世界遺産/ヨーロッパの世界遺産

ヴィエリチカ岩塩坑/ポーランド(2ページ目)

巨大な岩塩層を持つヴィエリチカの地下には、アリの巣のように張り巡らされた深さ300m、総延長300kmに及ぶ坑道跡がある。ここで坑夫たちは岩塩を採掘するだけでなく、地下に巨大なホールや礼拝堂を造り、神々やドワーフの姿を彫って地下都市を築き上げた。今回はポーランドの世界遺産で、神秘的な地下博物館として営業を続ける「ヴィエリチカ・ボフニャ王立岩塩坑」を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

ヴィエリチカ岩塩坑内部へ探検しよう!

ヴィエリチカ岩塩坑と足場

ヴィエリチカ岩塩坑内部。岩塩層を掘り広げた空間に木材で足場が組まれている ©牧哲雄

実はヴィエリチカ岩塩坑を訪ねたとき、私はなんの情報も持っていなかった。ポーランドは世界遺産「クラクフ歴史地区」と「アウシュヴィッツ - ビルケナウ」を見たくて訪れたのだけれど、たまたま岩塩坑が近くにあると知って急遽訪問することにした。

「ただ穴があるだけじゃないの?」と期待せずに出かけたのだが、これが大間違い! 内部は驚くべきものだった。

 

ヴィエリチカ岩塩坑の入り口

ヴィエリチカ岩塩坑の入り口。ダニウオヴィチ立坑と呼ばれる縦穴上に建てられている ©牧哲雄

ヴィエリチカ岩塩坑は塩を採掘するための穴がアリの巣のように張り巡らされた坑道跡で、この一部が地下博物館として公開されている。地上と地下を結ぶ縦穴を通って地下に降りるのだが、自由に往復できるわけではない。縦穴の入り口にチケット売り場があり、ここでチケットを買っておよそ2時間のツアーに参加することになる。

簡単な解説を聞いたあと、まずはらせん状の階段をひたすら下る(エレベータを使うツアーもある)。なかなかたいへんだったが、疲れよりも寒さが気になってくる。私が訪ねたときは夏で、外の温度が30度近かったのに対して地下は約14度。一年中気温はほとんど変わらないらしい。地下64m地点に到着すると階段は終了、ここから地下130mほどまでの約3.5kmが一般に公開されている。

 

採掘の様子をいまに伝える岩塩坑

掘削跡の壁面に見える塩の結晶

掘削跡の壁面に見える塩の結晶。場所によって塩の結晶の色や形、大きさが変わる ©牧哲雄

真四角に掘り進められた坑道

真四角に掘り進められた坑道。コンクリートで固められているように見えるが、周囲の壁は岩塩だ ©牧哲雄

坑内はほの暗いが、闇の世界に光を照らすと壁が白く浮かび上がる。壁も床も天井も岩塩なのだ。闇と白に覆われたモノクロームな世界がとても神秘的。「舐めてみて」といわれたので削ってちょっと舐めてみると、本当にしょっぱい! やっぱり塩なのだ!!

ところが、しばらく歩いていると灰色の壁や黒い壁もあって、その色は一様ではない。形も様々で、立方体が集まったような「クリスタルの間」があるかと思うと、天井から塩のつららが垂れ下がる鍾乳洞のような空間があったり、泡のように塩が噴き出している「塩のカリフラワー」なんて場所もある。鉱物や塩の含有量、坑道の湿度で色や形が変わるらしい。これほど多彩だとは思いもしなかった。

 

天井から垂れ下がる塩のつらら

天井から垂れ下がる塩のつらら ©牧哲雄

坑道の所々には坑夫(鉱山労働者)たちをかたどった像がある。ハンマーやハシゴ、トロッコ、掘削機などを使った岩塩採掘の様子や、樽に塩を入れて馬に岩塩を運ばせている様子などがこうした像によって紹介されている。たとえば松明(たいまつ)を持つ坑夫の様子が彫刻されているが、当時は地下から発生するメタンによって爆発事故が頻発していたらしい。そのため火を灯したりカナリヤを持って坑内に入ることで、身を守っていたという。

 

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