世界遺産/ヨーロッパの世界遺産

ベネチアとその潟/イタリア(3ページ目)

400の橋、177の島、150の運河からなる水の都ベネチアは地中海最強を誇った海洋都市国家。ルネサンスの舞台でもあり、ビザンツ・ルネサンス・バロック・イスラムが混在する華麗な建築物が立ち並んでいる。裏通りを歩けば運河と歩道が入り組んだ迷路のような家並みが広がっており、舟巡りと町歩きが最高に楽しい街でもある。今回は文化遺産登録基準6項目をすべて満たしたキング・オブ・世界文化遺産「ベネチアとその潟」を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

ベネチアの見所 1.ベネチア本島

アクア・アルタとムーア人の時計塔

ラピスラズリの文字盤と黄金の星座が美しいムーア人の時計塔。時間や潮の干満を知ることができる。この時はちょうど満潮で、高潮=アクア・アルタによってサン・マルコ広場は水浸しになってしまった

「ベネチアとその潟」は、島と砂州に囲まれたベネチア湾一帯を登録した世界遺産。まずはベネチア本島の代表的な見所を列挙してみよう。

■サン・マルコ大聖堂
828年に守護聖人・聖マルコの遺骸を祀るために建てられた教会堂。現在のギリシア十字形・5つのタマネギドームを持つビザンツ式大聖堂は11世紀に再建されたもの。ポルティコのモザイク、内部の黄金装飾やモザイク、宝石を散りばめたイコノスタシス(衝立)など豪華絢爛。

■ドゥカーレ宮殿
ドゥカーレ宮殿と牢獄をつなぐため息橋

ため息橋。夕刻、この下でキスをすると永遠に結ばれるんだとか

ベネチア総督府が置かれ、政庁や裁判所、総督私邸として機能していた宮殿跡。現在は博物館。1階部分にイスラム建築に見られる柱廊、2階部分にゴシック式の繊細な柱を配し、独特の優雅さをかもし出している。東に突き出ているのは牢獄に通じる橋で、処刑を宣告された罪人が嘆息したことから「ため息橋」と呼ばれている。

■リアルト橋
ベネチア本島をS字に流れるカナル・グランデにかかる4つの橋のひとつ。ルネサンス期の建築家アントニオ・ダ・ポンテの設計で、16世紀の完成。白大理石による豪華な造りで、中には宝石店などの露店が並んでいる。

■サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会
カトリックの教会堂としては珍しい正八角形の建物。ビザンツ建築に見られる集中式(点対称形)と、ルネサンス・バロックの象徴である巨大なクーポラを組み合わせた美しい教会で、17世紀にペストの大流行が沈静化したことから聖母マリアに感謝するために建てられた。

 

■サンティ・ジョバンニ・エ・パオロ教会
カ・ドーロ

ゴシックの繊細な装飾と柱が美しいカ・ドーロ

イタリアン・ゴシックのレンガ造りの教会。荘厳な外観だけでなく、内部にはヴェロッキオの彫刻「コッレオーニ騎馬像」、ヴェロネーゼの絵画「受胎告知」「聖母被昇天」などの作品も掲げられており、見所が多い。

■邸宅群
ベネチアには中世に名を馳せた貴族や大商人たちの邸宅も数多く残されている。代表的なのは、繊細なゴシック建築が美しいカ・ドーロ、美術館として公開されているカ・ペーザロやカ・レッツォーニコなど。

■アクア・アルタ
近年問題になっている高潮で、満潮や海から吹く季節風シロッコなどの要因が重なったときに観測される。冬に多く、地盤沈下と温暖化による水位上昇の影響で近年頻度と程度が増したといわれる。サン・マルコ広場が水没するとギャング・ウェイと呼ばれる簡単な歩道橋が組み立てられる。

 

ベネチアの見所 2.潟の島々

ブラーノ島の街並み

カラフルな色使いが美しいブラーノ島の街並み。男たちが漁師として海に出ている間、女たちはレース編みを行っていた。それが発達してベネチアン・レースの街として知られるようになった

世界遺産にはベネチア本島以外の島々も登録されている。ヴァポレットなどで手軽に訪ねることができるので、ぜひ足を伸ばしてみたい。島は177もあるといわれるが、主な見所を列挙しよう。

■ジュデッカ島
アンドレア・パラディオ、アントニオ・ダ・ポンテが設計したレデントーレ教会がある島。サン・ジョルジョ・マッジョーレ島と並びの島で、中世のかわいらしい家並みが連なっている。海岸沿いにはイタリアン居酒屋が並んでいる。

■サン・ジョルジョ・マッジョーレ島
サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会

サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会。左が鐘楼で、右の白い部分が大理石ファサード

サン・マルコ広場の対岸に浮かぶ島で、同名の教会が立っている。ラテン十字形(縦の棒が長い十字架)とドームが特徴的なルネサンス建築で、アンドレア・パラディオによる16~17世紀の作品。「水辺の貴婦人」の異名を持ち、ベネチア本島を一望する鐘楼からの眺めがすばらしい。

■トルチェッロ島
ベネチアの起源といわれ、ヘミングウェイが愛したことでも知られる島。5~6世紀から入植が始まったが、現在ここで暮らすのは10戸程度という落ち着いた街並みが広がっている。サンタ・マリア・アッスンタ聖堂は7世紀にで遡る歴史を持つベネチア最古の教会で、初期キリスト教時代の美しいモザイクで知られる。

 

■ムラーノ島
大航海時代以降の東方貿易の衰退と、ナポレオンによる支配を受けて力を失ったベネチアは、以後ガラス細工やレース細工などの手工業で没落を免れた。ムラーノ島には数多くのガラス工房があり、ベネチアン・ガラスを製造する様子を見学することができる。

■ブラーノ島
中南米やアジアのコロニアル住宅のようなカラフルな色使いの家並みが続くのがこの島。その昔、漁師たちが深い霧の中でも自分の家がすぐわかるように、派手な色に塗り替えたのだそうだ。繊細なベネチアン・レースで知られており、こちらも工房で見学できる。

■リド島
トーマス・マン著『ベニスに死す』の舞台で、ベネチア国際映画祭が開催される島。細長い島で、その南にアドリア海が広がっている。ビーチ・パラソルとかわいらしい小屋が独特の景観を生み出している。
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