空き巣被害は減少傾向、でも、油断は禁物!
ここ数年、空き巣被害は減少傾向にあります。警察庁のデータによれば、2013年の住宅対象の侵入窃盗(空巣・忍び込み・居空きの合計)の認知件数は5.7万件。これは、2004年の19万件に比べると、1/3以下の数字です。ここ40年で最も安全といっていい状態だといわれています。とはいえ、このまま減少傾向が続くとは限りません。実は過去に被害が急激に増えた時期がありました。
それが、2000年以降。1975年に1年あたり20万件を超えていた住宅対象の侵入窃盗は、1990年代には半減、しばらくは12万件ほどという状態が続いていましたが、2000年を境に増加の一途をたどり、2004年には19万件を越えました。
理由として考えられるが、「油断」です。社会が安全になるにしたがって、それが当たり前のものと思う人が増え、防犯に対しての意識が下がってしまったのです。
「安全」を保つには、防犯への関心を持ち、常に用心し続けなければいけません。
住宅対象侵入窃盗 認知件数の推移(警察庁データより作成)
「狙われにくい家」にすることで被害を防ぐと言う発想
一般的に、住宅の防犯対策といえば、塀を高くしたり、防犯ガラスを用いるといった、空き巣などの「侵入を食い止める」という対策を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。もちろんそれは重要ですが、その前に考えておきたいのが、空き巣に「狙われにくい家」にするということ。「この家は、侵入しにくそうだ」「侵入しているところを誰かに見られて通報されそうだ」などと思わせることで、侵入されない状態をめざすのです。
「ゾーンディフェンス」で、場所に応じた防犯を考える
では、狙われにくい家とはどのような家なのでしょうか。実はその答えはひとつではありません。それぞれの家の立地、隣家との距離、建物の形状などによって異なってくるからです。
ただし、どんな家にでも共通する考え方があります。それは、敷地内を、敷地の奥で道路から遠く人目が届かない「ケアゾーン」、主に家族だけが利用するが比較的見通しがきく「プライベートゾーン」、来客など誰でもが入れる「アクセスゾーン」に分類し、それぞれのゾーンに合わせた防犯対策をする「ゾーンディフェンス」です。
従来型の外構
ゾーンディフェンスによる外構と防犯計画
旭化成ホームズの「くらしのべーション研究所」およびへーベルハウスの調査によれば、空き巣による侵入は9割以上が1階で、さらにその9割は道路から6m以上離れた敷地奥に集中しています。
そこで、ケアゾーンにある窓や勝手口などの開口部には、窓に格子をつける、鍵を増やすといった建物への侵入を防ぐ対策を行うとともに、空き巣がケアゾーンまで立ち入りにくくするための方法を考えることも必要になります。
一方、通りに面した玄関や大きな掃き出し窓から住居内部が見えすぎると、家族の人数や留守になる時間帯といった情報が空き巣などに知られてしまいます。しかし、高い塀などを設置すると、空き巣にいったん敷地内に入られてしまうと周囲の人の目にふれにくいというデメリットもあるため、ほどよく視線を遮るフェンスなどの設置が望ましいということになります。
また、3階建ての場合は、隣家との距離が近く死角ができやすいため、プライベートゾーン、ケアゾーンの配慮が必要です。
このように、ゾーンで防犯を考えると、効率的に適切な防犯対策を行うことができるのです。
ケアゾーン・プライベートゾーンは開口部を防犯対策
具体的に、ゾーンにあった防犯対策をいくつか紹介しましょう。まずは、一番侵入率の高い「ケアゾーン」や「プライベートゾーン」は、開口部の防犯対策を重点的に行い、侵入に時間がかかるようにするのが効果的です。
空き巣の7割は5分以内に侵入できないと犯行を諦めると言われています。そこで、窓を防犯ガラスにする、窓に格子を付ける、窓を二重ロックにするといった「ハードディフェンス」を行います。大きな開口部であれば、シャッターを設置するのもいいでしょう。まずはハード面を強化し、5分間に耐えうる設備に強化するということです。
防犯ガラスや二重ロックなどで防犯対策
侵入しにくい状態を作るアクセスゾーン
一方、「アクセスゾーン」におすすめなのが、訪問者を録画できるインターホンや不在時も自動的に点灯するタイマー付きの照明などです。在宅しているかどうかの情報をわかりにくくすることで、空き巣にとって心理的に「侵入しにくい」状態を作るのです。訪問者を動画録画できるカラーモニター付きのインターホン
また、一定以上近づくとフラッシュする照明などを付けると、夜間の空き巣に対する威嚇になると同時に、近所の人が気付いて通報してくれる可能性が高まります。
写真左:光や音で警告、夜間の防犯に効果を発揮。写真右:仕切り戸で奥のゾーンへの立ち入りを制限。
在宅を印象づける自動点灯・消灯
さらに、「アクセスゾーン」と「プライベートゾーン」の境に門扉などを設置するのも有効です。これは、開け閉めの際に音が鳴ったり、門扉を開けて入っているところを周囲の住人に見られて「住人でもないのになぜ?」と怪しまれることを、空き巣が嫌うためです。
実はこれらの方法は、家族の「用心」を高めるという効果もあります。生活習慣の中で狙われるスキをつくらないようにすることで、狙われにくい家になるのです。
<参考リンク>
ヘーベルハウスの防犯対策