犬は目が悪い?犬の動体視力や目に関する疑問を解説

犬は目が悪いと言う情報は本当なのでしょうか。犬の目には人間と違った機能があり、犬の目から見える世界は人間とは少し違います。犬の動体視力や視野はどれくらいあるのか、暗闇で目が光るのは何故なのかなど、犬の目に関する疑問を解説していきます。

大塚 良重

執筆者:大塚 良重

犬ガイド

犬は目が悪いって本当?

犬の目は不思議がいっぱい


丸い目、三角の目、茶色い目、青い目。愛犬にうるうるした目で見つめられると、犬好きとしてはたまらなくなりますよね。そんな彼らの目には、どんな不思議が隠されているのでしょうか。
   

犬は目が悪いって本当? 犬は近視だけれど、動体視力は優れている

一般的に犬は近視だとされます。その理由は、水晶体の厚さが人間の約4mmなのに対して犬は約8mmと2倍厚く、近くのものにはピントを合わせやすいものの、遠くにあるものにはピントを合わせづらいからです。また、水晶体を引っ張ってその厚さを調整する毛様体筋の働きが人間に比べると少々劣っているということも理由の一つになるでしょう。近いものにはピントを合わせやすいとは言っても、70cm以内にあるものについては合わせづらく、ぼや~っと見えている状態のようです。視力で言うとどのくらいか?というのはなかなか難しいものの、人間の平均的な視力を1.0とした場合、犬の視力はだいたい0.3くらいだろうと言われています。

ですから、大好きな家族や友達犬であっても100m以上離れたところにいると、もうそれが誰なのかよくわからないようですが、その代わり、動くものに対しては敏感に反応することができます。かつてドイツで行われた警察犬を使った実験によると、最高で914m先にあるものがわかったとか。その他、広大な土地で羊を追う牧羊犬では、1500m離れた動くものに反応できるという話もあります。グレーハウンドやサルーキのような、いわゆるサイトハウンドと呼ばれる犬達は大平原で獲物を追っていたことから、動体視力のよさについて定評があるのはご存知のとおり。単にピントを合わせることができるかどうかではなく、反応できるかどうかということをポイントにすると、犬の視力というのは意外にいいのだと言えるでしょう。
 

犬の目には人間より広い範囲が見えている

では、犬にはどのくらいの範囲が見えているのでしょうか? 顔に対して目が平面的についている人間の場合は平均的に約180度の範囲が見えており、その中で両目を使って物を立体的にとらえることのできる立体視野は約120度程度とされます。一方、犬の全体的な視野は200~290度くらいで、立体視野は約100度程度。ボルゾイのような頭部が細く、顔に対して目がやや横についているような犬種ではより広く、後方まで見えるようになっていますが、高い鼻が邪魔をして立体視野にあたる部分は逆に狭くなっています。犬に後ろから近づいた時に素早く反応する時があるのは、音や匂いで気づく他、もしかしたら彼らには見えているということなのかもしれませんね。後ろからこっそりイタズラをなんて、ほどほどに。
 

犬の目から見える世界はちょっとだけカラー

犬の世界はモノクロだろうとこれまで考えられてきました。色を色として認識するには網膜の中に存在する錐状体という視細胞が不可欠なのですが、人間の場合はそれが豊富にあるのに対して、犬では10%程度しかないのです。ですから、色を認識するのはちょっと苦手。その代わりに、光の強弱を感知する桿状体という視細胞は人間の7~8倍とたくさんあるので、夜目がきく、つまり暗闇でもよく見えるというわけです。犬は元来夜行性の動物であり、暗い中で活動することが多かったことから、色覚についてはそれほど発達する必要もなかったのでしょう。

しかし、錐状体がまったくないというわけではありませんから、ある程度の色は認識できるようです。ちなみに、人間の錐状体の種類は3種類、犬をはじめとした哺乳類のほとんどは2種類、鳥や爬虫類・魚類などの多くは4種類だそうです。人間は「赤・緑・青」の色調が知覚できるので、見ている世界はフルカラーになりますが、鳥や魚達にはもっと高度な色の世界があるということ。いっぽう、犬は赤に反応するのは難しいものの、「青・黄色」はわかるらしく、モノクロを基調として、青や黄色、およびその混合色の世界に生きているのでしょう。いずれにしても、犬の世界は人間に比べたら色の乏しい世界。この色が愛犬に似合うかな?とあれこれグッズを選んでみても、彼らにはたいして意味のないことなのかも?
 

暗闇で犬の目が光るのは何故?

タペタムに光が反射することで目が光って見える

タペタムに光が反射することで目が光って見える


犬の目は人間の目とは少し違うということはおわかり頂けたかと思いますが、暗いところで目が光るのもその一つ。犬の目には網膜と脈絡膜の間にタペタムと呼ばれる層があり、反射板のような役目をしています。わずかな光であってもタペタムが反射することによって光を再利用し、暗いところでもよく見えるようになっているのです。どのくらいの光で見えるか?というと、人間が必要とする3分の1程度の光しかなくてもものが見えるということ。だから夜の散歩でもそれほど困らないということですね。
犬の目のつくり

犬の目のつくり

 

犬の目の形あれこれ

さて、次は目の形について。犬の目の形にもいくつか種類があります。あなたの愛犬の目はどんな形をしていますか?

アーモンド・アイ(Almond eye)
シェットランド・シープドッグ

シェットランド・シープドッグ

アーモンドのように目の端が尖っている目の形。
例)シェットランド・シープドッグ、スコティッシュ・テリア。
 
オーヴァル・アイ(Oval eye)
トイ・プードル

トイ・プードル

卵形または楕円形の目の形。
例)プードル、ノーフォーク・テリア。






サーキュラー・アイ(Circular eye)
フォックス・テリア

フォックス・テリア

丸い、円形の目。
例)フォックス・テリア。







トライアンギュラー・アイ(Triangular eye)/三角目
柴犬

柴犬

目じりがやや吊り上がり、三角形のように見える目の形。
例)柴犬など日本犬、アフガン・ハウンド。
 
バルギング・アイ(Bulging eye)/出目
狆

丸くて大きく、突出した目。
例)パグ、狆。
 

人間が犬をじ~っと見つめるのは挑発的ととられることも

最後に、視線についてのお話を。知らない犬と出会った時、吠えかかられたことはありませんか? その時の様子を思い出してみてください。相手の犬の目をじ~っと見つめてしまっていませんでしたか?

犬の場合、相手の目をじっと見ることは挑発的ととられることがあります。2頭の犬が出会ったとして、優位に立っている犬は力強い視線で相手をじっと見つめますが、「こりゃかなわない」と弱気になっている犬は相手から視線をそらします。じっと互いを見つめ合うことはややもするとケンカに発展することもあるので注意しましょう。ただし、しっぽや耳の位置、動かし方、体の緊張度、その時の環境など、総体的に判断するのが大切であるということは言うまでもありません。

また、カーミングシグナル(相手や自分を落ち着かせるという意味合いがあります)と呼ばれる犬のサインの中には、「視線や顔をそむける」というものがあります。これは相手が何らかの理由で興奮したり、ストレス下にある時、「僕は君には興味がないよ、だから安心していいんだよ」というふうに相手をクールダウンさせる効果があるのと同時に、自分自身もストレスを感じていた場合には自らをクールダウンさせる効果もあります。状況によっては相手に対して服従の気持ちを表しているととらえることもでき、覚えておくと役に立つサインの一つです。

なお、アイコンタクトをとれるようにしつけられた犬の場合は、人の目をじっと見ることは普通のこととなっていますので、もちろんその視線の中には挑発的なものを感じ取ることはできません。

犬の目もよく観察していると人間同様に喜んでいたり、がっかりしたり、怖がっていたり、いろいろなものを感じ取ることができます。目は心の鏡。愛犬の目を覗き込んだ時、そこにはしっかりとあなたの姿が映っていますか?

参考資料:
「心理と行動から見た 犬学入門」大野淳一著/誠文堂新光社
「犬の用語事典」大野淳一著/誠文堂新光社
「犬のお医者さん」小暮規夫監修/主婦と生活社

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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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