今回は、そもそもやる気というものがいったい何なのか、まずそのお話から紹介したいと思います。
自己効力感=成功体験の積み重ね
「やる気」と一言で言っても、実は心理学的にはいろいろな概念があります。子どもの興味や関心のことを指す「やる気」もあれば、自信という「やる気」もあります。わが子が英語や数学に興味・関心を持って取り組んでくれれば、言うことはありませんが、そこは人それぞれ。子どもにも個性があります。そこで、どの子にも共通した「やる気」である、自己効力感(=セルフ・エフィカシー)という心理学の概念を紹介しましょう。自己効力感とは、がんばって達成したことで得られる、いわば成功体験がやる気の元になっているという考え方です。
例えば、太郎君ががんばって勉強をしました(行動)。その結果、テストで100点満点を取りました(結果)。この場合、がんばって努力したという行動が、100点満点をとったという結果にうまく結びついています。これが成功体験です。むろん、勉強に限らず、なわとびが飛べるようになったとか、虫採りに成功したとか、そういう成功体験で構いません。こうした、成功体験の積み重ねこそが、「やればできる」という自信につながり、やる気の源になるわけです。
逆に、努力しても良い結果が得られなかった場合、人はやる気をなくします。なぜなら、がんばって努力しても結果が良くないのなら、がんばること自体が無駄なのではないかとさえ思ってしまうからです。
よく遊び、よく学ぶ子が伸びるわけ
あるノーベル賞学者が、「子どもをノーベル賞受賞者にさせたかったら、小さい頃に虫採りをさせなさい」と言いました。確かに一理あります。虫採りというのは、マニュアル通りにすればできるというものではありません。そもそも、虫採りにコツはあってもマニュアルはありません。しかも、例えコツをつかんだとしても、根気や工夫が必要不可欠です。こうして苦労を重ねた上での結果(=成功体験)ですから、達成したときの喜びは、子どもにとって貴重なものになることは言うまでもありません。実は、小さい頃からいろいろなことに挑戦する子は、その後、勉強面でも伸びるという傾向があります。勉強だけでなく部活も頑張る子が、その典型例です。さらに言えば、部活に限らず、外でよく遊ぶ子にも、そういう傾向が顕著に見られます。最近の学力低下問題の背景の一つに、子どもが外で遊ぶことが減ったことを挙げる人もいますが、確かにその通りと言えそうです。
バーベキューひとつ例にとっても、今の子どもは火をおこした経験さえ無い子が大半です。携帯用のコンロを持ち込んでのキャンプは確かに楽ですが、一から挑戦する醍醐味にはかないません。
昔から、「よく遊び、よく学べ」とはよく言ったものですね。このように、小さい頃から小さな成功体験を積み重ねている子に、やる気に満ちあふれた子が多いのです。
今からでも遅くない!
何事にも積極的に挑戦する子は、勉強面でも伸びる
高校受験を通して、子どもが成功体験を得る機会はたくさんあります。というよりも、受験自体、成功体験を得る良いチャンスと言えます。
そのためには、小さな成功の積み重ねが大切です。これを心理学ではスモールステップの原則と言います。「志望校に合格する」という大きな成功を収めるためには、まず、各教科の成績を上げることが目標になります。さらに言えば、数学や英語など各教科の成績を上げるためには、1、2年生で学んだ計算問題、英単語や文法事項などを復習して基礎基本を身につけることが目標となります。
ですから、復習が大切と言われるゆえんはここにもあるのです。簡単な計算問題、簡単な英単語や文法事項をおさらいすることで、「わからなかったことがわかった!」「できなかったことができた!」という成功体験の積み重ねにつながります。こうして少しずつそして着実に基礎基本を身につけることが自信につながり、さらには、成績アップ、志望校合格という大きな成功へとつながるのです。
千里の道もまず一歩からとはよく言ったものですね。スモールステップの原則を大切にして、子どものやる気(=成功体験)を大切にしてあげましょう。