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新型インフルエンザの予防接種?大流行前ワクチンとは(2ページ目)

新型インフルエンザウイルスが出現したときに備えて、大流行前ワクチンが開発されています。優先的に接種すべき職種が発表されましたが、果たして本当に「優先」なのでしょうか?

執筆者:吉國 友和

ワクチンの副作用か? ギラン・バレー症候群の発生率が

ワクチン
インフルエンザ対策の基本となるワクチン。現行のものは安全性も高いのですが、副反応の危険性はゼロではありません
1976年、ニュージャージー州で豚インフルエンザの流行が確認され、近隣の米軍訓練基地の兵士からも同じウイルスが検出されました。当時はスペイン風邪の再来、いわゆる新型ウイルスではないかと騒がれたそうです。即座にワクチンが開発され、わずか8ヶ月で4,000万人以上が接種したとされています。ところが、ワクチンを接種した人では、難病の神経疾患であるギラン・バレー症候群の発症率が当時の8倍にも達したというのです。ワクチンとの因果関係は立証されていませんが、反対に関与していないとも断言できません。

しかも、新型ウイルスと騒がれたにも関わらず、現実にはこのウイルスが大流行することはなかったといいます。これはワクチンが奏功したことで封じ込めに成功したとも言えなくもないのですが、あくまでも結果論ですから専門家の間でも意見の分かれるところです。


ギラン・バレー症候群(Guillain-Barre syndrome)……病原体の感染力をなくした不活化ワクチン接種による発症率は100万人に1人。手や足先などに麻痺が生じ、軽い感覚障害を伴う。報告により異なるが、自然発症率は10万人に1.5~2人。若年層、ついで40代、70代、やや男性に多い。
(南山堂「臨床神経内科学」より一部改編して引用)


それでも必要なワクチン開発

冷静に状況を見据えると、新型インフルエンザウイルスが出現するのは時間の問題と言えます。今回の大流行前ワクチンの本来の役割は、
  • 接種することで免疫力はどのぐらい高まるのか
  • 異なる種類のウイルスに対しての効果(抗体産生量)はあるのか
  • 副反応がどのぐらいの確率で出現するのか
といったデータを集計することですから、今後の対策のためには必要なのかもしれません。しかし、その効果や副反応出現の可能性は不明のままに接種するのか、これはあくまでも個人の判断に任せられます。

人類は未経験の新型ウイルスには免疫を持っていないため、一度のワクチン接種では不十分とされています。仮に3~4週間の間をあけて2回目のワクチン接種を行ったとしても、十分な量の抗体が産生されるまでには1ヶ月以上はかかります。新型ウイルスが発生してから大流行前ワクチンを接種しても、それでは遅すぎるのは事実です。新型ウイルスが出現する前に国民全員がワクチンを接種すれば、被害は最小限に抑えられるとも考えられます。


こうした事実を知った上で、副反応と国民全体の利益を天秤にかけて大流行前ワクチンを接種するかどうかを考えなければなりません。先日、一部の職種を対象にした「大流行前ワクチンの優先順位」が発表されました。果たして本当に「優先」なのでしょうか。

なお、新型インフルエンザウイルスが出現した場合、ウイルス量の少ない1年目よりも、人から人に感染を繰り返すうちに増殖し、かつ人間の免疫力も十分備わっていない2年目のほうが犠牲者も多くなるとガイドは考えています。ウイルスにとって、2年目のジンクスという言葉はありません。


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