心不全の症状
心不全には左心不全と右心不全があります。重症では両方が合わさった両心不全もあります
心不全の症状は、その原因によって突然出現することもありますが、多くはゆっくり出て来ます。患者さんは何となく苦しいので、生活の知恵でしょうか、あまり動かなくなり、症状がいったん隠れることも。その間に心不全が重くなっていることもあります。
心不全の症状といっても左心不全(左心室や左心房関係の心不全)と右心不全(右心室や右心房関連の心不全)では様子が違います。両方の症状が出ることもあります。
左心不全の症状:
階段を登ると強い息切れがするようになれば心不全のおそれがあります
左心不全では肺がうっ血して水分が貯まります。そのため運動時たとえば階段を登るときなどに
息切れが起こります。軽い運動でも疲れやすくなります。高齢者では眠くなったりボーっとすることもあります。心不全が進むと、軽い運動でも息切れが起こり、さらに悪化するとじっと安静にしていても
息苦しくなります。たとえば仰向けに寝ると息苦しくなり喘鳴(ぜいめい、喘息のようにヒューヒュー・ゼイゼイします)が発生、体を起こして座ると少し軽くなるのは起座呼吸(きざこきゅう)と言って重症心不全の症状です。
それがさらに悪化すれば強い呼吸困難、はあはあと速い呼吸、青白い顔色、冷や汗、不安感などが起こり、喘息のような症状も強くなります。そのままでは危険な状態です。
右心不全の症状
右心不全では足がむくんだりお腹が張ったりします。図のように足を指でしばし押さえて離すと窪みができる場合は要注意
右心不全のときには水が貯まって足が腫れたりお腹が張ったりします。足を低くしていれば足が腫れやすくなります。肝臓や胃腸に水が貯まって腫れてくると食欲が落ち吐き気なども起こります。筋肉や脂肪は落ち、次第に痩せ細って行きます。
左心不全でも右心不全でも、心不全が悪化して血圧が落ちると手足が冷たくなったり全身の状態が悪くなります。動脈硬化が強い人では脳梗塞なども起こりやすくなります。
視点を変えて次の2つの症状でまとめることもできます。
1. 血液を多くは送れないための症状: たとえば疲れやすい、だるい、など
2. うっ血のための症状: 息ぐるしいとか、足が腫れるとか、お腹が張るなど
心不全の検査
胸部レントゲン写真は昔からある検査法ですが、全体像を把握したり経過を見るには現在も極めて有用な方法です
上記の経過や症状から心不全の診断は比較的容易につきます。心不全の診断がついても、治療するためには心不全の原因を調べる必要があります。
そこで
胸部X線検査を行い、心臓の拡大(大きくなること)や肺のうっ血や水の貯まりがあれば心不全の存在がわかります。同時に左室・右室や左房・右房の拡大などの診断がある程度つきます。
心電図を取ればリズムや左室肥大あるいは狭心症・心筋梗塞などがかなり判ります。
胸部X線検査(レントゲン検査)や心電図は外来で検査でき、痛みや害もありません。X線検査では放射線を使いますが、その量は僅かで、飛行機での海外旅行の際の被爆より遥かに少ないです。
血液検査で、BNPやProBNPを調べればうっ血性心不全の有無と程度が判りますし、心筋梗塞の時にはCK、CK-MB、トロポニンTなどで梗塞の有無や大きさが判ります。血液検査によって同時に肝臓や腎臓等がどういう状態かも相当把握できます。外来で血液を採取し、多くはその日のうちに結果が出ます。
註: BNPやProBNPは心臓が無理するときに血液中に出るホルモンです。CKは心臓や体の筋肉が壊れるときに出る酵素で、CK-MBはとくに心臓が壊れるときにでる酵素です。トロポニンTも同様です。これらが高値では心筋梗塞等が起こっていることがわかります。
心エコーは心不全の診断や、原因究明に大変役立ちます。痛みや害などもありません
超音波(心エコー)を撮れば、心臓の各部屋(左心室とか左心房などの)のサイズや機能が正確に判ります。また収縮機能不全か拡張機能不全かもかなりわかります。4つの弁の状態つまり狭窄(狭いこと)か閉鎖不全(逆流すること)かも判ります。また心臓の周囲に水などが貯まっているか、心膜が肥厚してないかも判明します。これらによって心不全の有無や程度のみならず、その原因がかなり判ります。
心エコーは痛みもなく無害です。外来でも撮れます。
心不全の原因究明には
心カテーテル検査が最終検査法です。心臓の各部屋の圧や心拍出量(心臓が毎分送れる血液の量)などが正確にわかり、冠動脈造影で冠動脈の病気が正確に診断できます。心筋症や心筋炎その他の病気の場合は心筋の一部を取って来て顕微鏡で調べることもできます。
心カテーテル検査は病院によっては外来でもできますが、心不全がある程度以上強ければ入院となることも多いです。腕または足の付け根から針をさしてカテーテルという管を入れて心臓まで進めて診断します。
核医学検査や
MRIは心筋の血液の流れや心筋梗塞の患者さんの場合は心筋の生きている度合いなどもある程度わかります。MRIでは左室の正確な動きが把握しやすいです。
核医学検査やMRI検査も外来で行えます。痛みや危険性もありません。核医学検査で使う放射能はごく僅かです。
これら検査の費用は、お持ちの保険によって自己負担率が変わります。病院の事務でお問い合わせください。心不全のために心臓手術や心カテーテル治療が必要となった場合は高額医療ため医療費の大半が保険ででます。
心臓の肥大と拡張は別のものです。一般には拡張を肥大と呼ばれることがあり、混同されないようお願いします
注釈: 一般に心臓が大きくなることを心臓の「拡張」と言います。世間ではそれを 「肥大」と呼ぶ方が多く、医学用語の肥大は心室の壁が厚くなることで心臓そのものは小さいこともありますので、混乱します。ご注意ください。
参考サイト:
心臓血管外科情報WEB