亀山早苗の恋愛コラム/連載:アラフォーの“傷跡”

肉親の死、失踪…人生が重すぎて恋愛もできない42歳(2ページ目)

【連載:アラフォーの“傷跡”。ずっと誰かに言いたかった】アラフォー女性に背負ってきた人生の事情や悩みごとを聞く連載企画。自分がそうしているわけではないのに、波瀾万丈な人生を送る人がいる。母の病死、父の自殺、弟の失踪、そして恋愛もうまくいかない……そんなリエコさんの心の内とは。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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恋愛もうまくいかない

――家族ってあっけなく離散しますね。
リエコ:ねえ。そんな状態だから、私は心のどこかで家族を信じていないのね。20代後半に、婚約したことがあるんです。だけど相手の実家があまりにも家族仲がよくて、自分がこのなかに入っていけないと思って婚約破棄しちゃった。相手は私のことをわかった上で、「力になるから」って言ってくれたけど、私は自信がもてなくて。
家族

幸せな家庭が怖かった

――その後、恋愛はしてきたでしょう?
リエコ:ろくな恋愛はしてませんよ(笑)。

最悪だったのは、似たような環境で育った人と知り合ったとき。彼はお母さんが自殺で亡くなっていたんです。親しくなるにつれて、彼は「どうせオレたちみたいな生まれは」と言うようになった。

私は父が自殺しているけど、そのことで父を恨んだことはないし、むしろ、気づけなかった自分を悔やんでいた。だけど彼は、自分の人生が母親のせいで台無しになったと思ってる。彼は小さいときにお母さんを亡くしているから、ちょっと感覚が違うんですよね。

最後は、「一緒に死んでほしい」と言い出して。逃げ出すのが大変でした。ストーカーみたいになっちゃって。あちらのお父さんやきょうだいとも、何度も話し合ったし、警察にも行ったし。

――心の深くて暗い部分で引きあった関係って、ネガティブな方向に行きがちですよね。
リエコ:そうなんです。だから、自分も明るくしていないと、ネガティブな男につけいられる。

――その後は?
リエコ:私、誰にも言ってなかったけど、35歳のときに子宮癌になって、手術しているんですよ。早期発見だったからたいしたことはなかったんだけど、あとが怖いから子宮全摘しちゃったの。

――そうだったんですか……。知らなかった。
リエコ:みんなには筋腫の手術って言ってたの。でも実は術後、更年期みたいな症状に悩まされて、けっこう大変だった。さらにその直後に転職してるからね。

――忙しいですよね、日々。
リエコ:わざわざ忙しい仕事に転職したのかもしれない。

――外食産業チェーン店の地域マネージャーでしたっけ。
リエコ:そうそう。前の仕事がマーケティングだったから、これでもヘッドハンティングされたのよ。私を必要としてくれるということがすごくうれしかった。だから今の会社には、本当に感謝しているんです。

――じゃあ、ここ10年は落ち着いた生活を?
リエコ:仕事はね。忙しいけどやりがいがある。

でも恋愛がらみは本当にだめ。そのネガティブで引きあってつきあった人は2年前、自殺しちゃったし……。最後に私に電話をかけてきたの。「これから死ぬ」って。彼のお父さんに連絡とって、みんなで探したけど見つからなくて。結局、遠く離れたところの車の中で亡くなっていたらしいです。私宛に、本当に好きだったという遺書があった。

――気持ちが重くなりますね。
リエコ:自分の周りの人が死ぬということに対して、ものすごく過敏になってしまってね。誰にも言ってないけど、今もカウンセリングに通っているんです。少しずつ、自分の人生を整理して考えたくて。もともと人間関係ではそれほど苦労してないんだけど、それは私が常に他人に対して一歩引いているから。濃い関係になると、とたんにバランスが崩れちゃうのね。だから恋愛すると、ドロドロになりがち。

――今はつきあっている人、いないんですか?
リエコ:男友だちはいるんだけど、恋愛に発展しない。というか、発展しないようにしているんでしょうね、自分が。最近知り合った男性に、「もっと親しくなりたいのに、どうして壁を作るの?」と言われました。私も、その人のこと好きなんです。だけど今さら、私の人生を全部話すのもめんどうだし、彼がどう受け止めるかもわからない。だったら、友だちでいたほうがいいんじゃないかなと思っちゃうんです。

――人生折り返し地点、今、振り返って自分の人生をどう感じていますか?
リエコ:
何もかも運命なのかなあ、と。自分に課せられた運命を変えることはできないのかもしれません。だから私自身がどうやって生きていけばいいのかは、これから考えるしかないんでしょうね。遅いけど、今がスタート地点だと思いたいです。


いつも明るく、人に対する気配りも抜群の彼女が、これほどまでに重い人生を抱えていたのかと愕然とした。彼女は何も悪いことをしていない。だからといって、「そういう星のもとにうまれた」と片づけられる話でもない。
生きていくというのは、それだけでも大変なことなのだ。

■短期集中連載【アラフォーの“傷跡”。ずっと誰かに言いたかった】
今回が最終回です。これまでの連載記事はコチラ

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