近年は都市部において「建築条件付売地」が目立つようになっています。交渉次第ではこの「建築条件」を外すことのできるケースもあるのですが……。
(神奈川県横浜市青葉区 匿名 40代 男性)
さまざまなパターンについて解説するとキリがありませんので、ここでは一般的に多いケースで考えてみることにしましょう。
都市部では単純な土地売買よりも、建築条件付のほうが多い?
このとき、土地の売主業者と建築工事の請負業者が別会社なら、それぞれに利益を見込んで価格設定がされるのですが、たいていは同一会社(実際の建築工事は売主の下請け業者が施工するケースも含む)であり、土地の売却と建築の両方を合わせた採算計画が練られます。
たとえば事業によるトータルの粗利益見込みが600万円だと仮定しましょう。この場合に、土地の売却利益が300万円で建築工事による利益も300万円とするか、土地の売却利益はゼロで建築工事による利益を600万円とするのかはその業者次第です。
もちろん実際にはもっと細かな按分計算がされるわけですが、極端にいえば土地がマイナス400万円で建築工事がプラス1,000万円ということだってあり得るわけです。
「建築条件付売地」として広告に記載された土地価格は、必ずしもその土地の相場価格を示しているわけではなく、また「土地だけの売却でもその価格でOK」という意味でもありません。
そのため、あくまでも建築工事請負契約を結ぶことを前提とした “参考価格” だと考えたほうがよいでしょう。
それよりもむしろ購入希望者をひきつけやすいように、周辺の相場よりも低めの土地価格が設定されているケースのほうが多いのではないでしょうか。
したがって、建築条件をそのまま受け入れる場合でも、単に土地価格が安いからといった理由で決めるのではなく、土地価格と建物価格の合計額を十分に吟味しなければなりません。
それでは、建築条件を外す代わりに土地価格の増額を求められた場合にはどうでしょうか。
土地の売却と建物の建築でトータルの利益を見込んでいた業者にとって、建築条件を外して土地だけの売却に切り替えることは容易ではありません。なかなか売れそうにない土地なら話は別ですが、何らかの “見返り” がなければ簡単には承諾できないケースが大半でしょう。
その “見返り” に相当するものが土地売買価格の増額だとして考えれば、決して不当な要求だとはいえません。
ところが、上で説明したように建築条件付売地の場合における土地価格(広告などに表示された価格)は必ずしも周辺相場を反映したものではなく、売主業者による意図的な要素を多分に含んでいます。周辺相場に対する表示価格の水準も物件によってだいぶまちまちでしょう。
たとえば、建築条件を外してもらう代わりに売買価格の2割アップが求められたとしても、それでもなお周辺相場より安値感のあるような土地もあれば、逆に1割アップですら高すぎるような土地もあります。
そのため、「何割増しが妥当か」あるいは「何百万円の上乗せが妥当か」などといった観点で考えてもあまり意味はないでしょう。このようなときは広告などに表示された当初の価格をいったん忘れ、「増額後の価格そのものが周辺相場と比べてどうか」を十分に検討するべきです。
また、建築条件を外してもらうときには必ず土地価格が増額されるというわけでもありません。建売住宅などで売れ行きが悪ければ値引きされることがあるのと同様に、土地価格はそのままで建築条件を外してもらえることもあるのです。
ただし、それとは逆に買主側からどんなに増額を申し出ても、建築条件をなかなか外してもらえないこともあります。
売主がどのように対応するかは物件によっても異なりますから、自ら選んだ住宅メーカーなどに建築を頼みたい場合でも、「建築条件付の土地はダメ」とばかりに当初から除外することなく、媒介業者を通じて打診してもらうことも考えたほうがよいでしょう。
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