糖尿病/その他の糖尿病の合併症

糖尿病ケトアシドーシス(DKA)の原因・初期症状

はっきりとした自覚症状が出る前から糖尿病ケトアシドーシス(以下DKA)が忍び寄ってきます。症状が症状出るまでは一般に24時間以内と言われていますが、インスリンポンプの故障の場合は6~12時間と短いことがあります。初期症状と原因について、ご説明しましょう。

執筆者:河合 勝幸

尿中のケトンを量(mg/dl)として表示するものと、small,largeと記述的に表示するものがあります。

尿中のケトンを量(mg/dl)として表示するものと、small,largeと記述的に表示するものがあります

はっきりとした自覚症状がでる前から糖尿病ケトアシドーシス(以下DKA)が忍び寄ってきます。自覚症状が出るまでは一般に24時間以内と言われていますが、インスリンポンプの故障の場合は6~12時間と短いことがあります。

インスリンポンプで使用しているインスリンは超速効型のタイプのため、からだの中からインスリンがなくなるのが早いからですね。もちろん、これはインスリンポンプが危険だということではありません。ポンプには長所がいろいろあるのですから、万一に備えて心の準備が欲しいということです。


何があなたをDKAの危険にさらすか?

まず第一はインスリンの不足です。体調が悪く、何も食べられないので血糖が上がるはずがないと思って日常のインスリン注射をパスするのはよくあることですが、これがそもそもの間違いの元です。具合の悪い時はインスリンを効かなくさせるストレスホルモンが増え、からだはむしろ普段より多くインスリンを必要としているのですから。

1型糖尿病の人は処方通りのインスリン注射をしていてもDKAになることがあります。原因は他の病気や炎症などです。例えば飲食に困難が伴う喉(こう)頭炎や下痢を伴うインフルエンザなどです。

特に後者は嘔吐や下痢を伴いますからDKAの脱水を更に悪化させてしまいます。
病気や手術はからだに強いストレスを与えます。からだはそれに耐えるようにコルチゾールやアドレナリン、グルカゴン、成長ホルモンなどの、いわゆるストレスホルモンを分泌するのですが、それぞれが血糖を高め、ケトン体のレベルを上げる作用を持ちます。これらはインスリン拮抗(きっこう)ホルモンと呼ばれているものです。1型糖尿病ではこれに打ち勝つインスリンを与えなければ、かなり速くDKAへと進むことがあります。

高齢の2型糖尿病者でもインスリン抵抗性が強ければ、同じような状態ではDKAになります。肥満に悩むアメリカではDKAの1/3はこのような2型糖尿病によるものです。高齢者は利尿薬やステロイドホルモン、高カロリー輸液でも思わぬ高血糖になることがあります。2型のDKAは診断は容易でもその原因はなかなか分からないものなのです。


糖尿病ケトアシドーシス(DKA)の初期症状・進行

前兆もなく、突然DKAになることはありません。まず、高血糖による多尿が始まり、やがて水分を補うよりもさらに多くを尿として排泄するようになって、重い脱水症状になります。過剰なブドウ糖は水に溶かして排泄するしかありませんが、脱水すると血液量も減少し、ますます高血糖になる悪循環に陥ります。激しく口が渇き、力が入らず立っていられないようになります。

血液中にケトン体が増えて酸血症になると、吐き気、嘔吐、腹痛が起き、水分の補給がますます困難になります。下痢そのものはDKAの直接の症状ではありませんが、DKAによる胃腸障害で下痢になることもあります。下痢は水分やミネラルを失うことになり、危険な脱水を招きます。

早い呼吸、深く大きな呼吸はDKAの症状です。からだは酸性に傾いた血液を重炭酸で中和するような緩衝能力を備えているのですが、中和して生じた2酸化炭素を肺から排出するためにこのような呼吸になります。また、ケトン体の一つ、アセトンは呼気にも出るので、フルーツのようなアセトン臭もDKAの症状です。

高血糖が長時間続くと脳細胞も脱水状態になり、異変をきたします。「けだるい」「眠気が強い」「意識の混濁」という症状から昏睡へと進みます。こうなると、助けるには時間が最大のポイントになります。

DKAは自分で対処できる初期段階から、専門医のいる医療機関で大至急治療を受けなければならない段階への進行が予測できない怖さがあります。

次回は患者が自分でできること、行わなくてはならないことを解説します。DKAはインスリンを増やせば住むような状態ではないのです。

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