お彼岸の「ぼたもち」と「おはぎ」、なぜ食べる? その違いは?
お彼岸といえば、お供えものの定番「ぼたもち」や「おはぎ」が食べたくなります。いずれも、もち米とうるち米を混ぜて炊き、適度につぶして丸めたものを小豆あんで包んだ和菓子ですが、一体どこが違うのでしょう? そもそも、なぜお彼岸に「ぼたもち」や「おはぎ」を食べるの?お彼岸に「ぼたもち」や「おはぎ」を食べる理由
「ぼたもち」と「おはぎ」は基本的には同じで、季節によって呼び名や作り方が変わります。通称は「ぼたもち」です。おもちは五穀豊穣、小豆は魔除けに通じることもあり、日本の行事に欠かせないもの。また、今と違って昔は甘いものが貴重だったため、「ぼたもち」といえばご馳走で、大切なお客様、お祝い、寄り合いなどで振舞われ、法要の際にも必ずお供えしていました。お彼岸にお馴染みなのもそのためです。「棚からぼたもち」(苦労せずして思いがけない幸運がめぐってくることをのたとえ)と言うように幸運の象徴にされていることからも、いかに人々の暮らしに根付き、愛されていたかがわかりますね。
さらに、小さなぼたもちにさえ風情を盛り込むのが日本人のすごいところ! ぼたもちは四季折々こんな風に変化します。
春は「牡丹餅」、秋は「御萩」……季節によって呼び名や作り方が違う
まず、春彼岸と秋彼岸にあわせて、このように変わります。 ■呼び名春に咲く牡丹の花にちなみ、春は「ぼたもち」といい、「牡丹餅」と書きます。秋は萩の花にちなんで「おはぎ」といい、「御萩」と書きます。
■作り方:形の違い
牡丹は大きくて丸い花、萩は小さくてやや細長い花。そこで、「ぼたもち」は大きめで丸い形に、「おはぎ」は小ぶりで俵の形に作ります。
■作り方:あんの違い
材料となる小豆は秋に収穫されます。とれたての小豆が使える秋は、皮ごと使った粒あんに、冬を越した春は、かたくなった皮を取ってこしあんにして使っていました。だから、「ぼたもち」はこしあん、「おはぎ」は粒あんを使って作ります。
現在は、こうした違いにこだわらないものが多くなりましたが、本来は春と秋で区別していたわけです。また、小豆あんをぼたもち、きな粉をまぶしたものをおはぎと呼んだり、米粒が残らない餅状につぶしたもの(俗称:皆殺し)をぼたもち、米粒が残ったもの(俗称:半殺し)をおはぎと呼ぶなど、地方によっても様々です。
ぼたもちとおはぎの呼び名、夏は「夜船」冬は「北窓」
さらに、夏と冬にも呼び名があります。ぼたもちは、杵を使って本格的な餅つきをする必要がなく静かに作れることから、こんな言葉遊びをしました。■夏の呼び名
(餅なのに)いつついたのか分からない
→(夜の闇で)いつ着いたのか分からない
→「夜船」
■冬の呼び名
(餅つきをしなくてもいいので)つきを知らない
→(北向きでは月が見られないため)月を知らない
→「北窓」
「牡丹餅」「夜船」「御萩」「北窓」と春夏秋冬の呼び名があるとは、実に洒落ていますね。お彼岸はもちろんのこと、さまざまなシーンでぜひ味わってみてください。