ジャングルとマヤのピラミッド群ティカル
サルや野鳥の鳴き声が響き渡るジャングルを分け入ると、突然姿を現すマヤのピラミッド群。熱帯雨林に覆われた遺跡は数あれど、ティカルほど高いレベルでジャングルと遺跡が一体化した遺跡は他にない。その神秘ゆえにティカルは『スター・ウォーズ エピソードIV 新たなる希望』のロケ現場になり、また、東京ディズニーシーのロストリバーデルタ内にある「クリスタルスカルの魔宮」のモデルではないかとも噂されている。今回はこのマヤ遺跡唯一の複合遺産「ティカル国立公園」を紹介しよう。
メソ・アメリカにおけるマヤ文明の誕生
均整のとれた威容を誇るティカルのII号神殿、別名「仮面神殿」。高さ38m、700年前後の建築 ©牧哲雄
II号神殿の斜面。II号神殿はI~V号神殿の中でもっとも小さいとはいえ、こうしてみるといかに巨大で急斜面かわかる
耕作によって人口が増加して、首長による統治がはじまった。天候に左右される農耕の無事を祈るために宗教が強化され、同時に自然から周期を見出して天文学や数学といった科学も発達し、文字が誕生した。こうして紀元前1,500年以降、メソ・アメリカの各地で古代都市が繁栄することになる。
紀元前500前後以降、ユカタン半島の熱帯雨林地帯にも巨大な都市が興りはじめた。人口増加によってより広い土地を求めたためジャングルに進出したなどといわれているが、真相はよくわからない。ただ、熱帯雨林を焼き払って耕作し、貯水池(セノーテ)などの灌漑技術を発達させてジャングルでの生活に適応していってようだ。