よく妊娠中のお酒は控えましょう、と言われますが、実際のところどうなのでしょうか。実は厚生労働省の報告では妊娠中の女性の飲酒率は8.7%(平成22年/2010年)となっており、政府の目標で2022年までにはこれを0%とすることが国の目標として掲げられています(健康日本第2次)。でも、どうしてそこまで妊婦さんのアルコール摂取について厳しく言われるのでしょうか。

飲酒が日常生活にあまりに溶け込んでしまって、なんとなく、『ちょっとだけなら妊娠中でもお酒を飲んでいいのかな?』という気がしますが、実はこれが生まれてくる赤ちゃんに胎児性アルコール症候群という異常をもたらしてしまうことがあるのです。2015年の10月にはアメリカの小児科学会が『妊婦さんのアルコール摂取は一切ダメ』というスタンスを明らかにしたことも話題になりました。

そこで今回は、その胎児性アルコール症候群についてお話いたします。

胎児性アルコール症候群ってなあに?

胎児性アルコール症候群

少量の飲酒でも障害を起こしうることが分かってきました

昔から妊娠中に大量のお酒を飲むと、生まれてくる赤ちゃんに未熟児が多いとか、流産しやすくなるなんてことは良く知られていましたが、少量の飲酒でも赤ちゃんに障害をおこしうることが分かってきました。

胎児性アルコール症候群(FAS: Fetal Alcohol Syndrome)とは、妊娠中の飲酒によるアルコールの影響で、生まれてくる赤ちゃんに発達障害や行動障害、学習障害などが現れる障害のことです。

出生時低体重や小頭症、特有の顔貌があったり、小奇形を伴うことでも知られています。また、成人してからのADHDやうつ病との関連も指摘されており、最近ではアルコール・スペクトラム(FASD: Fetal Alcohol Spectrum Disorders)と呼ばれることも多くなっています。以前は妊婦さんの大量飲酒でおこるといわれていましたが、少量でも発生するとの報告もあります。

脳は妊娠中ずっと発達を続けます。そして、非常にデリケートなので、アルコール以外の影響もすぐ受けてしまいますが、特にアルコールの影響を受けるとさまざまな障害が起こりうるのです。具体的には脳が小さかったり、左右をつなぐ脳梁という部分が萎縮したり、形がゆがんだりすることが報告されています。

ちょっとだけなら大丈夫?

ちょっとだけなら大丈夫かしら?
ちょっとだけなら大丈夫かしら?
残念ながら、妊婦さんの飲酒に安全域はないのです。というのは少量なら問題ないという研究もあるのですが、一方で少量でも発生したという報告もあるからです。アルコールは人によって影響が違うため、閾値がわからないのです。

ただ、2015年のアメリカ小児科学会の報告では妊娠初期に飲酒していた人はしてない人に比べてこういった障害がでる確率が12倍、初期から中期まで飲み続けた人は61倍、後期まで飲み続けるとなんと65倍にまで上がることがわかっています。

また、どんな飲み方がいいかとか、食事のときなら良いとか、ゆっくり飲めば良いとか、詳しいことはわかっていません。とすると、『妊娠中は飲酒しないようにしましょう』としか言えないのです。もちろん同じアルコールですのでワインならいいとか、ビールはだめとか、お酒の種類によるわけでもありません。

もちろん妊娠中に飲酒したら、絶対障害が出るわけでもないですが、『例えば1回目の妊娠で飲んでも大丈夫だったから、次の妊娠でも大丈夫かな?』というわけではないのです。

どれくらいの頻度でおこるの?

母集団や民族によって大きく違いますが、アメリカでは1980~1990年くらいには新生児1,000人あたり0.5~2人、日本では1991年の調査では1000人に0.1~0.05人くらいとされていました。ただし、アルコール・スペクトラム(FASD: Fetal Alcohol Spectrum Disorders)まで広げると、もう少し多くなるのではないかと思われます。遺伝によらない精神発達障害の最も多い原因です。

どうやったら予防できるの?

これは妊娠中お酒を飲まなければ100%予防できます。どんな予防法でも100%ってなかなかないので、『100%』ってすごいことですよね。もし妊娠と気づかないで飲んでしまった場合は仕方がないですが、分かった時点で禁酒するようにしましょう。継続して飲めば飲むほど赤ちゃんに対するアルコールの影響が大きくなります。妊娠の可能性がある、もしくは考えている場合はアルコールを控えましょう。また、周りの方もすすめないようにしたいものですね。


胎児性アルコール症候群
  • 妊娠中の飲酒が原因でおこる胎児の障害
  • 飲まなければ100%予防可能

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