自己測定したHbA1cから平均血糖値がわかる
自己血糖測定から得るものはたくさんあります
HbA1c(NGSP)(%)は患者の平均血糖値を示す指標なので、以前は医師から「良」を目指せと言われたこともあるはずです。この「良」というのはHbA1c 6.2~6.9%ですから、そう簡単には達成できません。なぜなら、HbA1c 6.2~6.9%というのは空腹時血糖値を110~130mg/dl、食後2時間血糖値140~180mg/dlの範囲内に収めないと、まず実現できない数値だからです。
日本では経口薬で治療中の人の自己血糖測定は特別の事情があるケースを除いて健康保険の適用にならず、全部自己負担になってしまいます。確かに経口薬では食前・食後の血糖値が高くてもエクササイズ以外には対応できるツールがありませんから、血糖コントロールが難しいですね。そんな時はまずHbA1cから過去1~2ヵ月の平均血糖値を推定して担当医と一緒に対策を考えてみましょう。
以前、「日本でも世界でも、HbA1cが大混乱に!?」記事で、国際標準のIFCC-HbA1cのことに触れましたが、この標準化作業と並行してHbA1cから過去1~2ヵ月の平均血糖値を推定する大規模の研究が行われたのです。その結果、次のような換算式がアメリカ糖尿病協会から発表されています。難しそうですが簡単な計算です。
推定平均血糖値(mg/dl)=28.7×HbA1c(%)-46.7
多くの糖尿病患者はHbA1c 7%未満を目標にするように言われていると思います。このHbA1c 7%というのはこの公式を使って推定平均血糖値に換算すると154mg/dlになります。
28.7×7(%)-46.7=154mg/dl
やはり推定平均血糖値が154mg/dlというのは高いですね。健康な人は食後でも140mg/dlを超えることはまずないのですから。
ところで概算ですが、暗算でも出来る簡単な計算式があります。HbA1c(%)から2を引いて、30を掛けるのです。
(HbA1c-2)×30=だいたいの平均血糖値
上記のHbA1c 7%をこの式で計算すると5×30ですから約150mg/dlです。なかなかのものでしょう?
推定平均血糖値の使い方・活用法
HbA1cの目標を与えられても、何をどうするのかの行動には移せません。それにはどうしても自分の血糖値の変化を知る必要があります。すなわち、自己血糖測定が欠かせないのです。全額自己負担の人は一回あたり130円前後かかりますから頻度は少なめで大丈夫。少なくても朝食前の早朝空腹時血糖値、昼食や夕食の食後2時間値などの一つを一日一回でも測ってみましょう。それを推定平均血糖値と見比べて医師や栄養士と治療方針を打ち合わせるときに利用するのです。つまり毎日の血糖チェックとHbA1cの長期のコントロールを同じ数値(mg/dl)で突き合わせることが可能になるので、生活行動に結び付けやすくなります。
推定平均血糖値の導入はアメリカでは積極的ですが、イギリスでは自己血糖測定をしている人が少ないとの理由で今回は見送られることになりました。残念ながら日本糖尿病学会でも話題になっていないようです。私は医療のお仕着せの治療が嫌なので、かつては私費で自己血糖測定をしましたし、今はこの推定平均血糖値と照し合わせています。興味ある人は医師に相談してみましょう。