自分を意識させる酒
ウイスキーをたかが酒、バーをたかが酒場と言い放ったとしたら怒る人も多かろう。でも私はそう思っている。ただ、されど、があるからなかなか魅力的なのだ。
ウイスキー。ちゃんとしたつくりであればブランドは何であれ私は飲むし、愉しい。それが自分の好みの味わいならばなおさらいい心地になれる。
他の酒にはない、樽で深く熟成したこの酒のよさは、誰と飲もうが、酒場で飲もうが、自宅で飲もうが、自分というものをしっかり意識させてくれる。自分を見つめ直す時を与えてくれる酒だ。
ウイスキーの懐は深い。誰とどこで飲もうと、自分をしっかりと意識させてくれる。 |
とりあえず感覚のビールとは違う。ワインは相手や料理が傍にいて欲しくなる。日本酒は座敷で長っ尻のベタッとした感覚がある。銀座のあるクラブのママが「惚れ合ったふたりが温泉宿で、互いにいける口なのに注しつ注されつ、お銚子たった1本で酔っちゃうのがほんとうの酒よ」と言ったが、そんな経験をしたことがないから私にはわからん。それに私の場合、1本じゃ満足できない。
同じ蒸溜酒の仲間、焼酎はというと。やはりね、樽で熟成したウイスキーの芳香と味わいの深みに比べると、グイッとハートの芯を染め上げる感覚が弱い。
さあ、ウイスキーの森へ行こう
ウイスキーは長期樽熟成させるから、樽材由来の成分が溶け込んでいる。それが森林浴と同様のリラックス効果をもたらす。だからね、夜ね、少しでもウイスキーを飲むといいんだ。ウイスキーの森へ行ってみなさい。過去、現在、未来、いろんな時に想いを馳せる。そのうちに自分をはっきりと意識する。
煩雑な一日の終わりにウイスキーを嘗める。疲れた自分のご褒美に森へ行く。するとね、なんだかんだあったとしても自分が愛おしくなる。自己愛ってやつだ。
でもこれってワガママじゃない。自分が愛しければ、人にも優しくなれるし、人を愛することもできる。自分を愛さずして、人に愛される訳がない。
ウイスキーはそれを教えてくれる。
で、どんなウイスキーを飲んだらいいか。これは「初心者にすすめる一瓶」の記事を読んでいただきたい。
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