全身性エリテマトーデス（SLE）とは……膠原病の一つで様々な臓器に炎症が起こる
30歳までの女性に多い全身性エリテマトーデス（SLE）
「全身性エリテマトーデス（systemic lupus erythematosus：SLE）」は膠原病の代表的な病気の一つです。「Lupus（ループス）」は、ラテン語で「狼（おおかみ）」を指し、「erythematosus（エリテマトーデス）」は「紅斑（こうはん）」という赤い発疹を指します。狼に噛まれた跡のような赤い発疹が全身に出てくることから、この病名が付けられました。全身の様々な臓器に炎症が起こる病気で、症状が起きる臓器によって、さまざまな症状が出ます。
全身性エリテマトーデスの原因
はっきりした原因は不明ですが、紫外線、ウイルス感染、怪我、外科手術、妊娠・出産、薬剤などの様々な原因によって免疫異常が起こり、そのために症状が出てしまうと考えられています。親族に多く見られる家系があることから遺伝子の異常の関与も言われており、50以上の遺伝子が関与すると考えられています。一卵性双生児には、25～60%程度で見られます。ただし、遺伝子だけでなく、環境因子もあるとされています。
日本ではの患者数は約6万人～10万人いると考えられて、男：女は1：9で女性に多く、10代後半から30歳ぐらいまでの女性に多いと言われています。指定難病で2013年で難病指定しているのは61,528人ですが、医療機関に受診していない人もいると推定されているので、約10万人以上はいるとされています。
全身性エリテマトーデスの症状…高熱や関節の痛み、発疹など
蝶のような赤い発疹である蝶形紅斑。このような症状が出たら要注意
全身性エリテマトーデスの症状は
このように、全身のあらゆる臓器をターゲットに病気を起こし、症状を起こしてしまいます。
- 全身症状：1週間以上続く38度以上の高熱、2週間以上続く37.5度前後の微熱、全身倦怠感、疲労感など
- 関節症状：手や指の関節が腫れて痛む。膝や肘などの関節が腫れて痛む。その痛む場所が日によって異なる
- 皮膚症状：蝶型紅斑（頬に赤い発疹が出て、蝶の形をした赤い発疹）、全身に名前の由来になった狼に噛まれたような丸い盛り上がった赤い発疹が重なっています。丸く連なったディスク状の発疹（ディスコイド疹）も見られます。多いのは顔や耳、首です。蕁麻疹やレイノー現象と言って、指が青く、冷たくなります
- 日光過敏症：紫外線に当たると、赤い発疹、水ぶくれ、熱が出ます
- 口：口内炎が口の奥や頬の部分にできます。痛みが少ないのが特徴
- 頭：毛が抜けてしまう脱毛、円形脱毛があります
- 心臓：心臓の覆っている心外膜の炎症（心外膜炎）、心筋の炎症である心筋炎を起こします
- 肺：肺を覆っている膜である胸膜が炎症を起こす胸膜炎。時に、肺出血や肺の血管が詰まってしまう肺塞栓症などの重篤な病気を起こします
- 肝臓：慢性肝炎を起こし、ルポイド肝炎と呼ばれています
- 消化器：吐き気、嘔吐、便秘、下痢、腹痛などが見られ、ループス腸炎を起こします
- 腎臓：予後に左右する腎炎を起こす。ループス腎炎と言って、タンパク尿、血尿を起こします。場合によって蛋白尿が多いとネフローゼ症候群になることもあります。腎炎が続くと、最終的に腎不全となり、透析になってしまいます
- 膀胱：間質性膀胱炎を起こし、ループス膀胱炎と言われています
- 脳： CNSループス（Central Nerve system：中枢神経系）と呼ばれ、うつ病、痙攣、精神症状（不眠や集中力低下）、頭痛などを起こします
- 神経：手足の神経が炎症を起こす末梢神経炎を起こします
- 骨髄：免疫を担当する白血球が減少し、赤血球が減少し貧血になります。血小板が減少すると、出血しやすくなり、紫斑が出てきます
- 抗リン脂質抗体症候群：自己を攻撃する抗体（自己抗体）のために血液が固まりやすくなり、動脈、静脈に血の塊（塞栓）を作ってしまう病期。習慣性流産や脳梗塞、脊髄への血管が梗塞を起こした横断性脊髄炎を起こします
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