尿路感染症とは……急性腎盂腎炎・膀胱炎・尿道炎など
尿路感染症とは、文字通り尿の通る経路で起こる感染症です。尿は腎臓で産生され、腎臓の腎盂(じんう)という腎臓からの尿を集める場所、尿管を通って、膀胱で一度溜められます。一定の量が溜まると、尿道を通って外に流れるわけです。男性の場合は、尿道に前立腺などの生殖器があります。腎臓は血液をろ過することで、血液から老廃物、余分な水、イオンを除き、尿として体の外に出そうとします。腎臓で作られた尿は、基本的には無菌です。しかし、尿には細菌やウイルスが増えるための細胞や栄養が含まれているために、細菌が増殖しやすいのです。また、血液から細菌やウイルスが尿の中に侵入し、増殖します。
尿路感染症は重症度や症状の違いなどから、「上部尿路感染症」と「下部尿路感染症」に分類されています。
■上部尿路感染症
主に、腎臓から尿管までの感染です。病名としては、「急性腎盂腎炎」、「急性巣状細菌性腎炎」があり、主に腎臓に細菌が感染することで、発熱などの症状が出ます。
■下部尿路感染症
主に、膀胱から尿道、前立腺などの感染です。病名では、「膀胱炎」、「尿道炎」、「前立腺炎」があります。
<目次>
尿路感染症の症状……発熱・腰痛・背部痛・排尿痛・血尿等
■上部尿路感染症の症状- 38℃以上の高熱が出たり、その高熱が続く
- 腰痛、背部痛で左右の腰のあたりを叩くと鈍い痛みがある
- 吐き気や嘔吐、体重が増えない、食欲がないなどの症状が出る。特に小さな子どもに症状がみられる
- 尿が濁っている など
■下部尿路感染症の症状
- 尿を出す時の痛む排尿痛
- 何度ものトイレに行く頻尿や残尿感、夜尿(おねしょ)
- 尿が赤い血尿
- 尿が濁っている
- 尿検査で判明する蛋白尿
- 37℃前後の微熱 など
尿路感染症の原因……最も多い病原体は大腸菌
病原体が尿路に侵入する経路としては、血液から腎臓などに入る血行性と、尿道から膀胱などへ逆流して入る上行性があります。原因の病原体としては、大腸菌が最も多く、それ以外ではほとんど腸内細菌です。これは尿道と肛門が近いことが影響しています。膀胱炎では、アデノウイルスというウイルスによって出血性膀胱炎を起こし、血尿が見られます。血尿や膀胱炎について詳しくは「血尿の原因」「膀胱炎の原因・治し方」をご覧ください。
上行性としては、膀胱から尿が腎臓へ逆流する膀胱尿管逆流、1つの腎臓から尿管が2本ある重複尿管など、腎臓から尿道までの尿路に奇形で尿路感染症を繰り返すことがあります。1歳までの上部尿路感染症の原因として、約半数は膀胱尿管逆流と言われています。この膀胱尿管逆流は自然に治癒すると言われていますので、膀胱尿管逆流のある間は、尿路感染症の可能性を考え、尿路感染症を予防することが大切です。
血行性の場合は、何からの形で血液中に細菌が存在する菌血症から腎臓に細菌が付着、増殖することで起こってきます。
尿路感染症の検査法・診断法
尿の検査が重要になります。見た目、尿が濁っていたり、赤い血尿であったり、膿のような膿尿であったりします。見た目で、はっきりしない場合でも、顕微鏡で観察すると、白血球や細菌を見ることができます。検尿の試験紙で、尿タンパクをチェックします。尿が清潔に採取できたら、2~3日間、尿を体温と同じ環境において、尿の中から細菌が増えてこないかどうかの尿培養を行います。
きれいに尿を採取するには、尿道の出てくる部分を消毒して、途中の尿を採取するか、尿道からカテーテルを入れて、膀胱内の尿を採取します。
少し難しくなりますが、LDH・NAG・β2-MGという物質が尿の中で増えていないかチェックします。
上部尿路感染症の場合は、血液中に細菌が存在しますので、血液検査を行うと、白血球の数が増えていたり、CRPというタンパク質が上昇しています。
尿路奇形の検査として、腹部超音波検査・腹部CT・腹部MRI・カテーテルで膀胱に造影剤を入れて検査する排泄性膀胱造影・血管に造影剤を入れて腎臓から膀胱、尿道までを検査する経静脈性腎臓造影・放射線で印をつけた物質を血液に入れた腎臓を検査する腎シンチグラフィーがあります。
尿路感染症の治療法・対処法
尿路感染症の治療法としては、ウイルスの場合は水分を摂取し、ウイルスをできるだけ早く膀胱から除くことになります。細菌の場合は、抗菌薬を使用します。細菌に最も効果のある抗菌薬を早期に使用し、上部尿路感染症であれば、1週間程度、長めに治療することが多いです。抗菌薬は、内服と点滴がありますが、状態のよくない場合や、小さい子どもの場合、血液に菌がある可能性のある場合などは、点滴での治療が望まれます。抗菌薬に効かない細菌もありますので、原因の細菌を診断することが最も大切なことになります。しっかりと抗菌薬で治すと後遺症は少ないです。上部尿路感染症を繰り返していると、腎臓の組織が障害を受け、将来、腎不全となり腎機能が低下する可能性がありますので、感染の予防を行います。特に、尿路奇形や膀胱尿管逆流がある場合は、尿路感染症の再発予防に、抗菌薬の予防内服を行います。
尿路感染症が疑われた場合
咳や鼻水が無くて、発熱を繰り返す子ども、特に、抗菌薬ですぐに解熱し、1週間もたたないうちに発熱を繰り返す乳幼児は、一度、尿検査をしておきましょう。尿が取れたら医療機関に持参するか、乳幼児の場合は尿がうまく取れないことがありますので、医療機関で採尿パックという尿を集める袋で採尿して、胃鏡機関に持参しましょう。【関連記事】