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ルールの法制化が話題に 解雇を巡る法律知識(前編)(5ページ目)

東京都の労政事務に関する報告によると、97年以降、労使間トラブルの相談内容のトップは「解雇」となっています。転職に関連する法律シリーズ。今回はこの「解雇」を取り上げます。

執筆者:西村 吉郎

■懲戒解雇処分の妥当性に関する問題

Q:遅刻常習を理由に懲戒解雇された

この夏以来体調を崩し、遅刻・欠勤がたびたびありました。その都度上司には理由を説明し、求めに応じて医師の診断書を提出したりしていたのですが、先日、そんな状態が続くようでは困るということで解雇を言い渡されました。それも、勤務態度不良を理由に懲戒解雇にするというのです。受け入れるほかないのでしょうか。

A:病気による職務怠慢で懲戒解雇は行き過ぎ
解雇には、大きく分けて「普通解雇」と「懲戒解雇」の2つがあります。このうち普通解雇には、業務上やむを得ない都合により解雇される場合と、制裁を受けるようなことではないが、労働者の責任により解雇される場合があり、具体的には、?労働能力が著しく劣悪と認められるとき、?精神または身体に故障があるか、老衰のため業務が遂行できないと認められると、?事業経営上企業整理を行うとき、などが該当事項として挙げられます。

これに対して懲戒解雇とは、労働者の故意または重大な過失による行為によって、会社がその財産や経営活動に重大な損害を受けた場合、それに対する制裁としてなされる解雇です。

あなたの遅刻や欠勤が故意であり、なおかつ職場の秩序を相当に乱してして、あなたを排除しなければ企業秩序を回復できないという場合には懲戒解雇も妥当かと思われますが、あなたの場合の勤務態度不良の根本には、病気という意図せざる事情があるのですから、懲戒解雇処分は行き過ぎです。

よしんば、普通解雇に相当するとしても、あなたの病気がも業務に起因する疾病である場合、会社は必要な療養補償を行うべきものであり、その療養のために休業する期間およびその後30日間は解雇が禁じられています。今一度会社側と交渉し、受け入れられないようなら、労働基準監督署などに出向いて相談しましょう。


Q:退職日の引き延ばしに従わず、懲戒解雇処分に

7月中旬に上司に退職願を提出したのですが、部長からしばらく待てといわれ、その後何度確認したのに返答はありませんでした。転職先が決まっていたので、残務整理をしたあと8月末付けで退職したつもりでした。会社は「勝手に退職したのは業務放棄だ」として懲戒解雇とし、退職金の支払いも拒否しています。

A:懲戒処分は行き過ぎ、退職金支給は受けられる
社員が自己の都合で任意に退職する場合、退職願の提出(口頭による意思表示を含む)に関しては、2通りの解釈があります。事前に会社側と合意したうえで、退職の意思を確認するため提出するものと、社員側の一方的な意思表示として提出することの2つです。

通常は、退職願を提出するということは、「社員と会社側の『合意』による解約の申し込み」であるととらえるのが大半です。この考え方からすれば、勝手に退職日を決めて退職するということは、業務放棄として何らかの処分が科せられても仕方ないといえるでしょう。

しかし、あなたの場合、確認しても会社側からは返事はなかったとのこと。残務整理を進める間にも上司(会社側)からは特別な注意もなかったようです。また、就業規則の規定に沿って手続きを進めたのなら、会社側の「勝手に辞めた」といういい分は認めがたいものがあります。

したがって、これを理由とした懲戒解雇処分も正当とはいえません。あなたには、規定どおり退職金を受け取る権利があります。懲戒解雇として処分するには、それ相応の理由と根拠を必要としますから、再度、会社側と話し合ってみましょう。
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