【参議院は「あってもなくても同じ」なのか?】
法律案は衆議院・参議院両方で審議をし、半数以上の議員が賛成して可決されないと法律として成立することはできません。
しかし、憲法では【国民の意見を反映させやすい】衆議院に重きをおいているのか、衆議院での決定の方が参議院での決定よりも価値があるように設定しています。
たとえば衆議院で可決した法律案を参議院が否決したり、あるいは参議院でいつまでたっても審議が終わらない場合、いったいどうなるのかというと、そんなとき衆議院が一方的に「再可決」をしてしまえば(ただし3分の2以上の出席議員の賛成が必要)、参議院を無視して法律を成立させることができるようになっています。
さらに予算案や条約承認、首相指名などのばあいは再可決なしで衆議院の決定をそのまま国会の決定としてしまうことができるようになっています。
衆議院で予算案が可決されただけなのに新聞で「予算案成立確定」という見出しが出たり、参議院での首相指名選挙があまり注目されないのは、そんな制度のためなのです。
また内閣不信任決議(これが可決されたら内閣は10日以内に衆議院を解散するか、総辞職しなければならない)は、衆議院しか審議することができません。
このように、衆議院の権限は参議院よりも大きくなっています。このことを難しい言葉で衆議院の優越といいます。
ここまで話をすると、「じゃあ参議院いらないんじゃないの?」と考える人もいるでしょう。たしかに、衆議院の決定がこんなに優先されるのなら、参議院でいくら慎重な議論ができるからって、時間のムダなような気もします。
しかし・・・たしかに予算や首相指名などのような場合はともかく、普通の法律案の場合、衆議院の再可決には「出席議員の3分の2以上」の賛成が必要。衆議院議員が全員出席したとして、その3分の2は320人。自民党が選挙で大勝したときでもこんなに所属議員はいませんでした。
そう、再可決って、そうそうやることができない。けっこう高いハードルなのです。
1994年、当時の連立与党(細川政権)がその運命をかけて提出した衆議院選挙改革案が衆議院では可決されたものの、参議院で否決され、両議院の協議の結果、参議院がわの主張にそって修正された案で妥協が行われたことがありました。衆議院では再可決を行うことができなかったためです。