注文住宅/家づくり物語 実例を通して

不同沈下に強い「べた基礎」 基礎工事の全過程

両親宅の新築を連載化したコラムシリーズの第8回目。今回は建物の基礎工事についての話です。基礎工事は建物の安全性能を左右するだけに、基礎の欠陥工事はわれわれ居住者の生命と財産に多大な悪影響を及ぼします。ビー玉が勝手に床の上を転がるような家を建てられては困ります。自分の目でチェックし、きちんと施工されているかを確認しなければなりません。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


基礎完成写真

建物の土台となるのが基礎。住宅建築おいて基礎工事はとても重要になる。

「住宅建築において基礎工事はとても重要」―― このことに異論を唱える人はいないでしょう。こうした事実を裏付けるかのように、お隣りの国・韓国から衝撃的なニュースが飛び込んできました。

報道によると2014年5月、完成直前のマンション(7階建て)が30度近く傾き、崩壊寸前の危機にさらされているというのです。原因は不安定な地盤の上に自重を安定して支えられるだけの適切な基礎工事が十分に行なわれていなかったようです。幸いにもマンションは建設途中だったため、被害に遭われた人はいませんでしたが、生活の基盤である住宅のトラブルは居住者の生命や財産に多大な影響を及ぼします。それだけに、建物の基礎工事には細心の注意が欠かせません。

振り返って、わが国では東日本大震災以降、建築にたずさわる職人の慢性不足が顕在化し、労務費の高騰や工事の遅延・中止が現実のものとなっています。特に型枠大工の不足は深刻で、一部からは施工不良の誘発を懸念する声が上がっています。震災復興は極めて重要ですが、その他の建設工事にしわ寄せが及んでは元も子もありません。

両親宅のマイホーム建築では2013年12月に基礎工事が行なわれました。基礎工事の重要性は十分に認識していたので、私自身、何度も現場へ足を運び、作業風景を見学しました。現在はすべて完成し、両親は新居での生活を開始していますが、ビー玉が勝手に床の上を転がる(=家が傾いている)ようなことはなく安心しています。「住宅建築において基礎工事は極めて重要」―― わが家も決して例外ではありませんでした。

今回で第8回目となる高齢者仕様住宅の新築連載シリーズ。本コラムでは、両親宅の基礎工事がどのように行われたかをご紹介します。基礎工事は建物の安全性能を左右するだけに、その完成度の高さが求められます。

不同沈下の可能性があるため、わが家は「べた基礎」が採用される 

敷地の写真

地盤調査の結果、地盤強度に耐力不足が判明し、不同沈下の可能性が指摘された両親宅の敷地

上述の通り、両親のマイホーム建築では2013年12月に基礎工事が行なわれました。木造一戸建て住宅の基礎には大きく布基礎とべた基礎がありますが、今回、わが家ではべた基礎が採用されました。

もともと建築現場の敷地は畑で、地盤調査により地盤強度に耐力不足があることが判明していました。自沈層という弱い地盤が3.5メートルほど連続しており、調査会社から不同沈下の可能性が指摘されていました。

こうした地盤構成を呈している場合、べた基礎のほうが対応しやすいと一般的に言われています。べた基礎は立ち上がりだけでなく底面全体を鉄筋コンクリートで覆うため、面で建物が均等に支えられることにより、不同沈下に対する耐性の向上が期待されます。布基礎に比べて、べた基礎は地面との接地面積が広いので、上部(=建物)荷重を分散し、接地圧を低減する効果があります。

住宅の基礎工事はコンクリート施工に始まり、コンクリート施工に終わる 

今回、施工を請け負った細田工務店では、基礎工事の手順として基礎の下地造りから着手しました。まずは地盤面下の土砂や岩盤を掘削(根切り)して平らに仕上げた後、砕石(さいせき)を5センチメートルほどの厚さで敷き込んで踏み固めていきました。

同時に、この時点で土壌の防蟻処理(シロアリ対策)も行い、次に地中からの湿気上昇を防止するため、砕石敷きの上に防湿フィルムを敷いていきました。このフィルムは穴が開いてしまうと十分な機能を発揮できません。傷つかないよう、防湿フィルムが直接接する下地面は平滑に踏み固められている必要があります。湿気は建物の強度低下につながりますので、きちんとした湿気対策が欠かせません。

職人の作業風景

職人がコンクリートを平らにしている様子

続いて、基礎工事は捨てコン打設へと進みました。敷地の外周部に基礎作成の前処理となる下地のコンクリート(捨てコン)を深さ5センチメートルほど流し込み、平らに仕上げていました。捨てコンクリートそのものに基礎強度を高める役割はありませんが、捨てコン打設は基礎の底面を平らにすると同時に、土のままでは出来ない型枠や鉄筋の墨出し(位置出し、目印付け)が行なえるようになります。

そして、いよいよ鉄筋組みへと作業は進みました。耐圧盤(スラブ)と立ち上がりを施工するための配筋作業に着手です。わが家の場合は直径13ミリメートルの鉄筋が、場所に応じて20センチ間隔あるいは30センチ間隔で構造計算に基づき配筋されていました。

生コンの流し込み風景

べた基礎となる鉄筋コンクリートを施工すべく、生コンクリートを流し込む様子

その後は生コンクリートの流し込みです。流し込みはスラブコンクリート(耐圧盤)から始まり、スラブコンクリートが硬化した後、続いて立ち上がりの鉄筋を型枠で囲い、その型枠内に生コンクリートを流し込みます。

ここまで来ると、完成までもう一歩です。型枠が外れれば基礎の完成です。

ただ、基礎工事が12月だったため、長めの養生期間が必要とされました。養生期間中は養生シートがかぶせられますが、この期間が短いとコンクリート中の水分が凍結してしまい、コンクリートのひび割れを誘発する危険があります。そのため、冬場は最低でも5日間の養生期間が必要だそうです。わが家も所定の養生期間を経て、無事に基礎が完成しました。

「たかがコンクリート、されどコンクリート」――。コンクリートの奥深さに感心させられた日々でした。

次回(第9回)は、いよいよ建物の上棟です。その工事状況を詳しくご紹介します。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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