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ルールの法制化が話題に 解雇を巡る法律知識(前編)(7ページ目)

東京都の労政事務に関する報告によると、97年以降、労使間トラブルの相談内容のトップは「解雇」となっています。転職に関連する法律シリーズ。今回はこの「解雇」を取り上げます。

執筆者:西村 吉郎

■整理解雇の手順と人選の妥当性に関する問題

Q:整理解雇はどんな手順で行われるのか

取引先の倒産で、会社の業績が急速に悪化してきました。職場では、近いうちに人員整理が始まるかもしれないとのうわさしきりで、いきなり解雇を言い渡されたらどうしようと心配しています。
 
A:経営上の必要性と解雇回避措置が必要
多少売上が落ちてきたからといって、いきなり整理解雇が認められるものではありません。そのまま放置すれば倒産のおそがあるといった、よほどせっぱ詰まった状況にあることが整理解雇に着手するための第一の要件となります。

また、整理解雇に着手する前に、会社は解雇を回避する努力をしなければならないとされています。具体的には、余剰人員の配置転換、一時帰休(レイオフ)、労働時間の短縮、残業の廃止、新規採用の中止、役員の賞与カット、昇給停止、賃金の切り下げ、一時金(ボーナス)支給の中止、希望退職者の募集などを実施したものの効果があがらず、倒産の危機が回避できない状況が継続している場合にはじめて、整理解雇が可能となるのです。

整理解雇を行う場合は、整理基準を明確にし、これを公平に適用することも要件の一つです。整理基準としては、職場の秩序を乱す者、会社業務に協力しない者、職務怠慢な者、技能が低い者、欠勤が多い者など、職務能力や勤務状況などを基準とするものが一般的です。

整理解雇は最後の手段としてしか認められないものであり、能力的に相当劣っているとか、勤務評定がかなり悪いというのでなければ、いたずらに恐れることはないでしょう。

Q:定期代が高すぎるとの理由で整理対象に

経営悪化を理由に人員整理が行われ、私もその対象になっていまいました。能力不足のためということでしたが、うわさによると、通勤交通費として6万円がかかる遠距離通勤が裏の理由としてあるようです。

A:合理的で妥当な理由が必要、無効となる可能性も
経営状態が逼迫していて、人員整理の前に解雇回避措置(一時金支給の停止、希望退職者の募集など)が実施されたことなどの要件があれば、最後の手段として人員整理による解雇が認められます。しかし、その対象者を誰にするかという人選には、合理的で妥当な基準がなければなりません。

この基準は、原則として経営者の裁量が尊重されることになりますが、余剰人員を整理して企業再建を目指すという目的からして、職務能力を基準とし、能力の劣る者から整理するというのが一般的です。

扶養家族がいる人を除外して単身者を対象とした例や、「○歳未満、入社○年未満」という年齢や勤続年数を基準とした例もあります。また、生活への打撃が少ない、会社への貢献度が低い、再就職が容易であるといった理由も、裁判で認められています。一方、上司との折り合いが悪いなど、会社側に恣意的な理由がある場合には、解雇は認められません。

もし、あなたが聞いた件が事実であるとすれば、人員整理の根拠としては薄弱で、公平かつ合理的な基準とは認めがたいというべきです。会社側に事実を確認し、人員整理の基準と、あなたがその対象となった理由に食い違いがあれば、人員整理が無効となる可能性もあります。
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