ワクチンは2種類から選べる! 50歳以上は気をつけたい「帯状疱疹」とその予防法

50代から増加し、80歳までに約3人に1人が発症するというデータもある帯状疱疹。身近な病気だからこそ、かかる前の予防への意識が大切です。ここでは、帯状疱疹を予防するワクチンについて、わかりやすく解説します。

提供:一般財団法人阪大微生物病研究会

お話をうかがった方

清益功浩

All About「医師 / 家庭の医学」ガイド:清益功浩

小児科医・アレルギー専門医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院小児科・アレルギー科で診療に従事。論文・学会報告多数。診察室外で多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。

<目次>

日常生活に支障が出る場合も! 「帯状疱疹」ってどんな病気?

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痛みで日常生活に支障をきたすこともある「帯状疱疹」

帯状疱疹とは、体の左右どちらか片側の皮膚に神経痛のような痛みが起こり、その部分に水ぶくれや赤い発疹が帯状に出てくる病気のこと。ひどい場合は眠れないほど痛むなど日常生活に支障をきたすこともあり、失明や難聴、顔面麻痺などの重篤な合併症を引き起こしてしまうケースもあります。

帯状疱疹になってしまったら…

  • 痛みがひどくて、体を動かすのがつらい
  • 痛みが気になって家事や仕事に集中できない
  • 痛みのせいで、ぐっすり眠れない
  • 顔や首の発疹が気になり、外出がおっくうになる

帯状疱疹の原因となるのは、水ぼうそうと同じウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)で、神経節に潜んでいるウイルスが、免疫力の低下によって再び活動をすることで発症します。日本では、成人のおよそ9割が体内にこのウイルスを持っていると考えられており、帯状疱疹を発症する可能性があります。帯状疱疹は加齢などによる免疫力の衰えが目立つ50歳代から増加します。その後60代、70代と徐々に発症率は増加していきます。

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対象・方法:2009~2015年に宮崎県の43施設で帯状疱疹と診断された34,877例について、年代別、性別等に層別し、帯状疱疹の患者数、及び宮崎県の人口を母数として発症率を算出した。Shiraki K. et al. Open Forum Infect Dis. 2017; 4(1): ofx007.より作図

発症後に治療が遅れたり、放置したりした場合には合併症や後遺症につながることもあり注意が必要ですが、症状には個人差があり初期段階では帯状疱疹と気づかないことも。そもそも発症しないようにするために、日頃から予防を心がけることが大切といえます。

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帯状疱疹を予防する方法は?

帯状疱疹の予防には「体調管理」と「ワクチン接種」

予防策としてまず心がけたいのは免疫力の低下を防ぐような体調管理です。規則正しい生活とバランスのとれた食事、睡眠時間を十分に確保し、疲れたと感じたらしっかりと休息をとりましょう。適度な運動でストレスを解消するのもおすすめです。

もう一つ、水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫力を上げるワクチンを接種するという選択肢もあります。発症したことがない方はもちろん、一度帯状疱疹にかかった人に対しても、予防接種が可能です。帯状疱疹を予防するワクチンの接種は、主に50歳以上の方が対象です。

※予防接種の対象者等は、医療機関にご確認ください。

高齢になって帯状疱疹にかかると、強い痛みが続くなどのリスクが高まり、生活の質(QOL)が低下することがあります。50歳を過ぎたら元気なうちに予防接種を受けておくのも選択肢のひとつです。

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帯状疱疹には2種類のワクチンがある、それぞれの特徴は?

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帯状疱疹のワクチンは2種類。それぞれの特徴は?

帯状疱疹のワクチンには、「生ワクチン」「不活化ワクチン」の2種類があります。ここでは、それぞれの特徴を簡単に説明しましょう。

帯状疱疹の「生ワクチン」は、水痘・帯状疱疹ウイルスの毒性を弱めて作ったワクチンです。帯状疱疹予防のための接種回数は1回で、皮下注射をします。接種費用は7,000~10,000円程度です。

帯状疱疹の「不活化ワクチン」は、水痘・帯状疱疹ウイルスの表面に存在するタンパク質の一部と、ワクチンの働きを高める役割をする物質を組み合わせた組換えタンパクワクチンです。接種回数は2回で、筋肉内注射をします。接種費用は40,000~60,000円程度(2回接種の合計)です。

生ワクチン:乾燥弱毒生水痘ワクチン
接種対象者 50歳以上の者*1
接種方法 皮下接種
接種回数 1回
接種費用 7,000円~10,000円程度*2
不活化ワクチン:
乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(チャイニーズハムスター卵巣細胞由来)
接種対象者 50歳以上の者又は帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の者
接種方法 筋肉内接種
接種回数 2回
  • 50歳以上の者:
    通常2ヵ月の間隔をおく
  • 帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の者:
    通常1~2ヵ月の間隔をおく
接種費用 40,000円~60,000円程度(2回接種の合計)*2

*1 免疫不全・免疫抑制状態の方や妊娠中の方などは生ワクチンの接種を受けられません。詳しくは医師にご相談ください。
*2 47都道府県の行政公式HPのうち、接種費用を公開している9都県のHP情報より、最小~最大の費用を算出(2024年9月時点)。医療機関により接種費用は異なります。

自治体によっては費用の助成が受けられる場合もありますので、接種を検討している方は、お住まいの地域の情報を確認してみてください。

帯状疱疹にかかってしまうと、家事や仕事などの日常生活に影響が出るというリスクも考えられます。まずは、帯状疱疹の予防について、医師に相談してみてはいかがでしょうか。情報を確認したうえで、ご自身の状況に合うワクチンを選ぶことをおすすめします。

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帯状疱疹は人にうつるの?

帯状疱疹という病気そのものがうつることはありませんが、水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫を持たない人には、主に接触することで水ぼうそうとして発症させてしまうおそれがあります。生活環境にウイルスに対する免疫を持たない小さなお子さんがいる場合は、ワクチンを接種することで感染を防ぐという考え方もあります。

一度かかってもまた再発するって本当?

帯状疱疹は、一度だけでなく二度、三度とかかる場合もあります。再発の際は、初めて発症した部位と大半が異なるといわれています

※外山 望:皮膚科の臨床63(6):980-983, 2021

成人の9割が水痘・帯状疱疹ウイルスを持っている

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帯状疱疹の予防のために、まずは生活習慣への意識を高め、ワクチンも検討してみましょう

成人の9割が水痘・帯状疱疹ウイルスを持ち、80歳までに約3人に1人が発症するというデータからも、帯状疱疹は極めて身近な病気です。高齢になって帯状疱疹を発症し、日常生活に支障をきたすほどの痛みを伴えば、生活レベルの急速な低下のリスクが懸念されます。

予防接種は、帯状疱疹を完全に防ぐものではありません。しかし、たとえ発症したとしても、予防接種を受けていれば症状が軽くすむというデータもあります。まずは免疫力を低下させないよう生活習慣への意識を高め、ワクチンを接種することも検討してみましょう。

帯状疱疹と2種類のワクチンについて気になった方は、ぜひ、病院で相談してみてください。

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