歌舞伎/歌舞伎関連情報

花魁はなぜ心変わりを?『籠釣瓶』 その2(2ページ目)

惚れる男、恥をかかされる男、恥をかかせた女、殺される女・・・この一つの事件を描いた演目の現代性にも驚いた。また、歌舞伎の女形の役の中でも大役中の大役、吉原の傾城・八ツ橋に注目。

執筆者:五十川 晶子

だが高嶺の花とはいえ、吉原では女は売物買物。次郎左衛門はお大尽といわれるほど、金を積んで何度も通い、ついには身請けにまで関係は発展した。あばた面でも、お大尽。
それに江戸のすれっからしの客とちがって誠実で行儀もよかったらしい。八ツ橋らを抱える兵庫屋でも評判は上々。誰もが口を極めてほめている。特に傾城の九重は、「次郎左衛門に惚れてるの?」とでもいいたいくらい、次郎左衛門に同情的だ。

だけど花魁にはたいてい間夫がいる。たとえば『助六由縁江戸桜』では揚巻の間夫は助六。「間夫がいなけりゃこの世は闇」とまで揚巻は花魁の本音を語っている。華やかだが実は「苦界」と呼ばれる遊女の世界。生きていくには、金勘定とは別に、ときどき会いにきてくれる心の恋人が必要だったりするのだろう。

中には花魁の純情にたかるただのヒモ、という例も少なくないようだ。ここにでてくる栄之丞というのもその一人で優男っぽい色男。この人自身は、八ツ橋のヒモというだけで、そんなに悪どい人間じゃない。だまされ易い栄之丞をカモにした権八のほうが性悪だ。
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