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日本とメキシコが結ぶFTAとは

2005年4月1日に、日本とメキシコの自由貿易協定(FTA)が発効します。自動車メーカーのメキシコ進出や、牛肉輸入など、自由貿易がもたらす影響を見ていきましょう。

執筆者:石原 敬子

文章:石原 敬子(All About「よくわかる経済」旧ガイド)
2005年4月1日に、日本とメキシコの自由貿易協定(FTA)が発効します。
日本にとっては、シンガポールに次ぐ2カ国目の協定です。メキシコとは、1年4ヶ月に渡って交渉をしていよいよスタートとなるわけです。
この自由貿易協定(FTA)は、私たちにどんな影響があるのでしょうか?

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トマト
消費者には嬉しい、生産農家には厳しいところが悩ましいFTA

まずは言葉の理解、自由貿易協定(FTA)とは?(1P目)
日本がFTAを結ぶメリットは?(1P目)
メキシコとの貿易の特徴は?(1P目)
メキシコ産牛丼とメキシコマグロがメニューになる?(2P目)
FTAのデメリットはないの?(2P目)

まずは言葉の理解、自由貿易協定(FTA)とは?

2つの国の間で、または地域内というある決まった国同士だけで、自由に貿易を行ってお互いに利益を得る協定のことです。輸出や輸入が活発になります。
関税をなくす、貿易の数量制限などを取り払うなど、よりお互いに有利に取引ができるようにルールを決めます。その協定を結んでいない国よりも優先的に利益が得られるしくみです。

1990年以降急速に増えていて、2004年には150協定にもなりました。アメリカ、カナダ、メキシコが結ぶ北米自由貿易協定(NAFTA)や欧州連合(EU)などはよく知られていますね。

この協定を結んだ国同士は、関税が安くなったり無税になったりして輸入品の価格が下がるほか、輸出量の上限が設けられている製品の制限を緩くすることで、輸出産業は外国のお客様に向けて商売の幅が広がることになります。

ただお互いに自分の国は守りたいので、輸入品は安くしたくないし、輸出品は安くして欲しいため、国同士の話し合いがまとまらず、協定を結ぶのに難航しているのが現状です。日本は、アメリカ、ヨーロッパはもちろん、インドネシア、韓国、マレーシアなどに輸出する際にかけられている関税を低くしてたくさんの日本製品を買ってもらおうと交渉中です。その中で、比較的関税率の高いメキシコと協定が結べることになったということは、日本の輸出産業、特に税率の高い自動車産業や鉄鋼業界が、期待を寄せています。

日本がFTAを結ぶメリットは?

ご存知の通り、日本は貿易で成り立っているといっても過言でない国です。関税などの壁がなくなると輸出や輸入が増えて、経済が活性化します。

自動車メーカー、鋼板などを売る鉄鋼会社など「企業」は、海外での売上げの伸びが期待できます。
「消費者」は、商品選びの幅が広がることになります。例えば、マグロは3.5%、バナナは約10%、鶏肉も約10%、りんごは17%、砂糖は270%、コメはなんと490%の関税が輸入品にはかけられています。これらが低くなるか全くなくなれば、安い値段の輸入品が日本の店に並ぶことになります。
「国」としては、相手国との結びつきにより、政治や外交関係の強化が期待できます。

また、大筋合意しているフィリピンとの協定では、フィリピン人の看護師と介護福祉士を対象に日本の国家資格取得を条件に長期就労を認めるといった、労働市場を開放することも盛り込まれることになっています。日本で働きたい外国人のニーズと、高齢化による労働力不足の日本のニーズが、新たな労働市場をもたらすと思われます。

メキシコとの貿易の特徴は?

まずは、メキシコからみて、日本はどのように映っているでしょうか?
メキシコは同様の協定を他の42カ国と結んでいますが、アジアではこの日本が初めての締結となります。これから伸びると見られているアジアの入り口として、日本は魅力的な市場といえるのでしょう。

逆に日本から見ると、メキシコは北米市場の足がかりともいえるのです。メキシコは、アメリカとカナダ3カ国で自由貿易圏を作っています。
また、メキシコそのものも、日本の自動車販売台数が伸びているなど、期待の持てる市場といえます。協定発効前の2004年の1年間だけで、日本からメキシコへの輸出は43%も増えています。

自由貿易協定(FTA)の基本的理解ができたところで、次のページでは、具体的にどんなものが入ってくるのかをお伝えします。
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