天空の寺院、世界遺産「プレアヴィヒア(プレアヴィヘア)寺院」
第三塔門東に設置された付属施設。誰もが『天空の城ラピュタ』を思い起こす光景だ。この先の断崖からはコーラート台地が一望できる
旅の起点は世界遺産「アンコール」と同じシェムリアップ。今回は、アンコールに行く人にぜひ訪れることをオススメしたいカンボジアの世界遺産「プレア・ヴィヒア寺院」を紹介する。
プレア・ヴィヒア寺院で出会う奇跡的な景観:参道から塔門へ
第四塔門から続く参道から見上げた第三塔門。ピラミッド状のプラットフォーム上に築かれているのがわかる。このように、塔門を抜けないとその先を見ることができない
石段に据えられたナーガ。ここから参拝がはじまる
境内には参道、5つの塔門、4つの中庭が南から北へ一直線に延びている。参道から歩くほどに高くなり、もっとも高所にある第一塔門まで標高を120mほど上げている。
プレア・ヴィヒア寺院をお参りする際は寺の左右に回り込んだりせず、そのプランに従ってぜひ一直線に進んでいただきたい!
参道を歩き出すと、最初に見えてくるのはもっとも下、もっとも南に位置する第五塔門だ。そして第五塔門を潜り抜けると中庭が広がっており、その先に続く参道の向こうに第四塔門が見えてくる。塔門をくぐらないとその先の姿が見えない仕掛けで、ひとつ塔門をくぐるごとに標高が上がり、神聖さを増していく。
塔門の破風やまぐさ石に刻まれたレリーフにも注目だ。「乳海攪拌(にゅうかいかくはん)」をはじめヒンドゥー教のさまざまな神話が彫られており、この場所が聖域であることを強烈にアピールしている。
プレア・ヴィヒア寺院で出会う奇跡的な景観:神の景色
プレア・ヴィヒア寺院山頂からの絶景。ポツリと浮かぶ雲とその影が旅情をそそる
ピラミッド状に石を組み上げてプラットフォームを形成している
中央祠堂の中にはもともとヒンドゥー教最高神シヴァの象徴であるシヴァ・リンガが供えられていたが、いまでは数多くの仏像が並べられている。仏像と並んでヒンドゥー教の神様であるガネーシャなども祀られており、神様の種類にこだわらずに祈りを捧げるカンボジア人のおおらかさが伝わってくる。
プレア・ヴィヒア寺院は世界の中心にあるという須弥山(しゅみせん。メール山)をかたどっているが、同時に山自体も須弥山を表しているのだろう。須弥山はヒンドゥー教のみならず仏教やジャイナ教、バラモン教、ボン教にも伝わる聖なる山。山頂は聖域中の聖域で、インドラ(帝釈天)をはじめとする神々が住んでいると伝えられている。
第一塔門、中央祠堂内部。ガネーシャ像や、ナーガに守られたブッダの像などが祀られている
第一塔門の先に突如姿を現すのは、地の果てまで続く緑の大地。標高625mから見下ろす息をのむ絶景だ。それはまるで須弥山から見下ろすこの世の姿。太陽の暖かさ、雲の流れ、風のざわめきは天の恵みや時間の移ろいを感じさせ、一面に広がる緑は生老病死を繰り返す生命を思わせる。
古代から人はこの景色に魅了されてきたのだろう。この景色を眺める者は時間を超えて同じ彼らと思いを胸にし、彼らが感じてきたように神を感じるのである。