはならない場合、肺炎が疑われるような症状、具体的には
  • ひどい息苦しさ・呼吸困難
  • 高熱が下がらない・発熱の持続
  • 咳込み(咳嗽・がいそう)の悪化
などに注意を払うことが重要になってきます。

オミクロン株は無症状でも感染させるリスクがあります。上気道でウイルスが増殖するため潜伏期間も短く、これまでのワクチンによる発症予防効果も低下しています。そのため感染予防や対策はもちろんですが、それ以上に重症化したケースや、特につらい症状に対応できるようなサポート体制づくりに移行する時期に来ているのかもしれません。いわゆる「無症状も含めて感染を封じ込めるゼロリスクから症状者や重症者に対するケアであるローリスクへ」の段階です。ゼロリスクを目指したままでは、病院はスタッフの濃厚接触によってすぐに人材不足に陥ってしまいます。残った医療者への負荷が高くなりすぎることで、コロナ以外の病気も診察ができないような状況は避けなくてはなりません。

また、デルタ株とオミクロン株では症状も重症度もかなり異なりますので、今後も流行している株が何かをそれぞれが把握し、それに応じた行動をとっていくことが重要になるでしょう。実際に機能しているかも含めて現在行政がしてくれるサポートも把握し、災害時の対応と同じように、感染した場合に使える常備薬の備えや最低3日間程度の食料品の備蓄など、個々人もできる範囲で備えておくのがよいでしょう。
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