マヤ文明の歴史と古代都市ウシュマル
四方を建物が囲む尼僧院。太陽が昇る東の建物にはマヤの最高神である羽を持つ蛇の神ククルカンが、西の建物には冥界の神ブクブ・カメーをはじめとする悪神が描かれている ©牧哲雄
大球戯場。チチェン・イッツァでは勝ったチームのリーダーが神の生け贄として捧げられたといわれている ©牧哲雄
紀元前1,500年以降、各地にマヤの都市国家が誕生するが、世界遺産に選ばれているものだけでもメキシコの「古代都市ウシュマル」「古代都市チチェン・イッツァ」「古代都市パレンケと国立公園」「カンペチェ州、カラクムルの古代マヤ都市」、グアテマラの「ティカル国立公園」「キリグアの遺跡公園と遺跡群」、ホンジュラスの「コパンのマヤ遺跡」、エルサルバドルの「ホヤ・デ・セレンの古代遺跡」等がある。
大球戯場のゴール。この穴に、手を使わずゴムボールを入れると勝ちとなる ©牧哲雄
9世紀、ユカタン半島を襲った気候変動によってティカルをはじめ多くのマヤ都市が滅びるが、ウシュマルはその危機を生き抜くと、同時期に復活して力を取り戻したチチェン・イッツァ(新チチェン)と同盟を組んで半島北部を広く支配する。
12世紀以降、マヤパンの繁栄によってウシュマルとチチェン・イッツァの勢力は次第に衰えて、15世紀にスペイン人が発見した頃には完全に放棄されていた。
古代都市ウシュマルの建造物群
宮殿、あるいは行政府だったのではないかといわれている総督の館。土台となっているプラットフォームの様子がよくわかる ©牧哲雄
グラン・ピラミッドから見た鳩の館 ©牧哲雄
■魔法使いのピラミッド
高さ37m、底面の楕円の長径73m、短径37mを誇るタルー・タブレロ式ピラミッド。頂上に神殿があり、内部は神々のモザイクで埋め尽くされている。神殿はもちろん階段横にもおびただしい数のチャック像があることから、チャックに捧げられた神殿ではないかと考えられている。
■球戯場
この場所で豊作祈願の儀式としてサッカーに似たスポーツが開催されていた。ルールは、ゴムボールを地面に落とさないよう足で蹴り続け、壁の上部に取り付けられた輪に入れるというもの。
■鳥の館
鳥の館に刻まれたコンゴウインコの彫像 ©牧哲雄
■尼僧院
64m×45mの中庭を囲むように4つの建物が配置されており、僧院のように見えることからこの名がついた。実際は宮殿だったのではないかといわれている。壁面に刻まれたプウク式の彫刻は美しく、雨の神チャックをはじめ、羽を持つ蛇の神ククルカン、ジャガー、フクロウ等を確認することができる。
■総督の館
約190m×150mという巨大なプラットフォームに立つ96m×12mの壮大な建物で、平たいデザインとプウク式の彫刻群がなんとも神秘的だ。内部に執務室のような部屋がいくつもあることから総督の館と名づけられたが、実際の用途はわかっていない。
■亀の館
直線が美しい亀の館 ©牧哲雄
■グラン・ピラミッド
高さ32m、底面80m×30mの四角錐のピラミッド。一部がまだ土に埋もれているため階段のようにも見える。頂上に神殿があり、チャックをはじめとした神々の像が祀られている。隣には鳩の彫刻が刻まれた鳩の館がある。