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やっぱり気楽に履きたいローファー その2

今回の「メンズシューズ基礎徹底講座」も前回に引き続きローファーを採り上げます。サドルの違いをまず見た上で、アメリカ的印象の強いこの靴が、イギリスやフランス的解釈ではどう変化するかも考えます。

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サドルの形も様々!

 ハーフサドル
ローファーのサドルの形状では一番ポピュラーな「ハーフサドル」。一番シンプルな形状ですが、だからこそ一番お馴染みなのでしょう。


前回はスリッポンの代表例であるローファーの、特にアメリカンスタイルのものを見てまいりました。底付けの方法やライニングの有無で、案外表情が変化してしまう靴なのだということをご理解いただけたかと思います。さてその「表情」なんですが、ローファーでこれを決定付けるパーツが、もう一つあるのです。

それは「サドル」。これの形次第で靴の印象がガラッと変化します。もっとも一般的なのが、上の写真のようにトップラインとつま先のモカシン縫いの間で、サドルの端がシンプルにかぶせ縫いされている「ハーフサドル」と呼ばれるものです。平凡といえばそれまでかもしれませんが、飽きの来ないスッキリとした表情は、世代に関わりなく親しめるものでしょう。因みに前回と今回で具体的にご紹介したローファーも、全てこの「ハーフサドル」仕様です。

サドルの端がソールまでたどり着いてしまい、靴の上部をすっぽり覆う長めのものは「フルサドル」と呼ばれます。この仕様だと「ハーフサドル」に比べやや美麗な印象となるので、ある程度年齢がいった人のほうが似合うローファーになるようです。まあ、ラルフ・ローレンなんかはこれで敢えてアンラインド・マッケイ製法のものを出してくることが昔から度々あって、その絶妙な匙加減にいつも感動してしまうのですが。

一方トップラインとつま先のモカシン縫いの間で、サドルの端が糸で縛りあげられているように処理されているものを、「ビーフロール」と呼びます。確かに牛肉のオーブン焼きみたいな形状で言いえて妙ですが、こちらはどちらかと言えば、「ハーフサドル」以上に若々しさが強調されますね。日本を代表するこのローファーも、登場以来このディテールを守り通していますし、「ローファーはこうじゃなくっちゃ!」という根強いファンが多いディテールです。

 フルサドル
サドルの端がソールまで伸びた「フルサドル」。ちょっと上品で大人っぽい感じの印象になります。


 ビーフロール
こちらはサドルの端が糸で縛りあげられている「ビーフロール」。タコ糸をぐるぐる巻きにしてオーブンで焼いた牛肉の塊、確かに想像できますよね!




次のページはイギリスとフランスのローファーをご紹介! アメリカのローファーとの違いは、はてさて何だろう? 

最初は室内履き? イングリッシュローファー

チャーチのローファー
かつてのチャーチの隠れたベストセラーだったソールズベリーというモデルです。アメリカのローファーに比べドレッシーな面持ちなのは一目瞭然。これを使いこなせれば、相当の洒落者です。


ローファーが大西洋を越えイギリスに入ると、アメリカのものに比べつま先の造形が明らかにシャープになってまいります。またサドルの位置がより足首寄りとなり、甲を覆い隠すヴァンプも長めに設定される傾向も顕著になります。あくまでカジュアルシューズの範疇ではありますが、優雅な雰囲気に変化するのです。だからでしょうか、前のページでとりあげた「フルサドル」仕様も多く見られます。

そもそも今日のローファーの原型は1920年代、ロンドンの今は亡き誂え靴店の老舗・ワイルドスミスが生み出したと言われています。どうも当初は、上流階級向けの室内履きとして提案されたらしい…… ところがどう足を踏み間違えたのか、それは次第にモードなカジュアルシューズへと意味合いが変化し、当時イギリスに留学していたアメリカ人大学生に持ち帰られた後、前回ご紹介したようなアメリカンなローファーにリファインされたようです。だから、上の「アメリカ→イギリス」的な書き方は、本当は向きが逆!

歴史的背景はそんな感じなのですが、正直このスタイルの靴は、今日の感覚だと履く場を選ぶのが結構難しい気もします。ビジネスにはやはり軽い印象を与え過ぎてしまうし、逆にカジュアルと割り切っても、どうも肩に力が入っているような感じがしないでもないのです。ただ、この靴のある種中途半端な感覚を逆手に取って積極的に活用していたのが、かのチャールズ皇太子でしょう。

このイングリッシュローファーやタッセルスリッポンなどを、彼が敢えてダブルブレストのスーツと合わせていたのを一時期の報道写真等で暫しご覧になられた方、結構多いと思います。これは周囲の方々に過度な緊張感を与えないための、彼なりの確信犯的ユーモアと言えそうです。我々一般人に無難なのは、ウェストの絞りが効いた無地のカシミアジャケットを、普通のネクタイではなくアスコットタイと合わせて休日にちょっとお出かけ、みたいな感じがせいぜいかな?


フレンチローファーの名作は、「色」を楽しみたい!

ウエストンのローファー
こちらもちょっと価格は張りますが、靴好きならば一度は必ず憧れる、J.M.ウエストンのローファーです。ちょっと見にくいのですがこの靴は紺色。通常の黒・茶もいいですが、このローファーはこうした「色物」がまた格別!


ローファーがさらにドーバー海峡を渡りフランスに入ると、また一味違った風貌に変化いたします。代表例がこのJ.M.ウエストンのもので、グッドイヤー・ウェルテッド製法で踵にも芯が入り甲をサドルでがっちり押さえこむ手堅い構造は、快適に感じるまである程度の履き慣らしが正直必要。なのにオールデンのローファーに比べ表情は不思議と軽快で、ドレスとカジュアルとの「隙間感」が、高次元かつ繊細に表現されています。

普通の黒や茶色ももちろんありますが、この靴には紺や深緑が定番で存在してしまうのが、さすがフランス人の色彩感覚のなせる業なのですな。一見コーディネートしづらいと思われがちなこれらの色は、確かにビジネス向きではありませんが、オフタイム用と割り切って考えると意外や意外、様々な装いに素直に対応してくれるのです。クロコダイルやリザードなどいわゆる「エキゾチックレザー」が全く厭味なく映えてしまうのも、このローファーの隠れた魅力。履く場があるのかと問われてしまうと正直???なのですが、クロコローファー、いつかは欲しいなぁ……

圧巻だったのは1990年代半ばにあった、フランスのデザイナーであるジャン・シャルル・ド・カステルバジャックとのコラボレーションモデルでしょう。真っ赤や真っ青それにビタミンカラーの黄緑やイエローのもの、さらにはアッパーのパーツごとにそれらの色を変えたローファーが存在していたのです! フォルムがド定番だからこそこの「色」で斬新さが強烈に印象づけられ、上記の紺や深緑のモデルですら目立たなく感じたほどでした。今でも単色のものについては、パターンオーダーにて製造可能なはずです。


最後のページはローファーのコーディネート面での注意点について!

「怠け者」だからこそ、清潔さは維持したい!

ローファーのコーディネート
カジュアルウェアなら似合わないものがほとんどないローファーですが、だからこそいい加減な装いは禁物。ゴテゴテした色使いを避けるなど、清潔感を前面に出して履いていただきたい!


色々と細かくスタイルを見てまいりましたが、基本的にはカジュアルシューズなのだということは、まず是非とも頭に入れておいてください。だからこれを履いてドレスアップしたい場合でも、無難に収まるのはジャケット&トラウザーズでの装いまで。前のページに書いたチャールズ皇太子みたいな見事な掟破りもありますが、男性のダークスーツ姿には合わせないほうが宜しいでしょう。足元だけでなく、装い全体が幼く見えてしまうからです。

一方「怠け者」の意味があるローファーを、文字通り惰性だけで合わせてしまうのも、あまりにもったいない! ボタンダウンシャツ、デニム、チノーズ、丸首やVネックのニット、夏ならショーツやポロシャツ、冬ならダッフルコート…… 確かにカジュアルな服には何でも合わせられる気楽な靴ではありますが、その分清潔感を十二分に伴った装いを意識したいところです。ローファーはその合わせ方で、履き手の「カジュアル」に対する意識や経歴が如実に出てしまう、リトマス試験紙みたいな存在なのです。

「と言われてもねぇ、いきなりは難しいよなぁ……」とおっしゃる方、まずは靴と例えばシャツとか、着る服のどれか一点とを色合わせするところから始めてみて下さい。この簡単な法則が解りだすと、ローファーはいくつになっても楽しく履ける靴になりますよ。ある程度年齢を重ねた男性が、この靴を休日にギラつかせず過去形的にでもなく、文字通り颯爽と合わせて履いている光景を日本でももっと見たいものです。

そうそう、小生の記事を読んでくれる方にはいないかとは思いますが、例えば足の怪我などでそうせざるを得ない場合はともかく、ローファーの踵を潰して履くのは止めていただきたい。日本ではよく高校生がやっていますが、あれは若さゆえに大目に見てくれること。マナー面でだらしないのはもとより、靴の寿命も大幅に縮んでしまいますし、何より先ず「自分は足に合った靴を選ぶ意思がありません」と、周囲に間違ったメッセージを送りかねないからです。最近では初めから踵を潰せる構造のローファーも出てきていますから、どうしてもそうしたい人はそういうものを選んでくださいね!



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更新日:2008年02月14日

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