眼窩骨折・吹き抜け骨折とは
眼窩とは難しい言葉ですが、医学用語で眼球の周辺の骨のことを指します。眼窩には多数の骨が連続しているので、骨折の場合、個々の骨の名前を呼ぶのでなく眼窩骨折と呼びます。
眼球の周辺の骨は厚みが0.5mm以下で、外力が加わるとすぐに骨折します。
外力が働くと眼窩骨折がすぐに発生します。
眼窩骨折の分類
- 眼窩内側壁骨折…眼窩の内側が折れたもの
- 眼窩下壁骨折…眼窩の下側が折れたもの
- 眼窩外側壁骨折…眼窩の外側が折れたもの
- 眼窩上壁骨折…眼窩の上側が折れたもの
眼窩骨折・吹き抜け骨折が多い年齢・性差
運動、事故などに伴い発生する骨折ですので、あらゆる年齢層に発生します。一般の人にも発生しますし、ラグビー、バスケットボール、野球、格闘技などのスポーツ選手などでもみられます。男性に多い骨折ですが、女性にも発生します。眼窩骨折・吹き抜け骨折の症状
骨折部位の周辺の腫脹、疼痛、皮下出血、複視などが発生します。骨折した右目の上方視が制限され物が二重に見えます。複視という症状です。
顔の中央部分(頬、口腔粘膜、歯肉、鼻)の知覚麻痺も発生することがあります。骨折により視神経が高度に圧迫されると視力の低下が合併します。
眼窩骨折・吹き抜け骨折の検査・診断法
■単純X線単純X線写真は放射線被爆量も少なく、費用もわずか。その場で撮影も終了し当日説明を受けられるので、必ず施行します。
単純X線では上顎洞に貯留した血液がわかることがあります。
■CT
単純X線で診断がつかない場合でもCTであれば診断可能です。
顔面単純CT画像。骨折の診断が正確に可能です。
■MRI
MRIは磁気を使用して人体の断面写真を作成する医療用機器です。被爆がないのが最大の特徴です。
顔面MRI画像。骨以外の脂肪、筋肉の状態がより正確に診断可能です。
眼窩骨折・吹き抜け骨折の治療法・手術方法
複視がない場合、特別な治療は必要ありません。複視がある場合治療が必要となります。眼窩骨折・吹き抜け骨折の治療として保存療法、手術療法の2つの治療法があります。■保存治療
眼球運動の練習を毎日行うことで、複視が消失すれば手術は必要ありません。
具体的には5円玉を顔の正面に紐で吊るして、左右前後に往復運動させ、顔を固定したまま、目で5円玉の運動を追います。この運動をしばらく続けると複視が改善、消失します。
■手術治療・手術方法
2週間程度眼球運動練習を行っても複視が改善しない場合、手術が必要となります。
骨折した骨片を元の位置に戻し、必要があれば固定します。眼窩の骨は薄いため、この作業をおこなうと骨欠損が生じる可能性が高く、欠損により眼球の位置が安定しない場合なんらかの医療材料で骨欠損を再建します。再建材料として、骨移植、軟骨移植、チタン、吸収性プレート(人体の中で分解され吸収されてしまうプラスチック)などがあります。
それぞれ利点、欠点があります。手術する形成外科医と相談の上手術方法を決めて下さい。
金属のチタンで骨欠損を再建しました。