浴室で亡くなる方は交通事故と比べて2倍以上!? 家族の健康を守るための省エネリフォームを紹介

1年中、快適な室温を保てない家は、様々な心身のトラブルを引き起こしやすいといわれています。家族が健康で暮らすために、真剣に考えたい省エネリフォームについて、住まいの性能に詳しいガイドの井上恵子さんに聞きました。

提供:住宅金融支援機構

お話をうかがった方

井上 恵子

All About『住まいの性能・安全』ガイド:井上 恵子

マンション設計に携わった経験を数多く持つ一級建築士が、住まいの性能を解説。性能評価申請に関わったマンションは20棟以上。設計事務所設立後は子育ての経験を生かし保育園の設計なども行う。その他に戸建て・マンション購入セミナー講師、新聞へのコラム連載など。

断熱性能の低い家に起こりがちな健康リスク

paragraph_0_img_0

家の中で起こる健康問題の原因として、「室温」が注目されています。具体的にはどんなトラブルが多いのでしょうか。

井上恵子さん(※以下敬称略)「断熱性能の低い家は、1年を通して快適な室温を保つのが難しくなります。それが原因と考えられる健康リスクは大きく分けて3つあり、よく知られているのは冬に廊下や脱衣所、浴室などの温度差で起きるヒートショックです。「家庭における不慮の事故による死因」の4割以上を占め、浴室で亡くなる方は交通事故と比べても2倍近く※1になっています。

2つめは、近年急増している熱中症です。2023年5~9月に救急搬送された方は91,467人で、発生場所として住宅の中が最も多く、全体の39.9%※2を占めています。

3つめは、様々な疾患の要因になりやすいことです。特に冬寒く、夏暑い家での暮らしは、望ましい生活習慣の妨げになり、高齢者への影響が大きいのでご注意ください」

【室温が影響する健康リスクの例】
■寒さや急激な温度変化で、高血圧になりやすい。
■高血圧が原因となる疾患(呼吸器や心血管疾患など)のリスクが高くなる。
■外気温との差で結露が増えてカビが発生し、アレルギーの原因になる。
■身体活動量が少なくなり、運動不足になる。
■寝室の寒さや夜間頻尿で睡眠の質が下がる。 ……など

※1 【出典】厚生労働省「人口動態統計」第5.31表及び第5.35表(令和5年)
※2 【出典】総務省「令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」

断熱性能を上げる省エネリフォーム

paragraph_1_img_0

家庭内の事故や家族の体調に、室温の影響があると認識している方はまだ少ないように感じます。

井上「最近は熱中症対策をきっかけに、室温に気をつけることも増えてはきました。WHO(世界保健機関)でも、冬季は室温を18℃以上にすること、こどもや高齢者がいる家庭はもっと室温を上げること、新築・改修時には断熱をすること、夏季は室内で熱中症対策をすることなどを世界中に勧告しています。

ただ、室温の管理は、今のところエアコンや暖房の使用をどうするかに留まっている印象があります。根本的な対策となるのは、やはり家の断熱性能を見直すことです」

いま住んでいる家で、断熱性能を上げるにはどんな方法がありますか?

井上「既存住宅では、省エネリフォームや省エネ性の高い機器への買替えになるでしょう。特に窓のリフォームや断熱ドアは、手軽にできて効率がよく満足度が高い工事です」

■二重窓や断熱玄関ドアなど、開口部を断熱性能の高いものに交換する。
■屋根、壁、床下に、高性能な断熱材を隙間なく設置する。
■性能のいい冷暖房へ買い替える。
■太陽光発電を導入し、電力を床暖房などに利用する。 ……など

井上「2025年に着工される新築住宅では断熱性能等級4が必須となり、2030年にはZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)が最低基準となるなど、断熱性能等級が段階的に引き上げれる予定です。それだけ、断熱性能は私たちの暮らしに重要なものだと考えてもらえたらと思います」

省エネリフォームで、毎日健康で快適、経済性もいい暮らしに変化

paragraph_2_img_0

実際に家の断熱性能を上げると、住む人にどんなメリットがありますか。

井上「一番大きいのは、もちろん健康面の好影響です。住環境の変化による調査では、高断熱住宅へ転居した場合、高血圧性疾患が8.6%→3.6%、心疾患が2.0%→0.4%、脳血管疾患が1.4%→0.2%など、様々な疾病改善の効果があったというデータが報告※3されています。

また、心地いい室温がキープできるので、家のどこにいても快適です。冷暖房の稼働が抑えられ、高騰している光熱費の節約にも。結露が減ってカビの発生が抑えられることで、家中が清潔で掃除もラクになるでしょう」

窓やドアなどの開口部を断熱性能の高い二重窓や断熱玄関ドアにすると、遮音性が高くなるという副次的な効果もあるそう。暮らしの中のストレスが解消され、在宅ワークなど自宅で過ごす時間が長い方には特にうれしいポイントです。

井上「住む人の心身の健康だけでなく、高断熱、高気密、適切な換気システムを採用した省エネ住宅は、開口部や躯体内部の結露を防ぐため、家の寿命を延ばすことにつながります。資産性も評価され、売却や賃貸の際には競争力がアップするので、経済面での安心材料にもなるはずです。もちろん、地球環境にとっても省エネ住宅のメリットは大きいといえます」

※3 【出典】伊香賀俊治,江口里佳,村上周三ほか:健康維持がもたらす間接的便益(NEB)を考慮した住宅断熱の投資評価,日本建築学会環境系論文集,Vol.76(2011.8)

省エネリフォーム専用の【グリーンリフォームローン】の活用も検討

省エネリフォームや省エネ機器への交換には、国や自治体による支援事業・補助金などが用意されています。また、住宅金融支援機構の【グリーンリフォームローン】のように、省エネリフォーム専用のローンもあります。

【グリーンリフォームローン】の特徴

【グリーンリフォームローン】は最大で500万円まで融資が受けられ、融資手数料無料、無担保、無保証で全期間固定金利と、資金調達にとても使いやすいのが特徴です。

高齢者向け返済特例や、適合証明検査機関の現場検査など、利用者にとってうれしい制度も用意されています。

井上「このローンで特にいい!と思ったのは、省エネリフォームと同時に工事をすれば、その他のリフォームにも融資を利用できる点です。高齢者がいるご家庭なら、バリアフリーや手すりの取り付けも必要になります。床暖房の設置、水廻りの修繕など、希望する工事を一緒に行って、さらに暮らしやすい家を手に入れましょう」

断熱性能のアップや省エネ設備の設置を、いきなりはイメージしにくいという方も、安心して取り組めそうです。

井上「断熱の工事はできるだけ早く始めたいものですが、家の不具合をきっかけに、ついでに省エネリフォームを考えてみるという順番でもいいと思います。低金利や融資手数料無料など借りやすい仕組みのローンですし、補助金の活用とあわせて、ぜひ検討してみてください」

【グリーンリフォームローン】の詳細はこちら >>

家族みんなが元気に暮らせる家づくり

paragraph_5_img_0

井上「もし、家庭内でヒヤリとする事故が起きたり、体調の不安があるようなら、早めに住環境の見直しをしましょう。室温は目には見えないものですが、家族みんなが1年中健康に、イキイキと過ごせる家づくりのために非常に大切なことです」

これからの新築に、高い断熱性能を持たせるのが当たり前になるだけでなく、既存の住宅にも省エネリフォームの推進が求められる時代です。

井上「費用の調達に役立つ【グリーンリフォームローン】や各種の補助金などの情報をキャッチするには、インターネットの検索を活用したり、工務店などのプロに相談してみてもいいでしょう。

断熱性能を高めた家は、心身の健康に加えて、快適性や経済性もサポートしてくれます。ローンの活用なども検討して、1日も早く安心・安全な暮らしを手にいれてみてはいかがでしょうか」

【グリーンリフォームローン】を詳しく知りたい>>