男の子育て/ワークライフバランス・男の育児休暇

実録!男性が育休を取る時に妻や上司と話しあうべき事

男性で2年間の育児休暇を取った筆者が、育休を取る時に妻や上司と話しあうべき事について解説します。今から約10年前のまだイクメンという言葉もない時代、妻や会社とどのように話し合って育休取得に至ったのでしょうか?

堀込 泰三

執筆者:堀込 泰三

男の子育てガイド

2年間の育休取得!妻や会社とどのように話し合ったのか?

親子3人の写真

育休取得時、何を話し合ったのか?

筆者は長男が生まれた2007年に、2年間の育児休業を取得しました。
※記事参照「実録!東大卒パパが育休を取って主夫になった理由

今から10年前のイクメンという言葉もない時代。当時、妻や会社とどのように話し合って育児休暇取得に至ったのかを、ここに書き残しておこうと思います。

時代は変わっても、根本的なことは変わらないはず。これから育児休暇取得したいと考えている男性や、夫に育休を取得してほしい女性達の参考になれば幸いです。


仕事内容は順風満帆!自動車エンジンの研究開発

車

自動車会社でエンジン開発に携わっていました。

実例に基づいて解説しましょう。筆者は大学院で修士課程を修了したのち、自動車メーカーに就職。エンジン開発部に配属され、次世代エンジンの排気ガス低減の研究開発に取り組んでいました。

「実験計画立案」→「試作部品発注」→「実験部署に実験依頼」→「実験結果を見て次の方針を決める」という仕事。結果からエンジン内部で起こっている現象を想像し、仮説を立てて検証するという、非常にやりがいのある内容でした。

結婚したのが入社4年目の春。新人気分が抜け、ある程度自分で考えて仕事を回せるようになってきたころです。結婚式では、直属の上司に祝辞をいただきました。

その後、昇進のためのペーパー試験を受け合格。あとは面談を受ければ昇進する可能性があるという時期でした。


妊娠判明!嬉しいけれど戸惑いも

妻の勤務地が東京、私が横浜だったので、結婚後もしばらく別居生活を送っていました。そんな中、2006年8月に妊娠を告げられます。そのときの気持ちは、喜び半分、戸惑い半分といったところでしょうか。

自分が父親になるなんてまともに想像したこともなかった私です。父親って何だろうという考えが頭の中をぐるぐる回っていました。ただ、そのころ頭にあったのはまだ、「稼いで家族を養う」という、昔ながらの父親像だっと思います。


妻が育休を取れない事が判明!そのとき話し合ったことは?

夫婦

夫婦の話し合いはスムーズでした。

妊娠後、妻も職場の育休制度などについて調べ始めました。そこで初めて、長期の育児休暇が難しいことを知ります。

というのも、妻は研究職で1年任期で毎年更新の雇用形態だったため、育休制度は存在したものの、年度をはさむ復帰の場合は、戻る場所がなくなってしまうのが実態でした。

そこで、代わりに制度の充実している会社に勤めていた私が育休を取ることになったのは前記事の通りです。社員全員に配られていた「人事関係規定集」を熟読したうえで、妻と話し合ったのは下記のような内容でした。

  • 夫の育休取得
    2人とも辞めないための唯一の選択肢なので取る
  • 育休取得期間
    会社の規定で最長2年と決められていたので、最長で申請してみよう。初めての子供で勝手もわからないし、戻る場所が確保されるならできるだけ長く手元で育ててみたい。
  • キャリアの穴
    夫婦どちらが育休を取っても穴があくのは同じこと。幸い夫の場合、大きな会社なので毎年部署異動がある。「育休」という部署にいったん異動して戻ってきたと考えれば済む話ではないか?
    そもそも2年なんて、40年の会社員生活のわずか5%。戻ってから10%増しで働けばばすぐに取り戻せる。
  • 収入減
    2人の収入はあまり変わらないので、どちらが育休を取っても同じこと。育児休業給付金(当時は収入の4割)は1年で終わるため、2年目は厳しくなるが、節約しながらがんばろう。
  • 家族の意見
    どちらの親も、2人の決断なら納得してくれるだろう。
  • 男の育児
    男も女もスタート時点では同じ素人なのだから問題ないはず。
  • 授乳
    唯一の問題はおっぱいが出ないこと。だったら妻の職場の近くに引っ越そう。赤ちゃんがお腹がすいたら、おっぱいをもらいに行く。これで完璧じゃないか(そんなに甘くないことは後で思い知らされましたが……)。
そんなわけで、妻とはとても前向きな意見交換になり、あっさり私の育休取得が決まりました。すぐに妻の職場近くに引っ越すと同時に、会社との育休取得交渉を開始しました。


育休取得交渉で会社と話し合ったこと

打ち合わせ

上司との話し合いは3度にわたりました。

上司との育休取得交渉は3度にわたりました。結婚式でスピーチをいただいた上司で私も尊敬していましたし、上司からも信頼されていたと思っています。全3回の内容はこうでした。


1回目の育休取得交渉ではキャリアプランを心配される

通常の査定面談後、今後のキャリアプランを話す段階で、「子供ができたので育休を取りたい」と告白。上司は祝福してくれたが、育休の申し出には驚いた様子。私は人事規定集を見せながら、このように男女ともに2年間取れると説明。

上司「そうか。制度があるものを否定することはできない。ただ、今後のキャリアプランをきちんと考えているのか?」と心配してくれる。

こちらも家庭の事情を詳細に説明。結婚式に来てもらっていたので、妻の仕事の状況もすぐに理解してくれました

上司「なるほど、状況はわかった。ただ、男が休んでできることなんてあるのか。うちにも子供がいるが、とても妻にはかなわない。男は稼いでこそじゃないのか」

私「私もつい先日までそう思っていましたが、それが逆でもいいのではないかと思い始めています。期間限定のことですし、そもそもスタートの時点では父も母も同じ素人なのですから」

上司「そうか。気持ちはわかった。課員が1人減るのでもろ手を挙げて受け入れるわけにはいかないが、過去に事例もないので、ひとまず人事に聞いてみる。また後日話し合おう」


2回目の育休取得交渉では再考を促される

上司が人事に問い合わせた結果を教えてくれました。

上司:「『育児のための在宅勤務制度』というのもあるそうだ。しかし、現在の仕事内容が自宅でもできる場合に限られ、在宅のために新たに仕事を発生させることはできないという決まりだ。つまり、エンジン実験の仕事はそれとは正反対の位置にある。一方の育児休業。これは2年間認めることは可能だ。ただ、私もこの数週間考えてみたが、やはり男には無理なのではないか?」

私:「ありがとうございます。もう一度妻と話し合ってみます」


3回目の育休取得交渉でやっと認めてもらう

私「妻と話してみましたが、やはり気持ちは変わりません」
上司「そうか。ならば認めないわけにはいくまい。必ず戻ってこいよ!」

以上のような経緯で、私の長期育休取得が決まりました。我が家の事情を包み隠さず話し、粘り強く交渉を続けたことで最終的に理解してもらえたことに繋がったと思います。過去に例のない申し出を認めてくださった上司には、感謝しかありません。


これから育休取得を考えている方へ

私の個人的経験から、会社との交渉に臨む前に、最低でも下記3つのポイントを抑えておくのがよさそうです。

  1. 夫婦で意思を確認しておく
  2. 制度を知っておく
  3. お金のことを考えておく

夫婦での意思の確認は当然ですが、意外と忘れがちなのが制度。会社によって人事制度は異なるので、人事部に問い合わせるなどして、あらかじめ文書の形でルールを入手し、熟読しておきましょう。

男性の育休取得はまだ事例が少ないため、上司もわからないことが多いもの。文書を手元に置いて話し合えば、最初の交渉がぐっとスムーズに前に進むと思います。

お金の心配はもちろんありますが、現行の制度では育休取得から半年間は67%の育児休業給付金が出ます(ただし、上限はあり)。つまり、夫婦交代で半年ずつ育休を取れば、世帯年収は(100%+67%)÷2=83%となり、17%の収入ダウンで済むことになります。

育休のメリットはまた別の機会に触れますが、年収の17%と引き換えに子供と過ごす胸きゅんの時間が得られるのですから……これは考えてみる価値は十分にあるものだと思います。

いかがでしたか? 私の経験が、育児休暇を取得をしたいと考えている男性の参考になり、一人でも多くのパパに育児の貴重な時間を体験してもらえるきっかけになれば幸いです。


男性の育休取得関連記事

実録!東大卒パパが育休を取って主夫になった理由
【編集部おすすめの購入サイト】
楽天市場で子育て関連の書籍を見るAmazon で子育て関連の商品を見る
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます