痛み・疼痛/痛みの原因・痛み治療

しびれを伴う病気一覧・原因【医師解説】

【麻酔科医が解説】腕、手足、顔など、様々な部位に起こる「しびれ」。原因は中枢性、脊髄性、末梢神経性の大きく3つに分けられ、坐骨神経痛やヘルニアなどから、脳梗塞のような緊急性が高いものまで、考えられる病気は様々です。しびれを伴う病気一覧と原因、早期に病院を受診すべきしびれの見分け方、何科を受診すべきかについて解説します。

富永 喜代

執筆者:富永 喜代

医師 / 痛みの治療・麻酔ガイド

病院受診の目安……しびれの部位・状態から考える重症度

病院に行くほどではなくても、気になるしびれの症状。しびれの原因は脳から末梢神経まで幅広く、全身の病気が隠れていることもあります。しびれを引き起こす病気はとても多いのです。また、早期発見できるかどうかが、その病気の重症度に影響する病気が多いことも、しびれを伴う病気の特徴です。

「手も動くし、ちゃんと歩けるし、いつか自然に治ると思っていた」「最初は軽かったしびれがひどくなり、痛みも出て、動かしにくくなってしまった」という患者さんも少なくありません。

しびれを伴う主な病気と、しびれの原因を知り、適切な治療を受けられるようにしておきましょう。まずはしびれる部位別に、考えられる病気と簡単な診断方法をご紹介します。
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頭や顔のしびれを感じたら、早めに病院を受診しましょう

   

手のしびれの原因となる病気一覧……頚椎症、糖尿病など

胸郭出口症候群は女性に多いしびれをおこす病気です

長時間電話をしていて、手がしびれるなら、胸郭出口症候群が隠れているかも

朝起きたら、突然、手がしびれていた、ということはありませんか? 毎日使う手のしびれは、たとえ指一本でも気になるもの。

腕や手は動くけれど何となくしびれを感じる場合、一番多いのは頚の骨や骨格の病気。安静にしていると軽くなるかどうかも重要なポイントです。

頚を後ろにそらせたり前屈させたときにしびれや痛みが強くなったり、腕や手首をよく使った後にしびれが強まったりするが、安静にしているときはあまり気にならない場合、以下の病気が考えられます。
  • 頚椎症
  • 頚椎椎間板ヘルニア
  • 後縦靭帯骨化症
  • 胸郭出口症候群
  • 手根管症候群
動かすことで悪化する手のしびれは、上半身の骨格の病気が原因となることが多いようです。
 
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手のしびれを起こす病気の鑑別には、安静時と動かしたときのしびれの違いがポイントとなります


体の動きに関係なくジーっとしたしびれを感じる場合は、神経や代謝の病気を疑う必要があります。
脊髄腫瘍やギランバレー症候群などの神経の病気は非常にまれですが、しびれが徐々にひどくなり、しかもその範囲が広がり、だんだん力が入りにくくなるなど、進行性の自覚症状が出てきている場合は、神経内科の受診を考えましょう。

また、糖尿病の初期症状としても、手のしびれは有名。腕や手の動きには関係なく、指先から徐々にしびれの範囲が広がっていくのが特徴です。なんだか指先の感覚がおかしいと思って病院に行って血液検査を受けたら、血糖値から糖尿病が発見された、というケースは多いのです。

糖尿病も早期発見が大切。その後の血糖値をコントロールし、しびれなどの神経症状を食い止め、腎機能障害や眼の病気などの合併症を防ぐことが大切です。
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糖尿病や頚椎症が、手足のしびれを引き起こす病気の代表です

 

足のしびれの原因となる病気一覧……ヘルニア、腰椎すべり症など

足のしびれの原因

階段を登ったり、長時間歩いた後で足に痺れが出るなら、腰や血管の病気が隠れています

足のしびれも、骨や骨格の病気からくることが多いです。よくある病気は次の3つです。
  • 腰椎椎間板ヘルニア
  • 腰部脊柱管狭窄症
  • 腰椎すべり症
これらは脊髄神経を取り囲む空間が徐々に狭くなっていく病気で、少しずつ神経が圧迫されます。初発症状が足のしびれであることが多く、だんだん痛みが出て、ぎっくり腰を起こすようになったりします。

上記ほど頻度は高くありませんが、早期発見が重要な病気もあります。
  • 血管を起因とする閉塞性動脈硬化症(ASO)
  • バージャー病
など。これらはタバコを吸う男性に多く、動脈が徐々にやせ細って詰まっていく病気。動脈が詰まるので血管バイパス術や、最悪の場合、下肢切断などに進行することもある恐ろしい病気です。足のしびれという初期段階で禁煙と治療を開始すれば、最悪の状態を回避することができます。早めの診断と治療の開始が鍵となる代表的な病気なので、これらの病気が疑われる場合は、早めに一度病院に行くようにしましょう。
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バージャー病は、足のしびれを起こす血管の病気です。早期発見で、病気の進行を食い止めることが重要です


これらの他にも、もちろん糖尿病や神経の病気でも足のしびれが起こります。左右対称性で安静時もしびれが取れず、徐々にしびれの強さや範囲が広がっていく場合は、神経内科や代謝病専門医の受診をお勧めします。
 

しびれの原因……中枢性、脊髄性、末梢神経性の大きく3つ

しびれの原因は多岐にわたりますが、大きく以下の3つに分けられます。
 
  • 中枢性のしびれ……脳や中枢神経が原因で起こる
  • 脊髄性のしびれ……脊髄神経や脊髄を取り囲む骨や靭帯などが原因で起こる
  • 末梢神経性のしびれ……末梢神経に影響する血管や代謝の病気、神経そのものが原因で起こる

以下で、それぞれのしびれの原因について解説します。

■ 中枢性のしびれ
脳・中枢神経が障害を受け、しびれを感じます。

•外傷、感染、脳腫瘍など
⇒中枢神経が損傷し、しびれが起こる
•脳梗塞、脳出血など
⇒脳の血管が詰まったり破裂することで、しびれが起こる
•多発性硬化症など
⇒中枢神経自体が変性して、しびれが起こる
•副甲状腺機能低下症、過換気症候群など
⇒電解質異常で血中カルシウム異常などが起き、しびれが起こる

■ 脊髄性のしびれ

脊髄神経や脊髄を取り囲む骨格組織が原因で起こるしびれです。一般的な手や足のしびれの多くは、骨や椎間板の変性が原因で起こる脊髄性です。

•脊髄空洞症、脊髄腫瘍など
⇒脊髄神経が変性して、しびれが起こる
•頚椎・腰椎椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、脊柱管狭窄症など
⇒脊髄を取り囲む骨格が変形して、脊髄神経を圧迫することで、しびれが起こる
•脊髄血管腫、脊髄梗塞など
⇒脊髄の栄養血管が出血したり詰まることで、しびれが起こる

■ 末梢性のしびれ

末梢神経が障害を受けることが原因でしびれを感じます。

・糖尿病、ビタミンB1欠乏など
⇒代謝異常が原因で神経が変性を起こし、しびれる
・閉塞性動脈硬化症、バージャー病など
⇒末梢神経の栄養血管が詰まり、神経の酸素・栄養不足からしびれが起こる
・ギランバレー症候群、アミロイドーシスなど
⇒末梢神経が原因不明に変性を起こし、しびれが起こる
・坐骨神経痛、胸郭出口症候群、尺骨神経痛など
⇒骨や靭帯が神経を圧迫して、しびれが起こる
 

緊急性の高いしびれの見分け方

しびれは休んでいるときに強く感じます

しびれは休んでいるときに、返って強く感じます

いずれの場合も、しびれは病気の初期症状であることが多く、しびれの原因を調べることは病気の早期発見に有効です。早い段階から治療を受けることで、神経への恒久的な深いダメージを防げます。

通常、2~3日以内に消えてしまうようなしびれは、心配御無用。しかし、次のような場合は早めの受診を心がけましょう。
  • 同様のしびれが何度も繰り返し起こる
  • しびれが一週間以上続いて取れない
  • しびれがどんどん強くなったり、その範囲が広がる
  • しびれだけではなく、力が入りにくい、歩きにくい、などの症状が出てきた
このような症状がある場合には、「たかが、しびれ」と考えず、なるべく早く病院を受診しましょう。
 

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