倉本仁　かたちを極めたデザイン(2ページ目)

「曖昧な輪郭」を表現。BLUR COLLECTION

小さなテーブルとランプの境界がぼやけたもの　撮影：太田拓実
「BLUR COLLECTION：曖昧な輪郭」は、 2008年のDESIGNTIDEで発表された倉本さんのオリジナルプロダクト。 会場で拝見したとき、最初は倉本さんのデザインだと知らずに、吸い寄せられるように無意識に近づいてしまったのが、 写真のテーブルです。無垢の小ぶりなテーブルにほわりと灯された明かり。 しっかりと実用的な機能を備えながら、 どこかファンタジックな遊び心があって、ものが作り出す情景、もたらす世界に心惹かれます。 一見なんでもないかたちですが、見れば見るほど細部にこだわりが感じられ、 ここに行き着くまでには相当な試行錯誤が行われたのではないでしょうか。 使ってみたいな、と思わせる気持ちと同時に、小動物を可愛がるような、 愛おしさも感じさせるテーブルです。



花器と水差しの境界がぼやけたもの　撮影：太田拓実

次は花びんのような、水差しのような、どちらにも使っていい、 自由な発想のプロダクトです。お花に水をあげやすいように、口を細くして使い勝手にも配慮があり、 ジョウロほど露骨なかたちではないために、ぽんと置いてもインテリアとして様になる、 オブジェのような存在感があります。 ぴょこんと伸びた注ぎ口部分に花を挿しても面白いし、 何か片手を挙げて「やあ」と声をかけているような、不思議な愛嬌も感じます。


まないたとお皿の境界がぼやけたもの　撮影：太田拓実

お皿のようなまないた。二つの機能が融合され、 キッチンとテーブルを行ったり来たり。 どちらにもすっきりと馴染む、機能性とデザイン性。 スタイリッシュで洗練されたかたち。フォルムにとことんこだわる倉本さんならでは のプロダクトです。


オーディオとトレイの境界がぼやけたもの　撮影：太田拓実

そしてなんとこれはトレイであってオーディオなんです。 振動スピーカの新しい技術を用い、お盆から発生した振動がテーブルに伝わって、 テーブル全体がスピーカになるんだそうです。 なんだかちょっとイタズラっぽい、愉快なプロダクトですね。

緩やかでスタイリッシュな空間から、アイディアが生まれる

打ち合わせにも使っている、気持ちよいリビング。
最後に倉本さんの自宅兼オフィスを訪問。入ってすぐの リビングがとにかく気持ちいい！ さり気ないインテリアは気取りがなく、 テイストに統一感があって落ち着きます。 古い家の良さを生かしながら、 デザイナーらしい目線で選んだ家具や小物が ピリッとスパイスを効かせています。



左上はハンス・ウェグナーの椅子。大好きなデザイナーの一人だそう。
右上は益子のKINTA・STUDIOの棚。友人デザイナーの作品などを飾っている。
下は倉庫などで使われていた台車をリメイク。これは奥様のアイディア。

さらに仕事場にもおじゃまさせてもらいました。 シンプルに木の板を渡しただけの机が、 倉本さんのアトリエスペース。すっきりと整理され、 壁にはこれから商品化 されるラフスケッチやスケジュールが貼ってありました。 机の脇には、お気に入りの本が数冊。 アッキレ・カスティリオーニ、ジャスパー・モリソン、 ロナン＆エルワン・ブルレック、そしてコンスタンチン・グルチッチ、 ハンス・ウェグナー。 倉本さんのデザインの方向性のようなものが垣間見れる感じがします。




企業にいた頃とは違って、自分の軸を自由に表現できるのがフリーランスの 楽しさ。素材、アイテムにはこだわらず、しかしどんなプロダクトにも自分らしい 統一感、世界観は出していきたい、とのこと。 「ものをデザインするときは、数字とイメージの間を行ったり来たりで す。寸法値や機能値、コスト値などの数字を徹底的に検証しながら、それが商品の見 栄えにどんな影響を及ぼすのかを具体的に詳細まで想像する。それらを繰り返し、研 ぎ澄ませて行った先に、完成が見えてくるんです。でもその感覚の鋭さは、経験に よって修練されていくものですので、新しい素材や業種と出会いながら、さらにチャ レンジしていきたいですね」。


JIN KURAMOTO STUDIO
http://www.jinkuramoto.com/



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