感染症/感染症のしくみ・感染経路・予防法・治療法

風邪・花粉症で起きる味覚障害の原因・対策(2ページ目)

味は五感を総合した感覚で、記憶と関係しています。辛味は味覚障害でも残るので他の味とは別です。風邪の後や、花粉症、薬剤により、味がわからなくなることがあります。偏った食生活による亜鉛不足は、治癒できない味覚障害が起きることがあるので注意が必要です。

西園寺 克

執筆者:西園寺 克

医師 / 感染症・健康情報ガイド


人間が感じる味覚は何種類?

人間の五感(嗅覚・視覚・聴覚・味覚・触覚)は生き残るために必要な感覚と考えられています。五感に基づく記憶が味を作っています。

味覚に限定すると、舌にある「味蕾」が重要。西洋医学では味は四要素、甘味・塩味・酸味・苦味とされてきました。日本の食文化は四要素では説明できず、五番目の要素として旨味(UMAMI)が認められています。

味蕾が認識していると証明できた物が、味覚と定義していますが、辛味は味蕾以外が伝えているので味覚とされていません。神経も味覚とは異なっている部分もあります。味覚障害の人でも辛味は判るとされています。

また、脂肪に対しても経験的には脂っぽいとか、あっさりしていると判断できるでしょう。これも六番目の味覚の候補とされていますが、脂肪に対してはBMIにより感受性が異なるという説が提唱されています。脂肪を好む人がBMIが高い傾向にあるのは確かです。

同じく六番目の候補にはカルシウムも挙がっています。海から生物が陸に上がって陸上では乏しい元素の一つがカルシウム。カルシウムに対する味覚があった方が生物多様性の中で生き残るのに有利だった可能性はあります。

甘味は騙されやすい味覚

甘味は糖または糖アルコール(例;キシリトール)に対しての味覚。自然界に多いのはブドウ糖、果糖で、甘さの基準として使われているのは蔗糖です。

他の味覚と異なり、合成甘味料に対して強く甘さを感じてしまいます。現在使われている主な合成甘味料はアミノ酸系のアスパルテームと蔗糖に近いスクラロースがあります。アスパルテームの誘導体のネオテームは蔗糖の10000倍の甘さがあります。

甘味に対しては、天然のギムネマ酸が甘さを抑えることが知られています。逆に日本人がミラクルフルーツから分離した糖タンパクのミラクリンは本来は酸っぱいものを甘く感じさせる作用があります。甘味は意外と騙されやすい味覚なのです。

塩味はカリウムで二倍

塩味はナトリウムの味。減塩醤油の一部では、塩化ナトリウムに塩化カリウムを加えています。実はナトリウムとカリウムが同時にあると、カリウムの分もナトリウムとして感じてしまうからです。減塩となっていますが高カリウム食品ということになります。

酸味・苦味の役割

食物中の酸味は、発酵や腐敗による有機酸による可能性が高いです。そのため、酢酸、乳酸や酪酸(チーズの匂い成分)に対して人は敏感です。匂いは厳密には舌の味覚とは別ですが、五感の総合的なものが味と考えると、人が柑橘類の匂いを好むのは遥か昔の樹上生活の頃の名残なのかもしれません。

また、苦味は毒に対する味覚と考えられていますが、嗜好品には種々の苦味成分が含まれています。コーヒーには複数の苦味成分が含まれています。ビールのホップ、ゴーヤにはそれぞれ独特の苦味成分が含まれています。チョコレートに多く含まれる苦味成分は、人に対しては毒性が低いのですが犬では毒性が高いとされています。

旨味(UMAMI)の正体はアミノ酸と核酸系

和食の一番出汁に含まれているのがグルタミン酸とイノシン酸。昆布から出たグルタミン酸はアミノ酸です。グルタミン酸は神経の伝達物質の一つです。鰹節から出たイノシン酸は核酸系の旨味成分です。調理した場合、大雑把に言って植物系の食材からはグルタミン酸が動物系の食材からはイノシン酸が出ます。動物系ですがチーズはグルタミン酸を多く含みます。海産物ではイカがグルタミン酸を多く含みます。鍋料理が美味しいのは、グルタミン酸、イノシン酸が多く含まれているからですね。

他に核酸系の旨味成分としては椎茸に多いグアニル酸があります。日本酒に多く含まれている有機酸のコハク酸は日本酒の美味しさに関係しています。オイスターソースもコハク酸を多く含んでいます。

普段意識しない味覚について正しく知って、体調管理に役立てましょう。
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