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挨拶で思いやりの気持ちを育む(3ページ目)

「きちんと挨拶できる子に」と、キリキリすることはありませんが、小さなうちから習慣として身に付けてしまえば、大きくなっても自然にできるように。まずは親が見本になりましょう!

河崎 環

執筆者:河崎 環

子育てガイド

思いやりの気持ちを育む

『暮らしうるおう 江戸しぐさ』の中では、子どものうちに習得するとされていた「稚児しぐさ」の中から「肩引き」「傘かしげ」が紹介されています。

「肩引き」とは、人ごみや狭い道でひととすれ違うときに相手にぶつかったり相手の行く手をさえぎったりしないよう、肩を引いて互いの胸と胸を合わせるように体を斜めにして通ること。「傘かしげ」とは、雨の日に傘の露が相手にかからぬよう傘を相手とは反対の方に傾けてすれ違った方法だそうです。

幼いうちからこのようなマナーがきちんと身についていた子どもは、きっと心から「すみません」という言葉を言うことができたでしょう。「ごめんなさい」「ありがとう」「すみません」などの言葉は相手を思いやり、尊重する心から自然と発せられるもの。

以前、子育ての相談で「子どもが『ごめんなさい』と言わないのをどうしたらいいか」という質問を受けたことがありますが、形ばかりの「ごめんなさい」を言わせることよりも、本人が本当に相手に申し訳ないと思う気持ちを育ててあげて下さいとお答えした記憶があります。

すれ違った相手と肩がぶつかっても、電車内で人の足を踏んでも無言の現代人は相手の感情に思いが至らないほどに忙しすぎるのかも。人を尊重することで自分も尊重されるようになるのだということを、江戸の子どもたちは知っていたようです。

全ての基本は、会釈にあり

どんな場面のどんな挨拶も、ただ突っ立っているだけではその気持ちは相手に伝わりません。やはり基本は、「笑顔プラス会釈」です。

そもそも、会釈という行為は多くの文化に共通するふるまいなのだとか。相手よりも視線を下げ、後頭部を見せることによって「私はあなたを攻撃しませんよ」と示すボディランゲージなのだそうです。

大人は自分なりの会釈を感覚でつかんでいますが、子どもはどこまで頭を下げていいか、始めは分からないものだそうです。1.5メートル先を見るつもりで、なんていう新卒社会人の研修みたいな教え方もありますが、子どもには

「自分のつま先が見えるくらいの『ペコリ』でいいのよ」
「おへそをちょっと後ろに引くようにすると上手にできるわよ」
「(女の子の場合)きちんとご挨拶する時は、手を腿の前で重ねると丁寧よ」

などと、簡単に教えてあげれば充分かと思います。

怖い事件も多発し、プライバシー意識がより一層強くなった今、都会ではなかなか近所でのご挨拶もままならぬことが多いようです。しかし、核家庭で閉鎖的に育てるのではなく、子どもを地域ぐるみで育てることで豊かな人間性が育まれ、いざという時に守ってもらうこともできます。江戸の世は老若男女取り混ぜて、地域で仲良く暮らす知恵が豊かだった時代。ぜひ、お子さんにも明るくはっきりした声で笑顔でひとに挨拶できるよう、教えてあげてくださいね。



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