急性骨髄炎とは
骨髄に炎症が生じた病態です。通常は細菌感染により炎症が生じるため、急性化膿性骨髄炎とも呼ばれます。骨髄炎が関節に波及すると、化膿性関節炎となります。急性期の炎症が続いたり、適切な治療が行われない場合、腐骨(壊死した骨)が残存し、慢性骨髄炎に移行します。骨の周辺は骨皮質といい、硬いミネラルが主成分です。その中に骨髄があります。
骨髄は赤血球、白血球、血小板を産生する機能があります。周りを硬い骨皮質で囲まれているため、骨以外の組織との血管の交流に乏しく、骨髄炎が発生すると抗菌薬の骨髄への移行が乏しく、なかなか治癒しにくい病態です。
急性骨髄炎の症状
疼痛、腫脹、浮腫などが骨髄炎の局所症状です。病巣が進行すると骨に接した軟部組織の腫脹、皮膚の発赤、熱感が生じます。左膝の骨髄炎。炎症で局所の腫脹がみられます。
骨髄炎の影響が全身に波及した場合、発熱、食欲不振、体重減少などの症状が発生します。
急性骨髄炎の原因
■血行性感染皮膚の化膿病巣、上気道感染などが原因で血液の中の細菌が血流を介して骨髄に感染が生じる場合です。基本的には小児に発生します。
■病巣からの直接波及
皮膚、皮下組織の化膿病巣から連続的に骨、骨髄に感染が発生した場合です。
■直接感染
開放性骨折、骨の手術の術後に発生する骨髄炎で、通常は小児では比較的稀ですが、成人では交通事故後などでよくみられます。
急性骨髄炎の診断
■単純X線(レントゲン)初期の骨髄炎では通常異常所見は認められません。1週間以上進行しないとX線の異常はみられないため、注意が必要です。
膝関節単純X線正面像 脛骨に骨髄炎が認められます。
単純X線写真は放射線被爆量も少なく、費用もわずか。その場で撮影も終了し当日説明を受けられるので、整形外科では必ず施行します。
■MRI
MRIは磁気を使用して人体の断面写真を作成する医療用機器です。被爆がないのが最大の特徴です。欠点は費用が約1万円程度と高額な点や、狭い部屋に15分間ほど閉じ込められて、騒音が強いことです。脳外科の術後で体内に金属が残っている人、心臓ペースメーカー装着の人、閉所恐怖症の人などはMRI検査が無理なので、CT検査を行います。CT検査の費用は5,000円程度で、MRIより安くなりますが、被爆があります。単純X線では診断不可能な初期の異常をMRIで診断することが可能な場合があります。
単純MRI像 骨髄炎の炎症の範囲がよく描出されています。
■採血
骨髄炎が全身症状を伴う時、白血球増多、CRP上昇などの検査所見がみられます。
■血液培養
骨髄炎で全身症状を伴う場合、血液の細菌培養で菌を検出することが可能な場合があります。最も多くみられる起因菌は黄色ブドウ球菌です。その他腸球菌、レンサ球菌、インフルエンザ菌、結核菌などが検出されます。
急性骨髄炎の治療
■抗菌薬投与
進行が急速で非可逆的であるため、早期に強力な治療を開始します。まずは第一世代セフェムもしくはペニシリン系の抗菌薬の投与を点滴で行います。局所の安静と固定を施行します。
■手術
抗菌薬投与24時間で反応が見られない場合、手術を行います。骨膜下膿瘍の排膿と骨の開窓(骨皮質に穴をあける操作)を施行し、骨髄の内圧を下げ、さらに洗浄を十分行います。術後の抗菌薬投与も最低2週間は継続します。