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あてになるのか? 退職金と企業年金

企業が退職金や企業年金の運用をする時代から、従業員自らが自分で運用する時代に変わりつつあります。今まで無意識でいた退職金や企業年金の制度を見直してみましょう。

執筆者:石原 敬子

文章:石原 敬子(All About「よくわかる経済」旧ガイド)
皆さんは、自分の退職金や企業年金が、どのような制度で、どういう積み立て方で、どのように運用されているのか、知っていますか?

今後ますます退職金や企業年金について、変化が起こりそうで目が離せないので、整理して、これからの流れを理解できるようにしておきましょう。
仕事
時代は変わった、退職金はあてになるか?


<INDEX>
まとめて受け取ると「退職金」、分割して受け取ると「企業年金」(1P目)
企業年金の資金が足りない(1P目)
ウチの会社の年金の制度ってナニ?(2P目)

一口に「年金」といっても、「公的年金」と「私的年金(個人年金、企業年金)」では、性格や位置づけが全く違います。これを同類のものだと考えていると、混乱しますので注意が必要です。

「企業年金」は企業が掛け金を負担していたり、従業員が負担しても給与天引きであることが多いので、あまり意識をしていない方が多いことと思います。企業年金は、厚生年金や国民年金などの公的年金とは別のものです。

まとめて受け取ると「退職金」、分割して受け取ると「企業年金」

退職金の考え方は江戸時代にさかのぼります。退職金の持つ側面を挙げてみましょう。

・年季を終えた奉公に、営業権利を分けたり独立資金を渡してあげる「のれん分け」
・一方で「退職金は賃金の一部」という考え方もある
・さらに、従業員の「老後の生活保障」という位置づけも出来る

●公的年金=世代間扶養の制度
●企業年金=従業員に対する労働の対価の一部、企業の福利厚生的な考え方も含む

この分割払いの退職金(=企業年金)、従業員にとって給料以外にお金がもらえる制度として嬉しい制度ですが、企業にとっても都合が良い制度だったのです。
企業年金制度は、日本の高度経済成長期に発達しました。物価がどんどん上がっている時期で、企業にとってそのペースに見合う給料アップはその当時厳しかったのです。そこで、賃金として支払うより、先延ばしにして資金運用で増やしてから従業員に支払ったほうが都合が良かったので、退職の時まで支払いを後にしてもらっていました。

さらに、従業員の退職の時にまとまった退職金を支払うよりも、さらに先延ばしになる分割払い(=年金)とすると、もっと都合が良かったのです。退職の時にまとめてお金を用意する必要がありませんし、たとえその資金が企業に用意できていたとしても、先延ばしにすることによって、運用の利益を得ることが出来たからです。

企業年金の資金が足りない

ただし、それは日本経済が成長していて、年金支払いの原資を運用によって増やすことが出来た時代だったからなのです。
通知
年金見込み額のおしらせ通りに受け取れるか?

経済が停滞して、10年余り経った2003年度決算では、今、従業員が一斉に辞めたら退職金が全額支払えない「積み立て不足」となっている企業が続出しています。

だから、退職金制度や企業年金制度を止めて(解散して)しまおう、そして新しい年金制度に移して再スタートを切ろう、と「企業年金制度の解散」が各企業の間で次々と行われているのです。

「年金情報」によると、2003年度決算で積立不足の多い東証一部上場企業100社の積み立て不足額合計は12兆5214億円だといいます。
額が大きすぎて、ピンときませんね。12兆強といえば、ジャスダック市場の時価総額とほぼ同じです。積み立て不足上位100社の不足額が、ジャスダック市場を飲み込んでしまう位です。すごいですね。

皆さんの中には、「退職金を前払いにして、これから新しい企業年金制度を始めます。」と会社から宣告され、「自分で将来の年金になる資金を運用してください(確定拠出年金)」などと、いきなり自己責任を突きつけられた方も多いのではないでしょうか?

自分の会社ではどんな退職金制度が利用されていて、今後どうなるかを知っていくために、次のページでは退職金制度や企業年金制度にはどのようなものがあるのか、チェックしていきたいと思います。
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