世界三大仏教遺跡のひとつ「ボロブドゥール寺院遺跡群」
ジャングルの中にたたずむボロブドゥール。最上段の塔が大ストゥーパだ。もともと高さは42mあったと見られているが、頭頂部が欠損して33.5mになった
今回はボロブドゥールを中心に、ムンドゥ寺院とパオン寺院を含むインドネシアの世界遺産「ボロブドゥール寺院遺跡群」を紹介する。
神域としてのボロブドゥール
ボロブドゥールを東正面から見上げる。山のような構造は、世界の中心に立つという伝説の須弥山(メール山)を模しているともいわれる
斜めから見たボロブドゥール。階段構造が見て取れる
このうち、アンコールはクメール人が建てたアンコール朝(クメール朝)の首都遺跡で、バガンはビルマ人初の王朝であるバガン朝の首都遺跡。アンコールには数十~数百の寺院や宮殿が残されており、バガンには数千のパゴダ(仏塔。ストゥーパ)が立ち並んでいる。
これに対してボロブドゥールはたったひとつの仏教遺跡を示す(世界遺産「ボロブドゥール寺院遺跡群」といった場合はボロブドゥール、ムンドゥ寺院、パオン寺院の3寺院を指す)。ボロブドゥールを歩いていると、たったひとつで数十~数千に匹敵する理由がなんとなくわかってくる。
第三円壇から上の眺め。ここより上は欲も色(物質)も消え去った悟りの領域。右奥がボロブドゥールの中心である大ストゥーパだ
日本のお寺にはご本尊を祀るお堂があり、お堂の中には仏像を並べた聖域がある。キリスト教の教会も同じで、聖職者のみが入れる聖域に主祭壇が置かれている。こうした聖域は「内陣(ないじん)」と呼ばれており、人々が祈りを捧げる「外陣」とハッキリ区別されている。
しかし、ボロブドゥールには外陣らしい場所も礼拝堂も僧院も見当たらない。そこで感じるのは、ここが聖域であるという強烈な主張。人がいるべき場所ではないという得体の知れない神々しさだ。
角から見たボロブドゥール。方形(四角形)といっても角は20ある。ここと次のページの「隠された基壇」を比べてほしい
そんな空気をひしひしと感じる。
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