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クレヨンしんちゃん、危うし?!(2ページ目)

日本の人気漫画『クレヨンしんちゃん』のキャラクターグッズを、本来の商標権保持者である双葉社が中国で販売できない事態が起こっています。なぜこうなってしまうのでしょうか?

執筆者:鳥羽 賢

商標登録は「早い者勝ち」

中国地図
広大な中国では、日本では考えられないようなことも起こりうる
今回の事態は日本人の感覚で考えれば、正当な商標権を持っている双葉社の主張が正しいでしょう。しかし、海外のビジネスでは日本の商習慣が通用しないことは日常茶飯事です。双葉社側にとって大きな失敗は、『蝋筆小新』を中途半端に台湾だけで発売してしまったことではないでしょうか?

もし台湾でも中国本土でも全く『クレヨンしんちゃん』の中国版が出回っていない状態だとしたら、この問題はどうなっていたでしょうか?たとえ中国企業が先に『蝋筆小新』という名前を商標登録しても、双葉社は別の名前で売り出すこともできたのではないでしょうか?

ところが今回は、1995年に台湾だけで商標登録をし、漫画やアニメ、キャラクターグッズを販売してしまいました。そうなれば当然、中国本土から来て「これ、おもしろいな」と思う子供たちがたくさんいますし、「これは売れそうだな」と思う大人たちも多いでしょう。中国という海賊版天国の国の近くで商品を販売したら、その後何が起こるかは容易に予想がつきます。

双葉社は台湾だけで『蝋筆小新』を商標登録したまま、中国本土については全く上陸しませんでした。しかしその裏で『蝋筆小新』は中国人の間でも、かなり人気と知名度が高まっていきました。そのために、一儲けしようと企む中国人が、先に『蝋筆小新』を商標登録してしまったのです。

商標登録は基本的には早い者勝ちの世界であり、先に名前を登録した企業が優先されます。それはネット上のドメイン名のようなものです。例えばオールアバウトが将来中国進出を考えるならば、「allabout.com.cn」という中国のドメインは極力早くとってしまうのが望ましいのです(注:実際にはオールアバウトはallabout.com.cnドメインを取得していません)。ここで中国人の誰かが先にドメインを取得しても、文句を言うことはできません。

1995年にすでに『クレヨンしんちゃん』の中国名を『蝋筆小新』に決定していた以上、その場で中国本土でも商標登録をしておくのが良かったのではないでしょうか?「商標登録は早い者勝ち」の原則を考えれば、何もしないでいると他の中国企業が商標を取ってしまうことは想像できたと思います。

→そして現在では、商標を国際的に保護する規定も存在しています。
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