学費・教育費/学費・教育費の平均データ

生涯賃金で高卒・大卒の逆転も!? 学歴よりもキャリアプランありきの時代

生涯賃金で見ると、重要なのは勤める会社の規模。データで見た場合ですが、高卒でも安定感ある大企業に勤めることができれば、大卒で中小企業などに入るよりも生涯賃金が高くなる逆転現象も起こりえます。

豊田 眞弓

執筆者:豊田 眞弓

教育費 ・ 奨学金ガイド

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生涯賃金と学歴の関係性は?

生涯賃金で重要な要素は、学歴よりも就職先の企業がどのような規模の企業かということになりそうです。つまり出口戦略です。
学歴

学歴は高いほど給与が上がるとはいえない?

ただし、労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2021」(2022年2月現在・最新調査結果)を見ると、2019年の時点で、入社した企業で定年まで勤め続ける「標準労働者」の場合、学歴が高くなるにつれ生涯賃金も高くなっています。

学歴が高いほど就業年数は短くなりますが、賃金水準はむしろ高い分、結果として高学歴ほど生涯賃金が高くなります。

■2019年の生涯賃金
<男性>
高卒……2億5550万円(42年間)
大卒・大学院卒……2億8780万円(38年間)
--------------------------------
大卒のほうが+3230万円

<女性>
高卒……1億8850万円(42年間)
大卒・大学院卒……2億4030万円(38年間)
--------------------------------
大卒のほうが+5180万円


高卒と大卒の生涯賃金の差は、男性で3230万円、女性で5180万円もあります。言い換えれば、これが「学歴」を数値換算した価値に近い金額ともいえます。
 

学費のかけ方で高卒と大卒の生涯賃金差が縮小

高卒と大卒の生涯賃金の差は、前述の通り、男性で3230万円、女性で5180万円あるため、学費のかけ方によっては生涯賃金の差が縮小することはあっても、逆転まではないのではないでしょうか。

受験準備から大学卒業までの学費は、「大学4年間でかかる学費・生活費はいくら?」にあるように、私立理系・自宅外で約1200万円、国立・自宅で約500万円かかります。受験だけでなく、塾などにかけてきた費用を累計すると、大卒と高卒の生涯賃金の差はさらに縮小することでしょう。しかし、よほどでない限りは、学費による逆転まではないといえそうです。
 

大企業に勤めれば高卒でも大卒を超える?

ただし、就職した企業の規模によっては、逆転はありえます。

企業の規模との関係で見た場合、規模が大きくなるほど生涯賃金も高くなり、規模が小さい企業ほど逆に生涯賃金は低くなります。

<男性の場合>
「ユースフル労働統計2021」のデータでは、男性の場合、大卒で企業規模1000人以上の大企業では3億1480万円なのに対し、企業規模100~999人では2億6090万円、企業規模10~99人では2億2540万円となり、大きな差となっています(同一企業型、以下同)。

一方、高卒で企業規模1000人以上の大企業に就職できた場合は2億8120万円、企業規模100~999人では2億3890万円、10~99人では2億1050万円となっています。

この数字を見てもわかりますが、高卒で企業規模1000人以上の大企業に就職した場合の生涯賃金は2億8060万円なのに対し、大卒であっても、100~999人規模の企業に就職した場合は2億6090万円、10~99人規模の場合は約2億2540万円と、いずれも高卒で大企業に就職したケースを下回ります。

<女性の場合>
女性の場合は、1000人以上の大企業で高卒で働く際の生涯賃金は2億860万円です。女性が大卒で100~999人の規模の企業に勤めた際、生涯賃金は2億2450万円と、高卒を下回ることはありませんが、大卒で10~99人の規模の会社に就職すると生涯賃金は1億9950万円となります。つまり、女性が大卒で小規模な会社に就職した場合は、高卒で大企業に就職した生涯年収を下回るということです(余談ですが、男女の給与格差に愕然とします!)。

あくまでも過去のデータで見た場合の傾向ですが、やはり現状では、大企業に勤めるのが最も生涯賃金が高くなりそうです。もちろん、ベンチャー企業などが大化けをして急成長する場合もあるでしょうから、「絶対」はないですが。

教育投資の出口戦略として、「就職先」は重要なカギを握っているといえそうです。

コロナ禍の影響もあり、大卒でも11%が不安定雇用

文部科学省「学校基本調査/令和3年度 高等教育機関《報告書掲載集計》卒業後の状況調査」(2022年1月現在最新調査結果)によると、2021年5月1日時点で、直前の3月に大学を卒業した約58万人の中で、「有期雇用労働者」「臨時労働者」「進学も就職もしていない者」の合計は約6.8万人います。1年前の約5万人(卒業生約57万人)に比べ1.4万人も増えました。

不安定な雇用にはフリーターも含まれます。フリーターとは、15~34歳の若者(学生と主婦を除く)のうち、パート・アルバイト・派遣などで正社員でない人や、働く意思があるのに無職の人のことを指します。新卒時にフリーターだった人の半数以上はその後もフリーターを続ける、といわれています。

ちなみにパート・アルバイトの場合、年収は200万円未満が多く、年齢層が上がっても賃金は20代前半からほぼ横ばいです。仮に200万円で計算しても、200万円×38年=7600万円と、生涯賃金は1億円にも満たなくなります。大卒の男性が、正社員で働く場合と比べ2億円以上の差になります。

フリーターから起業家やアーティスト、芸人になったり、資格を取って独立・起業し、大逆転することもあるかもしれません。決してネガティブなものだけではないとはいえ、リスクは大きいといえます。安易にフリーターの道を選ぶことで、親などに負担をかけることもあるかもしれません。

親にとっても、子どもの教育の出口戦略が、ますます重要になっています。安定した生業をもつまでは、しっかり見届けなくてはならない時代になっているようです。

https://www.mext.go.jp/content/20211222-mxt_chousa01-000019664-1.pdf
 

キャリアプランありきの時代

大企業に就職し、勤めあげることが高い生涯年収を確保することにつながります。しかし、今どきは転職も当たり前で、同じ会社で勤めあげることが主流ではなくなっています。スキルアップ・収入アップにつながる転職が、未来を変えることになります。

学歴が就職のパスポートになった時代は終わろうとしているのかもしれません。どんな仕事をしたいのかといったキャリアプランを中学・高校時代にある程度固め、そのための手段として進学をする、という順番で考える時代なのかもしれません。

子ども自身の「本当にやりたいこと」を見定めて、その道へ進めるようにサポートすることが、親の役割になりつつあるようです。

【参考記事】 【参考資料】
ユースフル労働統計2021
文部科学省「学校基本調査/令和3年度 高等教育機関《報告書掲載集計》卒業後の状況調査」
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