赤ちゃんの先天性の病気・肥厚性幽門狭窄症とは
胃から十二指腸の間の幽門が厚くなっています
胃の内容物が胃に留まってしまうため、胃が張り、嘔吐する症状が出てきます。
男児に多く、300人から900人の新生児のうち、1人発症すると言われています。私が勤務する病院でも、年間1~2人の子供がこの病気によって入院しています。
肥厚性幽門狭窄症の症状…噴水のような嘔吐・体重減少
赤ちゃんの嘔吐には注意が必要です
丁度、出産後に退院して家に帰ってからしばらくして、ミルクや母乳を飲むたびに噴水のように嘔吐する場合は、この病気が考えれます。ミルクや母乳を嘔吐する場合、吐乳(とにゅう)と言って、口の横からダラっと出る程度なら、この病気である可能性が低いです。げっぷの時の嘔吐も可能性が低いですが、たまたまげっぷと嘔吐が重なることもあるので、飲むたびに嘔吐するかどうかで判断した方がよいでしょう。つまり、毎回、噴水のように嘔吐する場合は、この病気の可能性が高くなります。
嘔吐を繰り返すと、どうなるでしょうか? 栄養と水分が身体に入らないので、脱水症状や体重減少が見られます。
また、嘔吐することで胃酸が体内に出ていくので、胃酸が減り、血液中の水素(H)イオンと塩素(Cl)が減少します。簡単に言えば、体はほぼ中性ですが、胃酸という酸がなくなると、体、特に、血液がアルカリ性になります。血液がアルカリ性になると、血液を中性に戻すために、二酸化炭素をより体に溜めようとしますので、呼吸が浅くなります。
お腹を触ると、厚くなった幽門筋がしこりのように触れます。丁度オリーブのような大きさと硬さです。
肥厚性幽門狭窄症の診断基準・検査
症状より肥厚性幽門狭窄症が疑われた場合は、まずは腹部超音波検査が行われます。腹部超音波検査は痛みもないので、疑われたら検査した方がいいでしょう。腹部超音波検査で、幽門筋が厚くなっていること(幽門筋の肥厚)が判ります。
超音波検査では計測ができますので、幽門筋の厚さが3mm以上、幽門の部分の長さが17mm以上であれば診断可能です。
以前は、X線で内臓を見ながら、造影剤を胃に入れて、造影剤が十二指腸に流れないの確認していましたが、現在は、腹部超音波検査で診断可能です。
血液で、アルブミンと言うタンパク質の量を測定して、栄養状態を見たり、電解質(イオン)のバランスを検査します。特に、血液中の塩素(Cl)の値が下がっていないかどうかを検査します。
肥厚性幽門狭窄症と診断された場合、治療が必要です。次のページで治療について説明します。