●マルチ商法
マルチ商法は、悪徳商法の代表ともいえるものですが、その手口はあまり知られていません。また、1人が新たに数人を誘い込んで、商品の購買者さらには販売者として連鎖的にお金を吸い上げていくのが目的ですから、組織に雇われた意識がないままに、商法に加担してしまうおそろしい商法でもあります。
マルチへの勧誘は、たいていの場合、学生時代の友人だとか知人だとかからの電話がかかってくることころから始まります。「一緒に食事でも」と誘われ、約束の日時に指定されたホテルなどに出向くと、当の友人がやってきて、「私いま、割のいいアルバイトしてるの。ちょうど今日、その説明会がこのホテルで開かれているから、ちょっとだけでいいから聞いていかない」などと、会場に連れ込まれることになります。
この説明会では組織、経営者、商品の説明があったあと、同年代の若者が数人登場して、このビジネスを始めたことで大きな収益と人生への自信を得ることができた、年収はあっというまに1000万円を超え、ベンツのオーナーにもなれたなどと熱弁を振るい、ビジネスへの参加を呼びかけます。
ここで、少しでも興味を示そうものなら、次には友人の手引きで近所の喫茶店に連れ込まれ、そこに友人の先輩という人物が現れて、改めて、このビジネスでなら夢を叶えることができると力説。さらには、「友人の○子さんがこれだけあなたのことを考えて、一緒にやろうといっているのに、この友情に応えられないのか」と畳み込まれ、結局は入会させられる羽目になるのです。
マルチ商法で扱う商品は、洗剤や化粧品、健康食品などが多いのですが、会員になるには数万円から数十万円の商品を購入しなければなりません。しかし、この程度の出費は、「友人を10人も入会させればすぐに取り戻せるし、その人たちがさらに新しい会員を加入させたときは一定のマージンももらえるから収入はどんどん増えていく」仕組みになっているので、すぐに取り戻せると、その場では思うのです。
しかし、友人に声を掛けまくっても、こんな胡散臭いビジネスに参加しようとする人がおいそれと見つかるわけはありません。運良く入会させられたとしても、その友人がも同じ苦しみを味わうことになりますから、当然、友情関係にもヒビが入ることになるでしょう。結局、この商法に加担してしまうと、入会時に支払った多額の金銭と、友人をともに失うことになりかねないのです。
マルチ商法のシステムは、商品を販売するよりも、販売にあたる人を増やすことで儲ける仕組みになっています。しかし、これで利益を受けるのは、組織の上層部にいるわずか2%だけといわれます。商品を売る会社だけが丸儲けする仕組みになっているのです。1人が1日2人づつ勧誘するとすると、27日目には日本国民全員がその会の会員になる計算になります。このことだけでみても、この商法のシステムが現実的に成り立たないことが理解できるでしょう。
以前は、入会時に2万円以上の特定負担金が必要となるものを規制の対象としていましたが、この定義から逃れるために、特定負担を2万円未満としている「マルチまがい商法」が横行するようになりました。そのため、現在は、なんらかの金銭負担を求められるものすべてが規制の対象となっています。入会時の負担が少ないシステムになっているからといって軽々に判断すると、いざフタを開けてみたらマルチ商法だったということもありえます。実態に即して判断すべきでしょう。