照明・LED/LED照明

人気カフェのリラックス空間に学ぶ“あかりのワザ”

自宅にいるように落ち着けると評判のカフェには、味わい深いコーヒーに加えて、店内の至る所にオーナーのこだわりが見られます。もちろん照明もそのひとつ。そこで今回は、人気カフェに学んだ「住まいに取り入れたいあかりの手法」について、写真とともにご紹介しましょう。

執筆者:越川 俊男

「リラックスできる」と人気のカフェを訪問

東京都板橋区・東武東上線中板橋駅からほど近い場所に、「まるで自宅にいるようにリラックスできる」と評判のカフェがあるというので、訪ねてみました。そこは、焙煎や技術に惚れ込んだ協力店から仕入れた豆で淹れたフレンチプレスのコーヒーもさることながら、店内の至るところにオーナーのこだわりが見られました。なかでも照明にはさまざまな工夫があり、住まいに取り入れたいと思えるポイントがいくつもあったのです。

落ち着いた雰囲気と温かみのあるあかりに、思わず誘われてしまいます

落ち着いた雰囲気と温かみのあるあかりに、思わず誘われてしまいます


あかりについてお話をする前に、カフェの外観について触れておきましょう。なぜなら、外から見える店の印象に照明が大きく関わっているからです。
まず、離れた場所からでも、印象的な白い外壁に設けられたあかりと、ガラスドアとFIX窓の向こうにともる、あたたかみのあるあかりを目にすることができます。窓から漏れるほのかなあかりに、人は惹きつけられるものです。思わず歩みを緩めてしまう方も多いのではないでしょうか。
そんな素敵な外観は、「コーヒーが美味しいだけでなく、ここで過ごす時間と空間に満足してもらえるような店にしたかった」というオーナーのコンセプトによるものです。

あかりでエリア分けされた店内

そのコンセプトは、外観だけでなく店内のインテリアや照明にまで貫かれていて、居心地のよいくつろげる空間を生み出しています。2013年11月のオープン以来、口コミでお客さんが少しずつ増え、8割以上がリピーターというのも、そのあたりに秘密がありそうです。

カウンターやテーブル、椅子などは全て木製。住まいでも取り入れられそうなデザインであることも、自宅のリビングにいるような気分にさせてくれる理由のひとつかもしれません

カウンターやテーブル、椅子などは全て木製。住まいでも取り入れられそうなデザインであることも、自宅のリビングにいるような気分にさせてくれる理由のひとつかもしれません


10坪の広さのシンプルな箱型の店内に入ると、壁は漆喰仕上げで、床は無垢の杉を使ったフローリングとなっていました。「壁の漆喰は、自分も作業を手伝いました」とオーナー。自然素材で囲まれた空間は、あかりが柔らかくあたっています。

店内を見回して「うまい方法だな」と感心したのは、あかりで空間をそれとなくエリア分けしていること。入って右手にあるカウンターと左手のテーブル席、このそれぞれの空間の照明器具を変えることで、空間に異なる趣が生まれ、上手にエリア分けされているのです。

「ちょうどよい位置にあかりが配置されるように、カウンターの上もテーブル席の上も、照明器具を取り付けるダクトレールの位置を数センチ単位で調整しました(オーナー)」
絶妙な位置に取り付けられたあかりによって、カウンターの空間とテーブル席の空間が明確に区切られ、まるで見えない壁に仕切られているかのような効果を生み出しています。

「タスク・アンビエント」で、手元と空間に必要な明るさを

カウンターの上は、ほうろう風のシェードがついたLEDのペンダントライトが3つ、ダクトレールに取り付けられていました。

このカフェには「タスク・アンビエント」という手法が取り入れられています。「LED照明でできる!シーンに合わせたあかり演出」でも説明しましたが、タスク・アンビエント照明とは、作業面を照らすタスク照明と、周囲を照らすアンビエント照明を組み合わせる照明手法のことを指します。

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ダクトレールに取り付けられたペンダントライトはLED電球を利用。シェードによって降り注ぐ光の範囲を制限しています。閉店後もペンダントライトは点灯したまま。あかりをつけておくことでお店に目が行き、また街とつながっているかのような効果もあるためです。LED電球なので電気代も気にならないそうです

ダクトレールに取り付けられたペンダントライトはLED電球を利用。シェードによって降り注ぐ光の範囲を制限しています。閉店後もペンダントライトは点灯したまま。あかりをつけておくことでお店に目が行き、また街とつながっているかのような効果もあるためです。LED電球なので電気代も気にならないそうです


カウンターは、役割によってスペースが分けられています。オーナーが淹れたコーヒーを一時的に置くスペース、テイクアウトの商品ができあがるのを待つ人たちにコーヒー豆を見せるためのスペース、最も入り口に近い部分は会計をするためのスペースといった具合です。

そして、それぞれ役割の違うスペースを照らすように、3つのペンダントライトの位置が決められています。シェードが光の降り注ぐ範囲を制限することで、役割ごとのスペースを照らすタスク照明になっているのです。それに対し、下の写真の通り、テーブル席のあかりは、シェードのない全方向拡散型の照明器具が設置されていますが、これがいわばアンビエント照明の役割も果たしています。

また、「LED照明で素敵に変身!夜を愉しむためのあかり」でも説明しましたが、このカフェでは光のバウンドをうまく活用しているといえるでしょう。シェードのない全方向拡散型の照明器具を用いることで、床や壁、天井にバウンドした光が、さらに別の場所にバウンドするというように、バウンドを繰り返すことで、空間全体を包み込むような明るさを実現させているのです。

白い漆喰の壁に、全方向拡散型の照明が空間を照らします。各テーブルの上に照明器具が配置されていますが、テーブル上だけでなく空間全体に光が拡散されています

白い漆喰の壁に、全方向拡散型の照明が空間を照らします。各テーブルの上に照明器具が配置されていますが、テーブル上だけでなく空間全体に光が拡散されています


ダクトレールにより、照明器具が各テーブルの上に設置されるように位置が細かく調整されているため、来店客はあかりでスペースを区分けされたテーブルに自然と誘導されるようになっています。しかも、クリアな電球を選んでいるため、フィラメントが見えるのですが、この「点光源」がインテリアのアクセントにもなっていますね。

あかりでカウンターとテーブル席をエリア分けし、タスク照明とアンビエント照明を上手に組み合わせた店内。実にうまい照明手法ですが、そのほかにも、真似したいポイントがありました。それについては、次ページで説明しましょう。

空間の一番奥に「最も明るい場所」をつくる>>
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