天才時計師が創業し、瞬く間に脚光を浴びたフランク・ミュラー
機械式時計が本格的に復活する1990年代のはじめに自身のブランドを創設して、瞬く間に脚光を浴びるようになったスーパースターがフランク・ミュラーである。独立時計師がブランドを展開する例は今や珍しくなくなったが、フランク・ミュラーはその先駆けだった。独立時計師時代の1986年に発表されたフランク・ミュラー初のトゥールビヨン。いち早く腕時計トゥールビヨンを製作したのも彼の功績
創業者のフランク・ミュラーは、1958年生まれのスイス人。幼い頃から機械に特別な興味を抱いていた彼は、ジュネーブ時計学校に進み、主席で卒業。卒業後は、独立時計師として、アンティーク時計の修復や愛好家のオーダーによる1点製作などを手掛けた。1980年代後半からは、トゥールビヨン、ミニッツリピーター、パーペチュアルカレンダー、スプリットセコンドなどを組み込んだ腕時計を製作して世界初の記録を次々と樹立し、その天才ぶりが「ブレゲの再来」と絶賛された。
自身の名を冠した「フランク・ミュラー」ブランドを1992年に創設してからも、複雑時計の開発における世界初記録や特許取得は途切れることなく続き、「マスター・オブ・コンプリケ-ション(複雑時計の巨匠)」という名声を確立した。伝統的な複雑機構を巧みに組み合わせた彼の独創的なモデルがスイス時計産業に与えた影響も計り知れない。現在も、多軸で回転する驚異的なトゥールビヨンや、多数の複雑機構を一つの腕時計に収めた超絶コンプリケ-ション・モデル「エテルニタス」などを創作し、その開発力と卓越した技術に注目が集まっている。
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