よくわかる政治

更新日:2006年09月26日

タイ政治の基礎知識2006

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クーデターを繰り返すタイの政治。そして超越的な国王の存在。軍と国王を支持する国民たち。タイの政治は不思議なことがいっぱいです。タイ政治の基礎知識2006年版です。

1ページ目 【タイ政治の歴史~現王朝建国から立憲革命】
2ページ目 【タイ政治の歴史~90年代に訪れたタイ政治の転換点】
3ページ目 【タイ政治の歴史~2006年クーデターの背景とタイ政治の特徴】

【タイ政治の歴史~2006年クーデターの背景とタイ政治の特徴】

反タクシンデモと総選挙後の混乱、クーデター

タイの人々
クーデター慣れしている?タイの人々(photo(c)esupply/版権フリー写真素材集
2006年になると反タクシンの動きは強まり、野党や市民は大規模な反タクシンデモを行います。

これを受けてタクシンは総選挙を強行します。これに反発した主要野党は総選挙への参加をボイコット。選挙は混乱し、さらに司法当局によって選挙は違憲無効と判断されてしまいます。

タクシンは退陣を発表して休養に入りますが、結局次の首相を決めず、居座ってしまいます。これに対しても市民の反発は続き、国内政治は大きく混乱してしまいます。

このような情勢のなか、タクシンが国連総会のためニューヨークにいったすきを狙い、軍はクーデターを決行します。

軍は「民主主義統治改革評議会」を設置し、統治権を国王のものとします。国王がこれを黙認したと見られたことから、このクーデターは無血のまま成功し、タクシン政権は崩壊しました。

1997年憲法は停止が宣言されましたが、軍は早期に権限を国民に返還すると宣言しています。今後の情勢はまだ不透明ですが、早期に民主政権に復帰する見方が広がっています。

タイにおける軍の力

軍の力は低下していたといわれていました。タイ経済の好調さを止めるような軍事クーデターは実行しないだろうとも考えられていました。しかし、軍は今回の混乱においても実力を行使しました。

タイの軍、とりわけ伝統ある陸軍は、国民から意外なほど信頼されています。なぜでしょう。なぜなら陸軍の士官はタイ最大のエリートたちだから、ということがいわれます。

そのため、タイ陸軍の司令官ということになると、エリート中のエリート。われわれが軍人にたいして抱く実力をもって暴威をふるうイメージと、タイ国民が抱くイメージとは大きく異なるわけです。

このあたりを認識しておかないと、陸軍に寄せる国民の大きな信頼の背景が理解できないと思われます。

しかしそれは同時に民主主義を監視する「市民」の成長が遅れていることをも意味しています。タイでは、市民の政治に対するチェックが効いていない。結局、チェックするのは市民ではなく軍なのだ……というわけですから。

タイの政党はなぜ力がない?

最近までタイではタイ愛国党が大きな勢力を持っていましたが、これはタクシン政権の間だけ。今後、政党再編が進むことは確実でしょう。

タイの政党はまだ組織力が非常に弱く、政党というよりも派閥的な要素が濃いところが特徴です。そのため議員の政党移動が頻繁にあります。

そのため政党は乱立傾向にあり、政権は(タクシン政権をのぞいて)多数の政党による連立政権で基盤が弱い。今後は、政党再編によってこの状態を脱することができるかどうか、政党の力をみていくうえで、一つの注目点となるでしょう。

国王の超越的存在はいつまで続く?

タイの政治構造
タイはまだ「国王=軍=政党」の順序から抜け切れていない「半分民主主義」?
いざというときに国王が政治の調整を、超越的な立場から行うことはたびたびありました。2006年クーデターも、背後に国王の動きがあったといわれています。

こうしたタイ国王の権威は、もちろん伝統的な「民族・仏教・国王」体制が支持されていることにもありますが、戦後の軍事政権が、国王を利用しようとしたため、ここまでのものになった点も見すごせないところです。

ともかくもこの50年あまりでプミポン国王の権威は非常に高まりました。国王の「お言葉」が政策に反映されることもしばしばです。こうした権威に疑問符をつけたタクシンは政権の座から負われ、国民の多数もこれを歓迎した、というのが現状です。

このような国王の「超越的」な状態がいつまで続くのか、そして在位60年を迎えたプミポン国王の後も、この傾向が続いていくのか。

そして、こういう政治はタイ民主主義の未成熟からきているのか、それとも民主主義が成熟してもこのような「タイ式民主主義」の伝統は残るのか。注目していきたいところです。

「タイ政治の基礎知識2006」についての参考書籍・資料はこちらをごらんください。

▼こちらもご参照下さい。
大人のための教科書 政治の超基礎講座

「政治の基礎知識・基礎用語」 政治の基礎的な知識はこちらでチェック!

(執筆者:辻 雅之)

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