絨毯の産地別特徴
絨毯やキリムは「~産」などと、部族よりもその生産地によって特色が分かれていると言われています。トルコ国内にはいくつもの絨毯産地がありますが、ここではその一部を紹介します。
■ヘレケ
永遠の人気を誇る、ヘレケの典型的な花模様ヘラティ
最も人気なのは、なんといってもヘレケ産の絨毯。もはや一つのブランドと化しているヘレケ産の絨毯は、ヨーロッパの影響を受け始めたオスマントルコ帝国末期のスルタンが、引越し先のドルマバフチェ宮殿に合う絨毯を作らせるためにトルコ中から絨毯職人を集めたのが始まり。世界に通用するような高級絨毯を生産させようとヘレケに宮廷直属工場が建てられ、絹100%で結び目が細かい美しいヘレケ絨毯技術が開発されたのです。使われている絹糸はブルサ県産で、1平方メートル内に最低でも100以上の結び目があります。絹糸以外にウールや綿のヘレケもあり、これまた細かい模様が特徴で主にチューリップやバラのつぼみ、カーネーションといった花柄が主流です。
■カイセリ
ヘレケと並ぶ高級絨毯の産地、カイセリではチュナル家が有名
ヘレケ同様、ゴージャス系絨毯としてはカイセリ産のものもあります。こちらも濃厚な色調に花模様やメダリオンが特徴で、シルクもありますが、ウール100%のものも有名。ヘレケほど高くないと言われていますが、カイセリ産絨毯の有名ブランド、チュナルなどはかなり高級絨毯を扱っています。
■コンヤ
こちらは150年もののコンヤ・アンティーク
トルコで最も古い絨毯がコンヤ産であることからも分かる通り、絨毯の歴史が最も古い町がコンヤ。アンティーク絨毯にもコンヤ産が多くあります。特徴は、ビビッドな色よりサーモンピンクやサーモングリーンなど、抑え気味の落ち着いた色調が多用されていること。長年愛用できる草木染めも多く生産されています。模様にはメダリオンが多く、ウール100%や、綿の基本縦糸に羊毛の横糸を結んだものが有名です。この他、コンヤはキリムの生産地としても有名で、セルジューク時代にまつわる幾何学模様が特徴のキリムが多くあります。
■デョシェメアルトゥ
デョシェメアルトゥとは地中海アンタルヤの北部にある集落で、西アナトリア絨毯生産の代表格。かつて遊牧をなりわいとしていた人たちが定住するようになった地方で、絨毯織りの近代化に逆らって頑固に伝統を守って生産していることが特徴です。遊牧民特有のパターン化された絵柄には、動物や虫、星や花、川や女性といったモチーフが多用されています。現在でははっきりとした紅色や濃い青が有名ですが、古いアンティークものにはサーモンピンクや薄いオレンジなど、柔らかい色彩が特徴。手作りが多いので、小さいサイズが主流。
■マラティア
中央・東部トルコのキリムの産地として有名な地域。クルド族が多く住んでいることもあり、彼らが多用するビビッドな赤や青を使った重厚で魅力的なキリムが多く生産されています。自然が豊かな地域なので質のいい羊毛ができることから、キリムの質も高いのが特徴。ユーリックと呼ばれる遊牧民族のキリムには格別の味わいがあります。