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犬の肌は人よりデリケート! 代表的な被毛と毛色

犬の被毛は長さも毛色もバリエーションに富んでいます。毛色の呼び方もたくさんあり、同じような毛色を犬種によっては違う呼び方をすることも。今回は犬の被毛について、見てみましょう。

大塚 良重

執筆者:大塚 良重

犬ガイド

同じ動物種でありながら、毛色も被毛の長さもバラエティーに富んでいるのが犬。遺伝子がもつ不思議な力もさることながら、人間の手による繁殖が繰り返し行われてきた結果とも言えます。今回は、そんな犬達の被毛、そして肌にスポットをあててみましょう。

意外に繊細な犬の皮膚

スムース・コリー

コリーというと一般的にラフ・コリーを思い浮かべるが、短毛のスムース・コリーという犬も存在する。

犬はいろいろな意味で人間より「強い」というイメージがあります。皮膚にしてもそう、人間よりずっと丈夫なのではないかと思ってしまいますよね。しかし、これが意外にも繊細なつくりをしているのです。皮膚の厚さは体の部位によって少しずつ違いますが、人間の場合は約1.5~4mm程度(表皮+真皮)とされるのに対し、犬はその3分の1~5分の1くらいの厚さしかないのです。皮膚トラブルを起こす犬がわりと多くいるのも、ひとつにはこの皮膚の薄さが関係していると言えるかもしれません。

皮膚は大別すると、表皮・真皮・皮下組織から成り立っています。体の表面を守っているのが表皮。それはさらに表面から順に角質層・顆粒層・有棘層・基底層という4つの層に分けることができます。表皮では常に細胞分裂が盛んに行われており、表皮の一番深くに存在する基底層から新しい皮膚の赤ちゃんとも言うべきものが生まれて、段々と表面にある角質層まで成長し、古い角質は剥がれ落ちて、皮膚の再生を行っているのです。わかりやすいところで言うとフケ。フケは古い角質が剥がれ落ちたものなのです。

この一連の働きを「ターンオーバー」と呼び、健康な皮膚であればおおむね20~25日のサイクルで皮膚の再生が行われますが、乾燥した皮膚であるとだいたい5~10日という短いサイクルになってしまいます。よって、本来適度に保たれているはずの水分も少なくなり、外界からの刺激に対しても弱くなるので、余計皮膚トラブルを起こしやすくなってしまうのです。

ちなみに、人間の肌はpHが4.5~6.0程度の弱酸性とされますが、犬はややアルカリ性に偏った中性で、平均的にpH7.5くらい。夏場はもう少しアルカリ性に傾くようです。いずれにしても敏感な皮膚をもった犬達、シャンプー選びにも気を配りたいものですね。

ダブルコートとシングルコート

マルチーズ

マルチーズはシングルコートなので、その分、被毛も抜けにくい。

犬の被毛の生え方には2種類あります。それは、ダブルコートとシングルコート。その前に、被毛がどのように生えているのか、簡単に説明をしておきましょう。

毛の根っこ部分と言える毛球から伸びた被毛には、一次毛と二次毛というものがあります。これらはひとつの同じ毛穴から生えているのですが、一次毛は太くしっかりとした毛で、オーバーコート(上毛)と呼ばれるもの。二次毛は細くて柔らかく、アンダーコート(下毛)と呼ばれ、換毛期になると主にこの毛が抜けます。人間の場合はたいていひとつの毛穴に対して1本の毛しか生えていませんが、犬ではひとつの毛穴に複数本の毛が生えているのです。

すべての犬がオーバーコートとアンダーコートの両方をもっているかというとそうでもなく、アンダーコートがなくてオーバーコートしかもたない犬もおり、前者の被毛をダブルコート、後者をシングルコートと呼びます。オーバーコートの犬で代表的なものは柴犬やシェットランド・シープドッグ、シベリアン・ハスキーなど。マルチーズやプードル、ヨークシャー・テリアなどはシングルコートの犬種。被毛が抜けにくい分、アレルギーのある人などには向いていると言われます。犬は可愛いけれど、換毛期のお手入れがちょっと…という人は、シングルコートの犬種を考えてみてはいかがでしょうか。

犬って汗はかくの?

犬は汗をかくのか? 答えは、「ちょっとだけかく」です。

汗腺には大汗腺(アポクリン腺)と小汗腺(エクリン腺)というものがありますが、私達が一般に「汗をかく」というところのさらさらとした水分の多い汗が出るのはエクリン腺のほうで、人間の場合は全身に分布しています。アポクリ腺は脇の下や乳首の周り、おへその周り、陰部の周囲などに存在し、ややべたっとした汗が出て、独特の匂いがします。

犬の場合は、このエクリン腺とアポクリン腺の分布が逆で、全身に分布しているのがアポクリン腺。エクリン腺は足の裏(パッド)や鼻の頭くらいにしかなく、人間のように体温調節には役立ちません。犬達は暑くなるとハァハァと息をすることで(パンティング)、体の中にたまった熱を放出しているのです。

汗と言えば、何かにドキッとした時やストレスを感じた時に冷や汗というものが出ることがありますが、犬でも精神的な影響から足の裏に汗をかくことがあるようです。その汗の量を量ることで犬のストレス度をチェックするという測定器を開発した会社があり、以前ご紹介したことがありますので、興味がおありの方は以下の記事をご覧ください。

犬のストレスをチェックできる測定器が登場

同じような毛色でも犬種によって違う呼び方のことがある

毛色のバリエーション

犬の毛色の組み合わせは様々。同じような色でも犬種によって違う呼び方のこともある。

犬の被毛の長さは皮膚にピタッと密着した短毛から、地面に引きずるほどの長毛まで様々。中には裸犬と言われる被毛がまったくない犬種や、どうやって被毛を梳かすのだろう?と首をひねってしまうような、被毛が縄のれん状になる犬種なんていうのもいます。

被毛の長さが様々であるなら、毛色も様々。その毛色にはいろいろな呼び方がついています。ここには書ききれないほどたくありますので、基本的かつ代表的な毛色の呼び方をいくつかご紹介しましょう。

1:赤毛(Red)
日本犬の場合は赤毛と言う。洋犬ではレッド。一口に赤毛・レッドと言ってもその範囲は広く、薄いものから濃いものまである。
2:ブラック・アンド・タン(Black and Tan)
地色は黒で、目の上や口の両脇、前胸、足先、尾などにタン(黄褐色)がある毛色。タンにも濃いもの(リッチ・タン)と薄いもの(ライト・タン)がある。
3:フォーン(Fawn)
黄褐色からマホガニーまで、やや金色がかって見える毛色。赤みが強いものはレッド・フーン、金色がより強いものはゴールデン・フォーン、青味が感じられるものはブルー・フォーンなど、色の表現によりさらに細かい呼び方がある。
4:トライカラー
黒・タン・白からなる毛色。バセット・ハウンドやビーグルなどのハウンド種に見られるこの色の組み合わせは、特にハウンド・カラーと呼ばれる。
5:ベルトン(Belton)
白の地色に細かな斑模様が全身に散りばめられた毛色。斑模様の色により、ブルー・ベルトン、オレンジ・ベルトン、レモン・ベルトン、レバー・ベルトンなどがある。
6:パーティ・カラー(Party Color)/パイド(Pied)/パイボールド(PieBald)
白の地色に、一色もしくは二色のくっきりした斑模様があるもの。アメリカン・コッカー・スパニエルやイングリッシュ・コッカー・スパニエルなどではパーティ・カラーと呼び、フレンチ・ブルドッグなどではパイド、ダックスフンドなどではパイボールドと呼んだりする。
7:セーブル(Sable)
俗に黒貂色と言われ、フォーンや茶色、灰色、シルバーなどの地色に黒い毛が混じりあったもの。色の出具合によってオレンジ・セーブルやダーク・セーブル、マホガニー・セーブル、ライト・セーブル、ゴールデン・セーブルなどの呼び方がある。
8:ブルー・マール(Blue Merle)
黒・グレー・白といった同系色の色が入り混じった大理石模様のような毛色。基本色がセーブルやレッドの場合は、セーブル・マール、レッド・マールと呼ぶ。似たような毛色がダックスフンドでもあるが、この場合はダップルと呼ばれる。
9:虎毛/タイガー・ブリンドル(Tiger Brindle)
甲斐犬や秋田犬に代表される毛色。赤毛やフォーンの地色に、虎のように黒い縞模様があるもの。日本犬の場合、地色によって黒虎・中虎・赤虎という呼び方がある。洋犬では黒い縞模様のないものは単にブリンドルと呼ばれる。

同じような毛色でも犬種によって違う呼び方があるというのはちょっとややこしく感じてしまいますね。

イヌゲノムの研究が人間の健康にも役立つ?

チャイニーズ・クレステッド・ドッグ

頭部と尾、足先にしか被毛のない、なんとも変わった容姿のチャイニーズ・クレステッド・ドッグ

これだけ多種多様な被毛のタイプや毛色があるということは、遺伝子が変異し、複雑に組み合わさった結果だと言えますが、人間の手による繁殖が盛んに行われるようになってから、それが加速度的に進んだことは容易に想像ができます。

昨年の夏のこと、ある研究結果が科学誌サイエンスのonline版に発表されました。アメリカの国立ヒトゲノム研究所が中心になって行われていた研究でわかったのは、80犬種1000頭のDNAを調べたところ、たった3つの遺伝子の変異がいろいろな被毛のバリエーションをつくり出す基本となっている、ということなのです。

それによると、たとえばビーグルのような短毛でストレートの被毛をもつ犬種では、その3つの遺伝子のうち3つともが変異をせずに元のままで、オオカミに近い表現型を示しているそうです。逆に3つともが変異している場合には、プードルやポーチュギース・ウォーター・ドッグのようなやや長毛でカーリーコートをもつ犬種になるとか。ここでは仮に3の遺伝子を(a)(b)(c)とした場合、(a)の変異は剛毛で口ひげをたくわえたシュナウザーやスコティッシュ・テリア、アイリッシュ・テリアなどのような犬種と関係し、(b)の変異は長毛でシルキーもしくはふわふわとした被毛をもつコッカー・スパニエルやポメラニアン、ロングコートのチワワなどの犬種と関係、(c)の変異はアイリッシュ・ウォーター・スパニエルのようなカーリーコートをもつ犬種と関係しているということです。

アイリッシュ・ウォーター・スパニエルはプードルとの血縁関係も考えられている犬種ですが、ポーチュギース・ウォーター・ドッグも含め、これら3犬種はビジュアル的にはやや近いものを感じつつ、この遺伝子研究においては別グループとして位置づけられているのは面白いところです。研究結果を報じた記事では、イヌゲノムの研究が人間の癌や心臓病などに関連する遺伝子の解明にもつながるのではないかと結んでいますが、犬は人間にとって大変身近でありながら、不思議がいっぱいつまった動物だと言えるでしょう。

*ゲノム=人が人になるとか、犬が犬になるなど、ある生物体をつくるための最小限必要な、もっとも基本となる遺伝子(遺伝情報)のこと。

犬の体には触られると敏感な場所がある

犬を撫でるというのは気持ちがいいもの。そして、犬も撫でられていると気持ちよさそうな顔をすることがよくあります。しかし、犬の体には感覚が敏感な場所というのがあり、知らない人にいきなりそのような場所を触られると嫌がることがありますのでご注意ください。

皮膚全体には触小体という触覚の受容器が分布しています。何かに触ったり、触られたりすると触小体が受け取った刺激が脳に伝えられて「触られた、触った」と感じるわけです。犬では口先や口の周り、耳、尾、足先などに触小体が多く分布しているので、これらの場所は特に敏感。犬を迎えた際には、体のどこを触られても大丈夫なように慣らしておくことは大切ですが、特に敏感な場所については少しずつ慣らしていくようにしましょう。


参考資料:
「皮膚の病態を理解する シリーズ1~6」日本ヒルズ・コルゲート株式会社
「National Human Genome Research Institute」
「犬の用語辞典」大野淳一著/誠文堂新光社
「心理学と行動から見た 犬学入門」大野淳一/誠文堂新光社
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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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