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ツバメノートの魅力とは? コンランも認めたフールス紙へのこだわり

あのコンランショップも認めた大学ノートの専門メーカー、ツバメノート。その歴史がいつから始まったのかや、万年筆の書き味が抜群のフールス紙への飽くなきこだわりなど、ツバメノートの知られざる魅力をご紹介していきます。あなたもきっと気に入るはずですよ。

土橋 正

執筆者:土橋 正

ステーショナリーガイド

ツバメノート 大学ノート

      ツバメノート 大学ノート

おそらく誰もが一度は使ったことのあると思う大学ノート。毛が織り込まれたグレーの落ち着いた表紙。とても懐かしさを誘うノートだ。この大学ノートを古くから専門に作っているメーカーの1つにツバメノートがある。

ノートづくりのあくなきこだわりが、つい先ごろかのコンランショップのバイヤーの目にとまり、取り扱いが決まったという。パリ、ロンドン、ニューヨークといった海外のショップで販売されるという。

そんな本国のコンランも認めるツバメノートの魅力やこだわりを、浅草にあるツバメノート本社にお訪ねして、色々とお聞かせいただいた。
ツバメノート
昔からほとんど変わっていないデザイン
長い年月を経てきたものにしかい表せない重みがある
   

ツバメノートの社名の由来……意外なきっかけから誕生

ツバメノートの前身、渡邉初三郎商店は昭和11年に創業した。当初は文具卸として事業をスタートさせたのだが、もはやこれからは卸の時代ではない、オリジナルの商品を作っていかなければと考えていたという。そこで、せっかく作るのなら多くの人に使ってもらえるものがいいだろうということで、ノートを作ることにした。創業から10年後の昭和21年にノートメーカーとして再スタートを切ったのだった。
ツバメノート
トレードマークは朝日の中を飛んでいるツバメ
品番に使われている『W』と『H』は創業者渡邉初三郎のイニシャル
ノートを作り始めるも、社名はまだ渡邉初三郎商店だった。現在の社名であるツバメノートに変わるのには、あるユニークなことがきっかけになった。当時、社員に燕(つばめ)さんという名前の営業担当の社員がいた。その方がお客様から大変慕われていて、よくお客さんから「燕さん」「燕さんのノート」と親しみを込めて呼ばれていた。それを知った当時の社長が、そんなにお客様に親しまれているのならと、社名をツバメノートにしようと決めたそうだ。創業者の名前を社名にするというのは、よく聞く話だが、社員の名前が社名になったというのは、これはかなり珍しいケースだと思う。
 

筆記特性に優れたフールス紙

ツバメノート
ツルツルしすぎることなく、程よい質感がある
ツバメノートの最大の特徴は、使われている紙がフールス紙ということだ。フールス紙と言っても一般にはあまり馴染みがないかもしれない。そもそもフールス紙とは印刷のためではなく、あくまでも書くために作られた大変品質の高い紙だ。一般によいとされている上質紙よりもひと工程多く、丁寧に漉いて作られている。紙を透かしてみると、すのめ模様と呼ばれる紙の繊維が織り成す縞模様があることも特徴の1つ。

ツバメノートではこの高品質フールス紙をさらに特漉きして、より筆記特性に優れたオリジナルの紙を完成させた。これが、ツバメフールス紙だ。オリジナルである証しに、一枚一枚のノートにはツバメのロゴマークの透かしが入れられていた。誠に残念ながら、その透かしを入れる機械が修復不可能となり、現行のノートにはツバメの透かしはない。
ツバメノート
当時のノートにはツバメのトレードマークの透かしが入っていた
特漉きされただけあって、このツバメフールス紙は大変書き味に優れている。特に万年筆の書き味がとてもいい。ペン先が適度な滑らかさでもってスムースに紙の上を走っていく。インクのにじみは見られず、書いているそばから気持ちよくインクをスゥッと吸い込んでいく。かと言って、必要以上に吸い込むという訳ではない。紙の裏面を見てみると、インクがうつりこむということはなかった。両面筆記をするノートとして、十分に考えられた造りこみになっているのだ。
ツバメノート
インクのにじみがなく、万年筆の書き味がとてもいい
昨今の環境面の配慮ということから、ツバメノートにおいても再生紙を混ぜたフールス紙というものも用意されている。もちろん100%バージンのフールス紙も健在だ。実際にその両者を書き比べてみたのだが、あくまでも私の個人的な印象だが、バージンパルプの方が心なしか滑らかな書き心地のように感じられた。ちなみに再生紙入りか、バージンパルプのノートかを見分ける方法は、ノートの裏面を見ればOK。再生紙入りのものは、グリーンマークR50といったマークがついている。
ツバメノート ツバメノート
保存性に優れた中性紙を使用
好みで選べる
バージンパルプと再生紙
15年くらい前からは、このフールス紙に中性紙が使われるようになった。以前は、ノートというと酸性の紙が多く使われていたという。酸性の弱点は、月日とともに酸化してしまうこと。つまり保存性が悪かった。その点、この中性紙は大変保存性が高く、ツバメノートの表紙裏にある説明書きによれば、なんと一万年以上も保存が効くそうだ。書いた本人が到底確認することは出来ないが、自分の書いた文字が自分よりも永く残ってくれると言うのはとても書きがいのあることだ。
 

罫線の一本一本にもこだわりが

ツバメノート
手間をかけた罫引きによる罫線
ノートに引かれている罫線にも大変深いこだわりが隠されている。この罫線は通称『罫引き』と言われるもので、製本される前の紙に何本のペンがついた機械でザーと線を引いて作られている。今ではこの罫引きができる会社も東京で1~2社くらいしかないそうだ。

現在のほとんどのノートの罫線はオフセット印刷によって作られている。罫引きとオフセット印刷を見分けるには、ノートの紙面の端っこを見ればいい。罫引きの場合は、紙の端っこまでしっかりと罫線が引かれている。オフセットの場合は、線が紙の端まで来ていない。

ツバメでは、この罫引きの線をあえて水性インクにしている。これは、万年筆などの水性インクで書いても罫線の上でインクをはじかないようにするためなのだ。確かに、たまに罫線に自分の書いた文字がはじかれてしまうことがある。ツバメの書き味へのこだわりはこんな細かなところまで徹底されている。
 

ちょっとユニークなノート

ツバメノートでは大学ノート以外にも様々なノートを作っている。中でもとってもユニークなのが、この『B4ノート』。一般的なノートの大きさはB5サイズ、もう少し大きくてA4サイズがいいところだろう。更にその上を行くのがこのB4ノートだ。表紙は、大学ノート風ではなく、さわやかなブルー。
ツバメノート
とても大きなB4ノート 960円
ツバメノート ツバメノート
ひろげると、机一面がノートになってしまうほどの大きさ
携帯するときは、
無造作に丸めて持つ
実はこれ、航海用のノートとして作られたもの。船長や機関士などが航路などを決める時に使うのだという。渡邉専務によると、このB4ノートを広告代理店やクリエイターの方々が好んで使っているそうだ。企画案やイラストなどを練るのに、この広々としたノートがきっと創造力を豊かにしてくれるのだろう。そうした人たちは、このノートぐるぐると無造作に巻いて持ち歩くのだと言う。なかなか格好よいスタイルだ。

また、渡邉専務がもう1つ面白いものがある、といって見せていただいたのが、アニエス・ベーのサイン入りのノート。このサインは印刷されたもの。もうかれこれ20年くらい前に依頼があり限定製作したものだそうだ。コンラン以前にもツバメは海外からすでに注目されていたのだ。
ツバメノート
アニエス・ベーのサイン入りのノート
(現在は販売されていない)
ノートの本質的な価値である紙質にとことんこだわったツバメノート。ノートはビジネスの場でもおそらく一番使う紙製品だと思う。日々使うものだからこそ、いい書き味を楽しみたいものだ。あなたのお気に入りのペンもきっと喜んでくれることだろう。
ツバメノート
日本が世界に誇れるツバメノート 大学ノート

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