マンション相場・トレンド/マンショントレンド情報

広いほどいい?マンションの適正な広さの考え方

建築費や地価上昇で、面積当たりの単価が全国的に上昇トレンドにあるマンションマーケット。一部では、買い手の予算を想定して、中心タイプの専有面積を抑える動きも見られます。では、どの程度の広さが必要なのか。考えてみたいと思います。

岡本 郁雄

執筆者:岡本 郁雄

マンショントレンド情報ガイド

マンション価格上昇で考えたい『住まいの広さ』
今の広さで十分? 広ければOK?

新築マンションの分譲価格が上昇しています。首都圏の1平米あたりの単価は、2015年6月度で、前年同月比21.4%アップ(出典:不動産経済研究所 首都圏マンション市場動向2015年6月度)。価格上昇の動きは、都心エリアから周辺部に広がりつつあり、最近の用地取得の動きから類推すると今後エリアによってはさらにアップする可能性もあります。

こうした状況下で、商品企画にも変化が見えます。例えば、天王洲アイルの『シティテラス品川イースト』(住友不動産)の専有面積は、67.02平米~71.11平米。ユニット構成を揃えることで、建築コストを抑えるとともに70平米前後で商品ラインナップを揃えています。今年完売した『イニシア武蔵新城ハウス』では、同じユニットを生活者の目線で住まい方提案し、可動家具等でフレキシブルな暮らしを提案。最も多かった専有面積は、70.08平米です。今後都心近郊エリアのファミリー向けのプランでは、70平米前半の間取りが増えていくのではないでしょうか。新築マンションの間取りを見て最近感じるのが、縦長リビングの間取りが目立つことです。横長リビングと縦長リビングの間取りの違いは、収納量です。同じ広さユニットで間取りをつくる場合、廊下スペースを抑えられる縦長リビングの方が、収納量を確保しやすいです。よって、横長リビングの間取りは、縦長リビングに比べて若干広い専有面積でプランニングされるケースが多いです。
フレキシブルな使い方のできる「イニシア武蔵新城ハウス」のモデル

フレキシブルな使い方のできる「イニシア武蔵新城ハウス」のモデルルーム

住宅金融支援機構発表のフラット35利用者調査2014年度によれば、フラット35利用者の首都圏マンションの平均専有面積は、70.0平米家族数は、2.6人になります。平均購入価格は、4378万円年収倍率は、6.7倍とともに前年度より大きくなっています。賃貸から分譲マンションに移り住む際は、少なくとも同じ広さであれば、今持っている家具や家電は利用できますが、「新築分譲マンション購入に際しての意識調査 2014年」(メジャーセブン実施)で、マンション購入検討理由の一位が「もっと広い家に住みたい」であるように、今の住まいよりも10平米~20平米程度広い家を購入する人が多いです。

では、広ければ広い方が良いかというと、注意すべき点がいくつかあります。1つ目は、専有面積が広くなると修繕積立金や管理費等の負担が大きくなる点です。通常、専有面積の大きさに応じて、管理費や修繕積立金の額が定められるため20%広くなればその分ランニングコストも大きくなります。また、リフォームする場合の対象面積も広くなりますので壁紙の張り替えなどの負担も増えます。将来的に賃貸する際などは、こうした負担は大きくなります。2つ目は、住む人の数が変動する点です。特にファミリー層は、子供の成長とともに家族数も変わります。場合によっては、広さを持て余すケースも出てくるでしょう。適正な広さは、購入する前に想定しておく必要がありそうです。

時間×立地軸の両方を吟味しよう
終の棲家を3坪足らずの広さにした鴨長明

マンションの広さを考える上で大切なのが時間×立地の軸で考えることです。時間軸は、今だけでなく将来も見据えること。ある程度の幅を持って広さを考えることが重要です。例えば、単身のワンルーム暮らしであっても将来を想定して、70平米の3LDKを購入するのも一つの選択でしょう。その際に、広さだけでなく立地選びも大切です。勤務地へのアクセスはよく確認したい点です。東京都心の再開発や業務ビル開発が進む中、オフィス機能を移転する企業も目立ちます。都心アクセスの良い立地が好まれるのは、そうした面も大きいでしょう。

長寿社会の到来とマンションの長寿命化の中、間取りのプランニング面では、ウォールドアの採用などフレキシブルに使える間取りが目立つようになっています。将来を考えた場合にどんな器の部屋を選ぶかがますます重要になってくるでしょう。専有面積だけでなく、どんな間取りかも重要です。収納豊富でプライバシーに配慮しフレキシブルに使えるマンションなら暮らしやすいと思います。

「方丈記」を記し平安時代から鎌倉時代を生きた鴨長明は、50代からの隠居生活で終の棲家に長さ1丈(約3m)わずか約5畳半の約3坪足らずの「方丈の庵」を選びました。
「方丈」の家

京都の河合神社にある鴨長明が住んだとされる「方丈の庵」の再現

一人暮らしだった鴨長明は、組み立て式の簡素な家に暮らすことにより失うもののない安らかな晩年を過ごしたそうです。時代で暮らしのスタンダードが違うとはいえ、「新古今和歌集」にも採録された歌人の住まいとしてはあまりにも簡素で驚きました。
徳川光圀寄進とされる「つくばい」

龍安寺にある徳川光圀寄進とされる「つくばい」

同じく京都の龍安寺(りょうあんじ)にある徳川光圀(水戸黄門のモデル)が寄進したとされる「つくばい」には、『吾唯足知(吾れただ足るを知る)』という文言があります。札の説明によれば、「知足のものは貧しくといえども富めり、不知足のものは富めりといえども貧し」に由来しているとのこと。欲を言えば限がないことを古の賢者は悟っていたのかも知れません。

ここ数年、マンションの販売現場を見ている中で「住まいと自分のライフスタイルの両立」を考えて現実的にマンションを選ぶ人が増えていると感じます。その選択が都心居住だったり自然の多い郊外居住であったり様々ですが、しっかりと「自分らしさ」を考えて住まいを選ぶのは素敵なことだと思います。理想と現実の擦り合わせは、誰もが難しいことだと思いますが住まい方だけでなく生き方も多様な選択が可能な昨今。これから家を選ぶ方には、「将来どうありたい」のかを考えつつ自分らしい選択で理想のライフスタイルを実現して欲しいと思います。


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