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石川尚の一家一脚・椅子物語UP#011 学生が一脚ずつ所持した椅子

UP#011:・・・ 南ドイツにあったウルム造形大学の学生一人一人の為にデザインされた椅子。機能を追求すれば美しさが生まれる」という心が伝わってくる、羨ましいかぎりのスツールです。

石川 尚

執筆者:石川 尚

ファニチャーガイド



 綺麗な直線だけで構成されたスツールがある。
無駄な要素は全くない・・・無さすぎて、少々寂しいくらいだ。

このスツールは、ある学校で学生の為にデザインされたものである。南ドイツの小さな都市、ウルムに開校された‘ウルム造形大学’・・・・・20世紀デザイン界のビートルズ的存在、あのバウハウス(総合芸術学校)と縁が深い学校である。

1919年、ドイツのワイマールに設立したバウハウスは、1933年、ナチス政権によって解体された。わずか14年という短命の小さな学校であったが、デザイン、建築、造形教育において世界的に大きな影響を与えた学校なのである。

その精神は、その後アメリカのニューバウハウスやドイツのウルム造形大学へと受け継がれた。

ウルム造形大学の初代学長はマックス・ビル氏・・・・・スイス生まれのビル氏はチューリッヒの美術学校からドイツのバウハウスへ進み、1953年自ら設計し、カリキュラムの立案をしてこの学校を設立した。

この時、彼が一人一人の学生のためにデザインしたのが、このスツールである。

←厚さ18mmの座面と両側の脚との接合部分。
8mm幅のくり返しで縦横方向の材を活かして接いでいる。
つい枡酒を思い出してしまう・・・日本的なディテール。



学校では学生がこのスツールを一脚ずつ所持して、様々な学校生活の中で使用した。もちろん、作業や聴講の時に座るスツールであるが、横にするとテーブル・机になり、逆さにして本や教材を置く本箱にもなる。
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